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ある令嬢の恋慕と王太子の企み
しおりを挟むわたくしはカイル様と仲睦まじそうに話す
銀色の髪を二つに結んだ美少女を見ていた。
瞳は紫水晶色で、ぷっくりとした桃色の唇に
白い肌。通った鼻筋。
まるで人形のような美しい子だった。
それにしても。
カイル様はわたくしと話す時よりも楽しそうだ。
どうしてあんな子が、カイル様のそばにいるの。
わたくしは幼い頃からカイル様と一緒にいるのに
あんな表情見たことないわ。
わたくしは歯ぎしりする。
わたくしはカイル様の誕生パーティに参加している
母からカイル殿下がいなくなったので連れ戻してこいと頼まれ、馬車で城下街にやってきたのだ。
そして、仲良く話しているカイル様を見つけた。
「カイル様」
わたくしは馬車を降りる。
カイル殿下と二人の少女が振り返った。
「お迎えにあがりました」
「ゲッ。アリス」
カイル殿下がげんなりした顔をする。
銀髪の少女が目をぱちくりさせた。
「知ってる人?」
「あぁ。俺の幼馴染のアリスだ」
「はじめまして。わたくしはアリス・オリヴィア。
オリヴィア大公爵の娘です」
わたしは淑女の礼をとる。
「はじめまして。アリス様。わたしはヴァイオレット・アゼリアといいます。アゼリア公爵の娘です!」
嬉しそうに微笑み、淑女の礼をする
ヴァイオレット嬢。
「わ、私はフロルです!」
赤い瞳の少女が言った。
小動物のように可愛らしい。
服装を見る限り、平民だろうか。
平民と仲良くするなんて信じられないわ。
「カイル様がお世話になりました。
さぁ、殿下。帰りましょう」
わたくしはにっこり笑う。
カイル様はため息をつき
「分かったよ」と不満げな様子だ。
「ヴァイオレット、フロル。また会おう」
「今日はありがとう。また会えて嬉しかった」
ヴァイオレット嬢の言葉に
嬉しそうに笑うカイル殿下に黒い感情が渦巻いた。
「またね、カイルくん」
フロルが親しげに手を振る。
わたくしと殿下は馬車に乗り込み、城に向かった。
「カイル様、今日はあなたの
誕生パーティなのですよ。
勝手に外に出ないでくださいませ」
注意すると殿下は口をへの字に曲げた。
「だって、つまらなかったんだから仕方ないだろ」
そっぽを向く。
「いくらつまらなくともカイル様は王子です。王家の者がそのようでは国民に示しがつきません。」
カイル様は黙ったままだ。
「それに、あのヴァイオレットとフロルという娘。
もう会うのはおやめください」
カイル様はわたしを見る。
「なんでだよ、ヴァイオレットとフロルは友人だ!
会うくらいはいいだろう?」
声を上げるカイル様。
わたくしは眼中にないのね。
胸がキュッと苦しくなった。
「カイル様、結婚前の男女が会っていたら
周囲に噂されます。それに
フロルという少女は平民ですよ。」
カイル殿下は苛立った表情を見せた。
「だから、なんだって言うんだよ。身分は関係ない!
それにアリスとも会ってるじゃないか」
「わたくしは構わないのです」
殿下は怪訝な顔をする。
あなたのことが好きだから。
あなたの婚約者になりたいから。
「カイル様、わたくしは
あなたのことをお慕いしています」
カイル様は固まる。
「え?」
「ですから、わたくしのことを
好きになってください」
お願い。わたくしを選んで。
「本当に?」
わたくしは頷く。
カイル様は動揺して瞳を泳がせた。
そして、俯く。
「ごめん」
と一言。
「あの、ヴァイオレットとかいう娘のせいですか?」
怒りと悲しみで声が震える。
「え?」
「カイル様はいつも、ヴァイオレットのことを考えているでしょう? わたくしといるときだって上の空。
ヴァイオレット嬢のことが好きなのですか?!」
カイル様は顔を赤らめる。
「ま、まさかっ!! 好きなわけないだろう」
その顔は恋している証だ。
涙が溢れた。
どうして、わたくしじゃないの。
たった数回会っただけの令嬢に恋をするの。
わたくしは幼い頃から殿下のこと
をお慕いしているのに。
「アリス、ごめん」
カイル様がわたくしの頰に手を伸ばす。
「触らないでくださいませ!!」
わたくしはカイル様の手を振り払う。
「……ごめん」
カイル様は寂しそうに笑った。
◯◯◯
誕生パーティに、殿下を送り届けると
わたしは庭園で座り込んだ。
わたくし、殿下になんでことをしてしまったの。
自分が嫌になりため息をつく。
「おや、こんなところで何をしてるの?」
聞き馴染みのある声に振り向く。
肩まで伸ばした金髪に紺色の瞳の美少年。
「シモン様」
カイル様のお兄様で、王太子であらせられる
シモン様だった。
「いえ、自分が嫌になり、
ため息をついていただけです。」
「一体、何があったんだい?」
シモン様はわたくしの隣に座る。
わたくしはカイル様に想いを告げ、失恋したこと、
カイル様はヴァイオレット嬢のことが
好きだということ、カイル様の手を振り払ってしまったことを話した。
すると、シモン様はにっこり笑った。
「そういうことか。僕が協力してあげるよ」
「協力も何もわたくしは失恋したのですよ。
もう手遅れです」
「いや、まだ方法ならあるよ」
「え?」
わたしは顔を上げる。
「ヴァイオレット嬢を殺すんだ」
シモン様は怪しげに微笑んだ。
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