短篇集 日常のくすり

糸田造作

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短編集

救い

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「この世界には神によって救われる者と救われない者がいる。」
昔、突然失踪した父の言葉を私はよく思い出す。なぜそんな言葉を私に言ったのか覚えていないが、強く記憶に残っていた。

どんなに一生懸命に生きても救われるとは限らない。しかし、辛い時は父の言葉を思い出し、神様は必ず見てくれていると信じながら生きてきた。

神様はいる。
そうでなければ、食べ物が空から降ってくることなど考えられない。
この世界では時々大量の食べ物が落ちてくるが、その理由は誰も知らない。ただ分かるのはその恵みを受ける以外に、この世界で食べ物にありつく術はないということである。

しかし、神様は生きる者の欲を甘く見ていたのだろう。「もっと食べたい」「もっと欲しい」この様な醜い欲が火種となり、争いが絶えないのだ。その結果、たくさん食べて大きくなる者と、争いに負け弱々しく生きている者とで分かれていた。

ある日、私はいつものように争いに負け、一切れしか食べられず、空腹のまま空を見上げてた。

「いつになったら救われるのだろう」
そう呟いた瞬間、巨大な円形の物体が空から降りてきた。
どんどん私に近づくその物体は私の近くで止まった。次の瞬間、私の下に潜り込み体を持ち上げた。

この世界では見たことのない形のもので、何よりも空から降りてきたところを見るに、神様の救いに違いない。

「私は救われたんだ!」
無抵抗の私を乗せてその物体は急上昇し始めた。空高くまで浮かび上がり、今までの世界がみるみる小さくてなっていった。


夏祭り。
浴衣姿の娘がポイを持って喜んでいる。
鉢巻きをした屋台のおじちゃんが言った。
「お嬢ちゃん金魚すくい上手だね!」




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