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追放と金貨増殖バグ
「ヘンリー、お前はというヤツは……もういい、私の目の前から消えてくれないか」
ギルドの上司ガヘリスは深い溜息を漏らし、僕にそう宣告した。これはつまり“クビ”って事? ウソでしょ……クビなんかにされたら、どう生活すればいいんだ。借金だってたくさんあるのに。
「ご、ご冗談でしょう?」
「冗談に見えるか、ヘンリー。私は本気だぞ。貴様のような無能落ちこぼれは、我がギルドには不要だ。目障りだ!!」
馬鹿な。この帝国にある大手ギルドをひとりで回していたのは僕だ。女性の受付嬢もいるけれど、それを纏め上げていた実質的なリーダーも僕だった。なのに、クビだって!? 僕がいなくなったら、この職場は回らないぞ。
そう訴えても、ガヘリスは頑なに“消えろ”と言うばかり。そんな横暴な。
「考え直してください、ガヘリスさん」
「もう決定した事だ。覆すことは出来ない。ヘンリー、お前には『国外退去』の命令も下っているぞ……はっはっは」
「――は? 国外退去?」
「ほら、この書類に目を通してみろ」
ガヘリスから一枚の紙を受け取る。そこには“ヘンリーをランカスター帝国から追放する”と書かれていた。きちんと国の判も押されている。本物だ……。
――その瞬間、僕の視界が歪んでいく。
しまった……あの紙には魔力が込められていたらしい。読み上げた瞬間に『強制テレポート』を食らい、僕はどこかへと飛ばされてしまった――。
……なんて事だ。
信じられない。
三年ほど頑張ってギルドを支えて来たのに、この仕打ち。そりゃ、ガヘリスが僕を見下していたり、よく思っていないというのは噂に聞いていた。けれど、ここまでやるか。
こんなのってないよ……。
――気づくと僕は帝国の外に放り出されていた。国が小さく見える。どうやら、かなりの距離があるな。ここは荒野で何もない地帯だし、戻るのは大変だ。しかも『追放』を受けたから、もう戻れない。
帝国の法律により、追放を受けた者の入国は認められなかった。僕はおしまいだ。何もかも失った……。
そんな時だった。
青空から『ひゅ~~~』と何か落ちてくるような音がしていた。……なんだ、この音?? 空を見上げると黒い影が落ちていた。
鳥? いや、違う。
それにしては巨大だ。
じゃあ、あれは――うわッ、人間だ!!
まずいぞ、受け止めないと死んじゃうよ、あの落下速度だと。しかも、女の子っぽいぞ。銀髪の女の子!? なんで空から!
「ちょ、ウソでしょ!!」
必死に受け止めようとするけど、僕は『元ギルド職員』で『ぷちテイマー』という弱小職。運動神経もよくないので、女の子のキャッチは無理だった。
受け止められず――
ずどぉぉぉぉぉんと地響きが鳴り響き、女の子は地面へ激突。地面に人型が出来ていた。あ~…なんてことだ!!
「き、君……大丈夫か!!」
人型の穴を覗く。
すると、ぴょこっと顔を出す少女。
銀髪の可愛らしい顔立ちをした女の子だった。服は……修道服かな。なんだか『ヨーク共和国』の人っぽい雰囲気だ。
「助けて頂きありがとうございます! わたくしは聖女の『ヨーク』と申します。以後お見知りおきを」
「――いや、君よく無事だったね。頑丈だなあ。ちなみに、僕はヘンリーと言うけどね」
「ええ、あれくらいは平気です。それより、これは運命の邂逅ですよ、ヘンリーさん!」
なんだか友好的というか馴染むの早いなぁ。僕はまだ女の子が空から降ってきた時点で大事件だっていうのに、気持ちの切り替えが追い付かない。
銀髪の少女は“ヨーク”というのか。
ヨーク?
それって共和国の名前と一致しているじゃないか。偶然か? ――とにかく、なるほど。こうして汚れを払い、立たせると綺麗な身なりをしている。普通に歩いていれば目立つレベルの容姿。染みひとつない白肌はツルツルのモチモチ。凄いな。特徴的な赤と青のオッドアイは、宝石のように輝いていた。
「運命ねぇ。でも、僕はランカスター帝国を追い出された無能だよ?」
「そんなの関係ありません。わたくしとヘンリーさんは出会うべくして出会ったんですから。――だから、この素晴らしい能力を差し上げます」
突然、手を繋がれ僕はびっくりした。女の子から手を繋がれるとか、そんなの人生で初めてだったからだ。ヤバ……ドキドキする。
すると、僕は金色のオーラに包まれた。突然、膨大な魔力が流入してきた。このヨークから!?
「こ、これは……!」
「それはギフト『変換』能力です! あらゆる物体を“お金”に換えちゃうんですよ。凄くないですか!?」
自信満々にヨークは笑うが、事態は急変。手を放した瞬間、俺の右手から『金貨』が出まくった――!!
「うああああああああああああ……!! なんだこりゃああああああああああ……!!」
噴水のように次々に本物の金貨が溢れ出る。どんどん増え続け、僕は腰を抜かした。なんだ、なんなんだこれ!!
「あれ……おかしいですね。その能力は、物体を変換してお金を作るギフトだったんですが……どうやら、失敗しちゃたみたいです。テヘペロッ」
「テヘペロッじゃねえええええ!! なんとかしてくれ! このままだと金貨に押しつぶされてしまうよ!」
まだ金貨が右手から出てくるんですけどー! もう山盛りだ。一見すれば大金持ちなのだが、そんな場合ではない。
「そ、そうですね。では、すと~っぷ!」
と、ヨークが僕の“左手”を握ると、金貨の増殖は止まった。……なんだよこれ!
おかげで金貨が樽一杯分は出てきた。これだけあれば『城』が建つぞ。てか、一生遊んで暮らせる。貴族だってこんな金貨は持っていない。
「これ、どうする……」
「金貨をアイテムボックスで回収して下さい。そうしないと、持てないでしょう?」
幸い、僕は元ギルド職員。お金の管理も任されていたので、アイテムボックスは無駄にあった。これくらいなら余裕で収納できる。
冷静に金貨に触れ、僕は『回収』を発動。山盛りとなっていた金貨を全部回収した。こんな時は銀行も任されて良かったと思った。けれど、そういう問題か!? 一気に金持ちになってしまったけど、本当にこれでいいのか?
「ねえ、君。このスキルってなんだよ」
「言ったでしょう、ギフトであり、変換スキルだと。でも、ちょっと違ったみたいです。これでは『金貨増殖バグ』ですね。あはは……」
僕は、自称聖女からそんな『ギフト』を貰い、一瞬で転落人生から勝ち組になってしまった。
ギルドの上司ガヘリスは深い溜息を漏らし、僕にそう宣告した。これはつまり“クビ”って事? ウソでしょ……クビなんかにされたら、どう生活すればいいんだ。借金だってたくさんあるのに。
「ご、ご冗談でしょう?」
「冗談に見えるか、ヘンリー。私は本気だぞ。貴様のような無能落ちこぼれは、我がギルドには不要だ。目障りだ!!」
馬鹿な。この帝国にある大手ギルドをひとりで回していたのは僕だ。女性の受付嬢もいるけれど、それを纏め上げていた実質的なリーダーも僕だった。なのに、クビだって!? 僕がいなくなったら、この職場は回らないぞ。
そう訴えても、ガヘリスは頑なに“消えろ”と言うばかり。そんな横暴な。
「考え直してください、ガヘリスさん」
「もう決定した事だ。覆すことは出来ない。ヘンリー、お前には『国外退去』の命令も下っているぞ……はっはっは」
「――は? 国外退去?」
「ほら、この書類に目を通してみろ」
ガヘリスから一枚の紙を受け取る。そこには“ヘンリーをランカスター帝国から追放する”と書かれていた。きちんと国の判も押されている。本物だ……。
――その瞬間、僕の視界が歪んでいく。
しまった……あの紙には魔力が込められていたらしい。読み上げた瞬間に『強制テレポート』を食らい、僕はどこかへと飛ばされてしまった――。
……なんて事だ。
信じられない。
三年ほど頑張ってギルドを支えて来たのに、この仕打ち。そりゃ、ガヘリスが僕を見下していたり、よく思っていないというのは噂に聞いていた。けれど、ここまでやるか。
こんなのってないよ……。
――気づくと僕は帝国の外に放り出されていた。国が小さく見える。どうやら、かなりの距離があるな。ここは荒野で何もない地帯だし、戻るのは大変だ。しかも『追放』を受けたから、もう戻れない。
帝国の法律により、追放を受けた者の入国は認められなかった。僕はおしまいだ。何もかも失った……。
そんな時だった。
青空から『ひゅ~~~』と何か落ちてくるような音がしていた。……なんだ、この音?? 空を見上げると黒い影が落ちていた。
鳥? いや、違う。
それにしては巨大だ。
じゃあ、あれは――うわッ、人間だ!!
まずいぞ、受け止めないと死んじゃうよ、あの落下速度だと。しかも、女の子っぽいぞ。銀髪の女の子!? なんで空から!
「ちょ、ウソでしょ!!」
必死に受け止めようとするけど、僕は『元ギルド職員』で『ぷちテイマー』という弱小職。運動神経もよくないので、女の子のキャッチは無理だった。
受け止められず――
ずどぉぉぉぉぉんと地響きが鳴り響き、女の子は地面へ激突。地面に人型が出来ていた。あ~…なんてことだ!!
「き、君……大丈夫か!!」
人型の穴を覗く。
すると、ぴょこっと顔を出す少女。
銀髪の可愛らしい顔立ちをした女の子だった。服は……修道服かな。なんだか『ヨーク共和国』の人っぽい雰囲気だ。
「助けて頂きありがとうございます! わたくしは聖女の『ヨーク』と申します。以後お見知りおきを」
「――いや、君よく無事だったね。頑丈だなあ。ちなみに、僕はヘンリーと言うけどね」
「ええ、あれくらいは平気です。それより、これは運命の邂逅ですよ、ヘンリーさん!」
なんだか友好的というか馴染むの早いなぁ。僕はまだ女の子が空から降ってきた時点で大事件だっていうのに、気持ちの切り替えが追い付かない。
銀髪の少女は“ヨーク”というのか。
ヨーク?
それって共和国の名前と一致しているじゃないか。偶然か? ――とにかく、なるほど。こうして汚れを払い、立たせると綺麗な身なりをしている。普通に歩いていれば目立つレベルの容姿。染みひとつない白肌はツルツルのモチモチ。凄いな。特徴的な赤と青のオッドアイは、宝石のように輝いていた。
「運命ねぇ。でも、僕はランカスター帝国を追い出された無能だよ?」
「そんなの関係ありません。わたくしとヘンリーさんは出会うべくして出会ったんですから。――だから、この素晴らしい能力を差し上げます」
突然、手を繋がれ僕はびっくりした。女の子から手を繋がれるとか、そんなの人生で初めてだったからだ。ヤバ……ドキドキする。
すると、僕は金色のオーラに包まれた。突然、膨大な魔力が流入してきた。このヨークから!?
「こ、これは……!」
「それはギフト『変換』能力です! あらゆる物体を“お金”に換えちゃうんですよ。凄くないですか!?」
自信満々にヨークは笑うが、事態は急変。手を放した瞬間、俺の右手から『金貨』が出まくった――!!
「うああああああああああああ……!! なんだこりゃああああああああああ……!!」
噴水のように次々に本物の金貨が溢れ出る。どんどん増え続け、僕は腰を抜かした。なんだ、なんなんだこれ!!
「あれ……おかしいですね。その能力は、物体を変換してお金を作るギフトだったんですが……どうやら、失敗しちゃたみたいです。テヘペロッ」
「テヘペロッじゃねえええええ!! なんとかしてくれ! このままだと金貨に押しつぶされてしまうよ!」
まだ金貨が右手から出てくるんですけどー! もう山盛りだ。一見すれば大金持ちなのだが、そんな場合ではない。
「そ、そうですね。では、すと~っぷ!」
と、ヨークが僕の“左手”を握ると、金貨の増殖は止まった。……なんだよこれ!
おかげで金貨が樽一杯分は出てきた。これだけあれば『城』が建つぞ。てか、一生遊んで暮らせる。貴族だってこんな金貨は持っていない。
「これ、どうする……」
「金貨をアイテムボックスで回収して下さい。そうしないと、持てないでしょう?」
幸い、僕は元ギルド職員。お金の管理も任されていたので、アイテムボックスは無駄にあった。これくらいなら余裕で収納できる。
冷静に金貨に触れ、僕は『回収』を発動。山盛りとなっていた金貨を全部回収した。こんな時は銀行も任されて良かったと思った。けれど、そういう問題か!? 一気に金持ちになってしまったけど、本当にこれでいいのか?
「ねえ、君。このスキルってなんだよ」
「言ったでしょう、ギフトであり、変換スキルだと。でも、ちょっと違ったみたいです。これでは『金貨増殖バグ』ですね。あはは……」
僕は、自称聖女からそんな『ギフト』を貰い、一瞬で転落人生から勝ち組になってしまった。
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