3 / 8
短編集
色眼鏡
しおりを挟む
「ようやく完成したぞ!これを使えば世界を救えるぞ!」
とある国の片隅の小さな研究室。
私はメガネをかけ、目の前にいる妻の姿が青色に反応すると両手を突き上げて喜んだ。それは多くの学者が不可能と口を揃えた研究がようやく実を結んだ瞬間だった。
時は20XX年。
マンモスを狩って暮らしていた頃より食料が簡単に手に入り、生活が豊かになった結果、この世界は娯楽や趣味の多様化が進んだ。
例えば、ゲームや人気のカフェ巡り、アイドルの推し活など、一人でも充分に楽しめる娯楽を挙げたらきりがない。人類の進歩とはなんて素晴らしいのだろう。
しかし、本当にこのままで良いのだろうか。確かに、一人で暮らすには充分幸せな世界だ。とあるニュースではパートナーに気を使う必要が無いから死ぬまで一人が良いと言う青年もいた。それほど世界は進歩したのだ。ただ、それを聞いた時、私はその危険性について考えずにはいられなかった。
人はいつか亡くなる。これはパートナーがいてもいなくても変わらない暗黙の決定事項だ。
では、亡くなった後はどうであろうか。
例えば自宅で亡くなった場合、パートナーがいればなかなか起きてこない相手の様子を見に行き、すぐに見つけられるだろう。
一方、一人で生きていた場合、誰かに見つけてもらえることができるだろうか。友人や家族が訪ねてくれば発見されるかもしれないが、来なかったらずっと放置されたまま異臭によって気づかれるという結末になるかもしれない。
やはり人間、誕生する瞬間が温かいものならば、息を引き取り冷たくなる瞬間も誰かに手をにぎられ温められながら永遠に眠りたいものである。
だからこそ私は発明したのだ。
このメガネを。
これをかければ目の前にいる者が運命の相手かどうか一瞬で見分けることができる。
運命の相手であればその人の姿が青色、そうでなければ赤色に反応するのである。
長年の研究によって運命の相手を遺伝子が見つけると、人間は脳から青色の電気信号を出すことが分かったのだ。
つまり、運命の糸は赤色ではなく、青色であることを私は発見し、この発明に応用したのだった。
運命の相手を知ることができれば、
無駄な恋愛をして傷つくこともなくなり、
恋愛を楽しめることができるだろう。
本物の愛を知ることができれば、
孤独に生きていくという考えもなくなり、
人生を安らかに終えることができるだろう。
長年、私のこの研究は学会から腫れ物扱いされ、認められずにいたため、家族にはとても苦労をかけてしまった。特に愛する妻は何十年も研究室に籠る私に対し、文句一つ言わずに家庭を支えてくれた。これは妻の深い愛がなければ完成しなかった発明だと言っても過言ではない。
「長年支えてくれたんだ。君もこの発明品を試してくれよ。」
私は青色に反応していた妻に自分のかけていたメガネを渡した。
「ええ、貴方の研究がようやく実を結んで嬉しいわ。これが大ヒットすればお金持ちになれるわね。私は科学が苦手で貴方の研究も外から見守るだけだったけれど、楽しみだわ。」
そう言うと、妻はメガネをかけて私の方を見た。そして、興奮気味に話した。
「やっぱりあなたは運命の人だわ!運命の赤い糸のようにあなた、全身真っ赤に見えるもの!」
妻の興奮とは裏腹に、私は驚きを隠すことに必死だった。
「そっ、そうだろ。僕も君のことが真っ赤に見えたんだ。やっぱり僕たちは運命の赤い糸で結ばれていたんだね。だから赤色に反応するのも当然さ。」
なぜ?
なぜ妻が私を見たら赤色に反応したのだろうか。必死に理由を考えている時、妻が私に尋ねた。
「あなた、これからは研究室に籠ることはないのかしら?」
さりげなく聞いていたが、その目は私が研究を続けることを期待しているようだった。
「ああ、これからは研究室よりも、君といる時間の方が増えるよ。」
気のせいか、妻は一瞬寂しそうに見えたが
「それは良かったわ。」と一言呟いた。
私は妻からメガネを返してもらい、
もう一度妻を見た。
深海のような青色である。
私が研究室に篭っている間、妻がどこで何をしていたか知る由もない。ただ一つ言えるのは、どうやらこの発明は失敗だったに違いない。私は妻を愛しており、妻も私を愛しているはずなのだから。
そもそも、目の前の相手が運命の人という先入観で見てしまうことは良くなのかもしれない。
私が研究室に戻り深いため息をつくと、ドアの向こうでも誰かのため息が聞こえたような気がした。
とある国の片隅の小さな研究室。
私はメガネをかけ、目の前にいる妻の姿が青色に反応すると両手を突き上げて喜んだ。それは多くの学者が不可能と口を揃えた研究がようやく実を結んだ瞬間だった。
時は20XX年。
マンモスを狩って暮らしていた頃より食料が簡単に手に入り、生活が豊かになった結果、この世界は娯楽や趣味の多様化が進んだ。
例えば、ゲームや人気のカフェ巡り、アイドルの推し活など、一人でも充分に楽しめる娯楽を挙げたらきりがない。人類の進歩とはなんて素晴らしいのだろう。
しかし、本当にこのままで良いのだろうか。確かに、一人で暮らすには充分幸せな世界だ。とあるニュースではパートナーに気を使う必要が無いから死ぬまで一人が良いと言う青年もいた。それほど世界は進歩したのだ。ただ、それを聞いた時、私はその危険性について考えずにはいられなかった。
人はいつか亡くなる。これはパートナーがいてもいなくても変わらない暗黙の決定事項だ。
では、亡くなった後はどうであろうか。
例えば自宅で亡くなった場合、パートナーがいればなかなか起きてこない相手の様子を見に行き、すぐに見つけられるだろう。
一方、一人で生きていた場合、誰かに見つけてもらえることができるだろうか。友人や家族が訪ねてくれば発見されるかもしれないが、来なかったらずっと放置されたまま異臭によって気づかれるという結末になるかもしれない。
やはり人間、誕生する瞬間が温かいものならば、息を引き取り冷たくなる瞬間も誰かに手をにぎられ温められながら永遠に眠りたいものである。
だからこそ私は発明したのだ。
このメガネを。
これをかければ目の前にいる者が運命の相手かどうか一瞬で見分けることができる。
運命の相手であればその人の姿が青色、そうでなければ赤色に反応するのである。
長年の研究によって運命の相手を遺伝子が見つけると、人間は脳から青色の電気信号を出すことが分かったのだ。
つまり、運命の糸は赤色ではなく、青色であることを私は発見し、この発明に応用したのだった。
運命の相手を知ることができれば、
無駄な恋愛をして傷つくこともなくなり、
恋愛を楽しめることができるだろう。
本物の愛を知ることができれば、
孤独に生きていくという考えもなくなり、
人生を安らかに終えることができるだろう。
長年、私のこの研究は学会から腫れ物扱いされ、認められずにいたため、家族にはとても苦労をかけてしまった。特に愛する妻は何十年も研究室に籠る私に対し、文句一つ言わずに家庭を支えてくれた。これは妻の深い愛がなければ完成しなかった発明だと言っても過言ではない。
「長年支えてくれたんだ。君もこの発明品を試してくれよ。」
私は青色に反応していた妻に自分のかけていたメガネを渡した。
「ええ、貴方の研究がようやく実を結んで嬉しいわ。これが大ヒットすればお金持ちになれるわね。私は科学が苦手で貴方の研究も外から見守るだけだったけれど、楽しみだわ。」
そう言うと、妻はメガネをかけて私の方を見た。そして、興奮気味に話した。
「やっぱりあなたは運命の人だわ!運命の赤い糸のようにあなた、全身真っ赤に見えるもの!」
妻の興奮とは裏腹に、私は驚きを隠すことに必死だった。
「そっ、そうだろ。僕も君のことが真っ赤に見えたんだ。やっぱり僕たちは運命の赤い糸で結ばれていたんだね。だから赤色に反応するのも当然さ。」
なぜ?
なぜ妻が私を見たら赤色に反応したのだろうか。必死に理由を考えている時、妻が私に尋ねた。
「あなた、これからは研究室に籠ることはないのかしら?」
さりげなく聞いていたが、その目は私が研究を続けることを期待しているようだった。
「ああ、これからは研究室よりも、君といる時間の方が増えるよ。」
気のせいか、妻は一瞬寂しそうに見えたが
「それは良かったわ。」と一言呟いた。
私は妻からメガネを返してもらい、
もう一度妻を見た。
深海のような青色である。
私が研究室に篭っている間、妻がどこで何をしていたか知る由もない。ただ一つ言えるのは、どうやらこの発明は失敗だったに違いない。私は妻を愛しており、妻も私を愛しているはずなのだから。
そもそも、目の前の相手が運命の人という先入観で見てしまうことは良くなのかもしれない。
私が研究室に戻り深いため息をつくと、ドアの向こうでも誰かのため息が聞こえたような気がした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる