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プロローグ
1.嵐
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暗い海に船がひとつ、浮かんでいた。
黒い空に一筋の光が走った。船内が一瞬眩しい程に明るくなると、メリアはハッと目を覚ました。
メリアはこの漁船で、この一週間ほどネズミを捕って暮らしていた。何度も魚を盗もうと試みたが、今のところ全て失敗に終わっている。漁師が猫嫌いなのか、大物を狙い過ぎたのかもしれない。そんなことでここ最近彼女の頭の中はいっぱいだったが、それすらも今この黒猫は忘れていた。船の様子がいつもと違う。
船はぐらぐら揺れて、なんだか気持ちが悪い。妙な胸騒ぎがする。心臓の動きが異常に速い。
今度は二度続けて大きな雷鳴。かなり近い。早くここからでなければいけないと、彼女の本能が言っている。船が大きく傾いた。倉庫に積み上げられた荷物が落ちてくる。メリアはそれを避けながら出口に向かって走った。
水が流れてきた。必死になって外に出たが、もう間に合わない。外に出てもそこには海しかないのだから。船の上では当たり前のことを思い出し、メリアの体の力は一気に抜けていった。
船がまた大きく傾き、メリアの体は黒い水の中にのみこまれた。
あぁ、結局魚は食べられなかったな。最後になってメリアは思った。
黒い空に一筋の光が走った。船内が一瞬眩しい程に明るくなると、メリアはハッと目を覚ました。
メリアはこの漁船で、この一週間ほどネズミを捕って暮らしていた。何度も魚を盗もうと試みたが、今のところ全て失敗に終わっている。漁師が猫嫌いなのか、大物を狙い過ぎたのかもしれない。そんなことでここ最近彼女の頭の中はいっぱいだったが、それすらも今この黒猫は忘れていた。船の様子がいつもと違う。
船はぐらぐら揺れて、なんだか気持ちが悪い。妙な胸騒ぎがする。心臓の動きが異常に速い。
今度は二度続けて大きな雷鳴。かなり近い。早くここからでなければいけないと、彼女の本能が言っている。船が大きく傾いた。倉庫に積み上げられた荷物が落ちてくる。メリアはそれを避けながら出口に向かって走った。
水が流れてきた。必死になって外に出たが、もう間に合わない。外に出てもそこには海しかないのだから。船の上では当たり前のことを思い出し、メリアの体の力は一気に抜けていった。
船がまた大きく傾き、メリアの体は黒い水の中にのみこまれた。
あぁ、結局魚は食べられなかったな。最後になってメリアは思った。
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