『戦後80年の教室──記憶と対話のディベート』

キユサピ

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第九話 悠翔の反論(判決➕合祀の流れ)

悠翔は深く息を吸い、言葉を選ぶように続けた。

「和真が言ったように、A級戦犯の合祀や、韓国や台湾出身者の合祀は大きな問題だ。けれども、それをすべて“靖国の責任”にするのは違うと思うんだ」

彼は一瞬間を置き、黒板にチョークで「東京裁判」と書いた。

「思い出してほしい。A級戦犯とされた人々は“東京裁判の判決”によって裁かれた。けれどその裁判自体、勝者が敗者を裁く“事後法”の側面が強く、国際法的にも多くの疑義が指摘されている。例えば、同じ戦争責任を問われるべき連合国側の行為は裁かれていないし、ドイツのニュルンベルク裁判と比べても一層問題点が多かった」

彼はさらに声を落とした。

「靖国神社が合祀したのは“戦没者”としてであって、“東京裁判の罪人”としてじゃない。むしろ、あの裁判の是非をどう評価するかが根本の問題なんだ」

悠翔は少し表情を引き締めた。

「韓国や台湾出身者の合祀についても同じだ。当時は彼らも“日本国民”とされた以上、祀られるのは自然な流れだった。靖国は区別せずに祀ったんだ。逆に祀らなければ“差別だ”と批判されたはずだ」

そして結論を口にする。

「つまり、靖国を一方的に責めるのは筋違いだ。真に問われるべきは、戦後に押しつけられた裁判の正当性と、戦争責任をどのように考えるのか、その点じゃないだろうか?」

「それから――朝鮮や台湾出身者の合祀については、実際に遺族が“勝手に祀られた”と裁判を起こした例がある。
でも日本の裁判所はこれまで一貫して“靖国神社の宗教的判断に国が介入することはできない”として、請求を退けてきたんだ」

悠翔は手元のメモをめくりながら、声を強める。

「つまり、戦後からずっと“訴えは認められてこなかった”。それだけ靖国の合祀は、戦没者を一律に祀るという姿勢で貫かれてきた証拠だと思う。もちろん遺族の気持ちは複雑だし、尊重すべきだ。けれど司法がその主張を受け入れなかったという事実は、靖国が戦没者を差別なく祀ろうとしてきたことを示しているんじゃないだろうか」

彼は少し言葉を切り、教室を見回した。

「だからこそ、僕は思う。靖国を“悪いもの”と決めつけてしまうのではなく、なぜこうした判決が出続けているのか、そこから考えるべきだと」
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