6 / 62
金貨投げの恐るべきダメージ
しおりを挟む
血の付着した斧が嵐のように迫ってくる。
やば……僕にこんな攻撃を避ける能力なんて……おぉ?
急に目の前に“見えない壁”が現れ、斧攻撃を防御してくれた。この不思議な力はなんだ?
「シャインブレイズ!!」
この声はヨークだ。
そうか、彼女の魔法スキルといったところか。そうか、すっかり忘れていたけどヨークは“聖女”だったな。
シャインブレイズは、どうやら物理攻撃を防御するものらしく、敵のブラッドアックスを完全に防いでいた。
この隙に乗じて僕は、金貨を投げた。
「くらえ! 金貨投げ!!」
大量の金貨を投げて遠距離物理攻撃。硬貨は、見事に女の鳩尾へ命中した。
「がはッ!!」
恐ろしい程の高速回転で壁に激突。
メリ込んでさえしまった。
修理代は後で支払おう!
それより、金貨を大量に消費すると、ここまでの威力となるとはな。そう、ちなみに『金貨投げ』は金貨を消費していた。
1枚につき固定ダメージで『1000』の威力があるようだ。つまり、100枚使えば『100000』のダメージを。1000枚使えば『1000000』のダメージを与えられるわけだ。
しかも固定ダメージだから、相手の防御力は無視される。どんなレア防具をしていようが関係ない。
更に更に、僕は『金貨増殖バグ』持ち。金が減る事は一切ない。無限の金貨で攻撃をし続けられるのだ。
僕は、倒れている女の前に立つ。
どうやら辛うじて意識はあるようだ。
「なぜ僕を狙った」
「……くっ、ころせっ!!」
「そういうのいいから! 理由を教えてくれ。チップは弾むよ」
てのひらに50枚の金貨を出して誘惑してみた。これで受けるもよし、拒否すれば衛兵に引き渡すだけだ。
「わ、私はガヘリスに雇われたんだ。お前を殺せば金貨10枚をくれると約束してくれたんだ」
またガヘリスか……あの野郎。僕を殺す気でいたのか……つまり、この女は暗殺者。追放だけで飽き足らず……ついに殺しまで。
そんなに僕を追い詰めて楽しいのか、ガヘリス!
「じゃあ、そのガヘリスを殺してくれ。金貨100枚を払う」
「……わ、分かった。依頼の失敗は今日が初めてだった……いつもなら、完遂なのだがな。ちょっと悔しいよ。でも、依頼はきちんとこなす」
よし、落ちたな。
金の力は偉大だね。
とにかく、向こうが暗殺を依頼したのなら、僕にもその権利があるはず。殺意を向けてきた以上、こちらも容赦はしない。
「じゃあ、頼んだよ。前払いで10枚払っておくから」
「あ、ありがとう……あなたのような依頼人は初めてだっ!」
「ああ、頼んだよ。暗殺者さん」
「必ずガヘリスの首を持って帰ろう」
丁寧に出入り口から帰っていくアサシン。ブラッドアックスこそ超レア装備だけど、大丈夫かなあ。
* * *
宿屋を出ると、ヨークが頭を下げていた。
「どうした、急に」
「とても快適な宿屋に泊まらせてもらったので、感謝を示しているんです」
「感謝なんて必要ない。この力はヨークのおかげなんだから」
そうだ、ヨークの力がなければ僕にこんな薔薇色の人生は巡ってこなかった。ガヘリスに暗殺されていたかもしれないんだ。
僕の方こそ、ヨークに感謝だ。
「いえ、そんな……わたしなんて」
「気にするな。僕とヨークは仲間だろ?」
「は、はいっ、嬉しいです! わたし、ずっとぼっちだったので本当に嬉しい」
そうか、ヨークは家族を失ったと。なら、僕と一緒だ。僕にも家族はいなかった。唯一、妹はいたけど生き別れ。今はどこに居るか分からない。
だから、ギルド職員をやって必死に生活を送っていた。でも、ガヘリスは僕を散々馬鹿にして……居場所をさえ奪った。
全部失ったかと思ったけど、ヨークが助けてくれた。やっぱり、僕の方こそ感謝しないと罰が当たるな。
「なら、ネヴィルのところへ向かおう。新しい家を買うんだ」
「おぉ、家をですか!」
「昨日の家は吹き飛んでしまったからな。建て直すにも時間が掛かるだろうし、なら、他の屋敷を買うしかないだろう」
そんなわけで、ネヴィルの居る『ラドロー城』へ向かった。そういえば、あれって屋敷ではなく、城だったんだな。
道中、ヨークが僕に訊ねてきた。
「あの、ヘンリーさん」
「なんだ?」
「ヘンリーさんは、なぜギルド職員をやられていたんですか?」
「僕はもともと『ぷちテイマー』でね。『ぷちドラゴン』使いだったんだ。今もその能力は失われていないけどさ」
「へえ、テイマーさんだったんですね!」
「ああ、だから……ドラゴンの事を詳しく知りたかったというか。でも、必死に働いていたらそんな暇もなかった。毎日生活するだけで必死だった。気づけばギルド職員の日々だった」
伝説のテイマーになろうと思っていたんだけど、その才能は僕にはなかった。だから、ぷちテイマーのまま。半端者だった。
けど、金のある今なら……なんでも出来る気がしていた。
ふと、ペットショップが目に入ったのだが、どうしようかな。
やば……僕にこんな攻撃を避ける能力なんて……おぉ?
急に目の前に“見えない壁”が現れ、斧攻撃を防御してくれた。この不思議な力はなんだ?
「シャインブレイズ!!」
この声はヨークだ。
そうか、彼女の魔法スキルといったところか。そうか、すっかり忘れていたけどヨークは“聖女”だったな。
シャインブレイズは、どうやら物理攻撃を防御するものらしく、敵のブラッドアックスを完全に防いでいた。
この隙に乗じて僕は、金貨を投げた。
「くらえ! 金貨投げ!!」
大量の金貨を投げて遠距離物理攻撃。硬貨は、見事に女の鳩尾へ命中した。
「がはッ!!」
恐ろしい程の高速回転で壁に激突。
メリ込んでさえしまった。
修理代は後で支払おう!
それより、金貨を大量に消費すると、ここまでの威力となるとはな。そう、ちなみに『金貨投げ』は金貨を消費していた。
1枚につき固定ダメージで『1000』の威力があるようだ。つまり、100枚使えば『100000』のダメージを。1000枚使えば『1000000』のダメージを与えられるわけだ。
しかも固定ダメージだから、相手の防御力は無視される。どんなレア防具をしていようが関係ない。
更に更に、僕は『金貨増殖バグ』持ち。金が減る事は一切ない。無限の金貨で攻撃をし続けられるのだ。
僕は、倒れている女の前に立つ。
どうやら辛うじて意識はあるようだ。
「なぜ僕を狙った」
「……くっ、ころせっ!!」
「そういうのいいから! 理由を教えてくれ。チップは弾むよ」
てのひらに50枚の金貨を出して誘惑してみた。これで受けるもよし、拒否すれば衛兵に引き渡すだけだ。
「わ、私はガヘリスに雇われたんだ。お前を殺せば金貨10枚をくれると約束してくれたんだ」
またガヘリスか……あの野郎。僕を殺す気でいたのか……つまり、この女は暗殺者。追放だけで飽き足らず……ついに殺しまで。
そんなに僕を追い詰めて楽しいのか、ガヘリス!
「じゃあ、そのガヘリスを殺してくれ。金貨100枚を払う」
「……わ、分かった。依頼の失敗は今日が初めてだった……いつもなら、完遂なのだがな。ちょっと悔しいよ。でも、依頼はきちんとこなす」
よし、落ちたな。
金の力は偉大だね。
とにかく、向こうが暗殺を依頼したのなら、僕にもその権利があるはず。殺意を向けてきた以上、こちらも容赦はしない。
「じゃあ、頼んだよ。前払いで10枚払っておくから」
「あ、ありがとう……あなたのような依頼人は初めてだっ!」
「ああ、頼んだよ。暗殺者さん」
「必ずガヘリスの首を持って帰ろう」
丁寧に出入り口から帰っていくアサシン。ブラッドアックスこそ超レア装備だけど、大丈夫かなあ。
* * *
宿屋を出ると、ヨークが頭を下げていた。
「どうした、急に」
「とても快適な宿屋に泊まらせてもらったので、感謝を示しているんです」
「感謝なんて必要ない。この力はヨークのおかげなんだから」
そうだ、ヨークの力がなければ僕にこんな薔薇色の人生は巡ってこなかった。ガヘリスに暗殺されていたかもしれないんだ。
僕の方こそ、ヨークに感謝だ。
「いえ、そんな……わたしなんて」
「気にするな。僕とヨークは仲間だろ?」
「は、はいっ、嬉しいです! わたし、ずっとぼっちだったので本当に嬉しい」
そうか、ヨークは家族を失ったと。なら、僕と一緒だ。僕にも家族はいなかった。唯一、妹はいたけど生き別れ。今はどこに居るか分からない。
だから、ギルド職員をやって必死に生活を送っていた。でも、ガヘリスは僕を散々馬鹿にして……居場所をさえ奪った。
全部失ったかと思ったけど、ヨークが助けてくれた。やっぱり、僕の方こそ感謝しないと罰が当たるな。
「なら、ネヴィルのところへ向かおう。新しい家を買うんだ」
「おぉ、家をですか!」
「昨日の家は吹き飛んでしまったからな。建て直すにも時間が掛かるだろうし、なら、他の屋敷を買うしかないだろう」
そんなわけで、ネヴィルの居る『ラドロー城』へ向かった。そういえば、あれって屋敷ではなく、城だったんだな。
道中、ヨークが僕に訊ねてきた。
「あの、ヘンリーさん」
「なんだ?」
「ヘンリーさんは、なぜギルド職員をやられていたんですか?」
「僕はもともと『ぷちテイマー』でね。『ぷちドラゴン』使いだったんだ。今もその能力は失われていないけどさ」
「へえ、テイマーさんだったんですね!」
「ああ、だから……ドラゴンの事を詳しく知りたかったというか。でも、必死に働いていたらそんな暇もなかった。毎日生活するだけで必死だった。気づけばギルド職員の日々だった」
伝説のテイマーになろうと思っていたんだけど、その才能は僕にはなかった。だから、ぷちテイマーのまま。半端者だった。
けど、金のある今なら……なんでも出来る気がしていた。
ふと、ペットショップが目に入ったのだが、どうしようかな。
22
あなたにおすすめの小説
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
「女のくせに強すぎて可愛げがない」と言われ婚約破棄された追放聖女は薬師にジョブチェンジします
紅城えりす☆VTuber
恋愛
*毎日投稿・完結保証・ハッピーエンド
どこにでも居る普通の令嬢レージュ。
冷気を放つ魔法を使えば、部屋一帯がや雪山に。
風魔法を使えば、山が吹っ飛び。
水魔法を使えば大洪水。
レージュの正体は無尽蔵の魔力を持つ、チート令嬢であり、力の強さゆえに聖女となったのだ。
聖女として国のために魔力を捧げてきたレージュ。しかし、義妹イゼルマの策略により、国からは追放され、婚約者からは「お前みたいな可愛げがないやつと結婚するつもりはない」と婚約者破棄されてしまう。
一人で泥道を歩くレージュの前に一人の男が現れた。
「その命。要らないなら俺にくれないか?」
彼はダーレン。理不尽な理由で魔界から追放された皇子であった。
もうこれ以上、どんな苦難が訪れようとも私はめげない!
ダーレンの助けもあって、自信を取り戻したレージュは、聖女としての最強魔力を駆使しながら薬師としてのセカンドライフを始める。
レージュの噂は隣国までも伝わり、評判はうなぎ登り。
一方、レージュを追放した帝国は……。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる