11 / 122
第十一話 「次の問い――憲法を考える」
休み時間が終わり、教室に再び静けさが戻った。
黒板にはまだ「祀る意味」「裁く意味」の文字が残り、議論の余韻が薄く漂っている。
先生はゆっくりと前に立ち、口を開いた。
「皆さん、先日の靖国についての議論はどうだったかな?」
クラスは小さなざわめきで応える。
「……考えさせられました」
「答えは一つじゃないんですね」
先生は頷き、次の課題を提示した。
「さて、次は日本国憲法について、肯定派と否定派に分かれてディベートを行います」
一瞬、教室に静寂が走る。
悠翔はメモ帳を手に取り、和真は窓の外を見つめながら深く息をついた。
二人とも、まだ心の中で答えを整理できていない。
先生は続ける。
「憲法というのは、国のルールであると同時に、私たちの生活や思想に直結するものです。戦争の議論と同じく、簡単に結論が出るものではありません。だからこそ、しっかり調べ、考え、互いの意見を尊重しながら議論することが大切です」
教室の空気は一瞬引き締まった。
悠翔は静かに鉛筆を走らせ、和真もノートを開き、情報を整理し始める。
それぞれの机の上には、戦後の憲法の条文や解説書、新聞記事の切り抜きが広がった。
先生は少し笑みを浮かべ、最後に言った。
「前回と同じです。答えは一つじゃない。でも、考えることをやめてはいけません」
チャイムが鳴り、授業が始まる。
クラスメイトたちの心には、靖国での議論の余韻とともに、新たな問い――憲法をどう捉えるか――が静かに刻まれていった。
先生は黒板に「日本国憲法」と大きく書き、その下に二本の線を引いた。
「前回と同じく、グループを分けて準備してもらう。肯定派は“今の憲法を守るべき”、否定派は“今の憲法を改めるべき”。それぞれ自分たちの論拠を調べ、整理して、ディベートに臨むんだ」
黒板に書かれた文字を見つめながら、悠翔は心の中でつぶやいた。
(……今度は、肯定か否定か。俺はどっちに立つべきなんだろう)
和真もまた、静かに考え込んでいた。
(戦争と直結する条文もある。理想だけで語れる問題じゃない……どう向き合えばいいんだ)
先生は配布プリントを手に取りながら言葉を続ける。
「戦後80年を迎えた今、憲法をどう考えるかは私たち自身の問題だ。教科書だけじゃなく、新聞や本、ネット上の意見など幅広く調べてほしい」
プリントが一人一人の机に配られ、課題の概要が明らかになる。
調査のテーマは「憲法第9条を中心に」「戦後民主主義と人権」「改正をめぐる議論の歴史」など、多岐にわたっていた。
チャイムが鳴り、授業の終わりを告げる。
生徒たちは立ち上がりながら、次の課題に胸をざわつかせていた。
悠翔はプリントを折り畳みながら友人に声をかける。
「なあ……次の調べ学習、どうする?」
「図書館行く? ネットだけじゃ足りないだろ」
和真もまた別の友人に声をかけ、否定派としての下調べを始める段取りを立てていた。
議論は終わらない。
次の舞台は――憲法。
黒板にはまだ「祀る意味」「裁く意味」の文字が残り、議論の余韻が薄く漂っている。
先生はゆっくりと前に立ち、口を開いた。
「皆さん、先日の靖国についての議論はどうだったかな?」
クラスは小さなざわめきで応える。
「……考えさせられました」
「答えは一つじゃないんですね」
先生は頷き、次の課題を提示した。
「さて、次は日本国憲法について、肯定派と否定派に分かれてディベートを行います」
一瞬、教室に静寂が走る。
悠翔はメモ帳を手に取り、和真は窓の外を見つめながら深く息をついた。
二人とも、まだ心の中で答えを整理できていない。
先生は続ける。
「憲法というのは、国のルールであると同時に、私たちの生活や思想に直結するものです。戦争の議論と同じく、簡単に結論が出るものではありません。だからこそ、しっかり調べ、考え、互いの意見を尊重しながら議論することが大切です」
教室の空気は一瞬引き締まった。
悠翔は静かに鉛筆を走らせ、和真もノートを開き、情報を整理し始める。
それぞれの机の上には、戦後の憲法の条文や解説書、新聞記事の切り抜きが広がった。
先生は少し笑みを浮かべ、最後に言った。
「前回と同じです。答えは一つじゃない。でも、考えることをやめてはいけません」
チャイムが鳴り、授業が始まる。
クラスメイトたちの心には、靖国での議論の余韻とともに、新たな問い――憲法をどう捉えるか――が静かに刻まれていった。
先生は黒板に「日本国憲法」と大きく書き、その下に二本の線を引いた。
「前回と同じく、グループを分けて準備してもらう。肯定派は“今の憲法を守るべき”、否定派は“今の憲法を改めるべき”。それぞれ自分たちの論拠を調べ、整理して、ディベートに臨むんだ」
黒板に書かれた文字を見つめながら、悠翔は心の中でつぶやいた。
(……今度は、肯定か否定か。俺はどっちに立つべきなんだろう)
和真もまた、静かに考え込んでいた。
(戦争と直結する条文もある。理想だけで語れる問題じゃない……どう向き合えばいいんだ)
先生は配布プリントを手に取りながら言葉を続ける。
「戦後80年を迎えた今、憲法をどう考えるかは私たち自身の問題だ。教科書だけじゃなく、新聞や本、ネット上の意見など幅広く調べてほしい」
プリントが一人一人の机に配られ、課題の概要が明らかになる。
調査のテーマは「憲法第9条を中心に」「戦後民主主義と人権」「改正をめぐる議論の歴史」など、多岐にわたっていた。
チャイムが鳴り、授業の終わりを告げる。
生徒たちは立ち上がりながら、次の課題に胸をざわつかせていた。
悠翔はプリントを折り畳みながら友人に声をかける。
「なあ……次の調べ学習、どうする?」
「図書館行く? ネットだけじゃ足りないだろ」
和真もまた別の友人に声をかけ、否定派としての下調べを始める段取りを立てていた。
議論は終わらない。
次の舞台は――憲法。
あなたにおすすめの小説
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。