金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗

文字の大きさ
13 / 62

湖の大魚・キングフィッシュ

しおりを挟む
 セント・ポール大聖堂を早々に立ち去り、テレポートスクロールを使った。もう街に用はない。

 不思議な光に包まれ、転移すると屋敷の前に辿り着く。そこには丁度、エドワードとアルマがいた。待ってくれていたのかな。

 そういえば、もうすっかり夕方。日が沈む前だった。


「おかえりなさいませ、ヘンリー様、ヨーク様」
「お待ちしておりました、ヘンリー様、ヨーク様」


 二人とも丁寧に出迎えてくれた。
 屋敷の中へ戻り、食堂へ入るとリナがテーブルの前に座っていた。

「ヘンリーさん、ヨークさん、お食事にしましょう」
「凄いタイミングだな。こちらの行動が分かっていたかのような」
「かもしれませんね」


 どういう事だ? リナにはそういう能力とかあるのだろうか。特に気にせず、僕とヨークは椅子に座る。

 テーブルの上には、たくさんの料理が並んでいた。うわ、なにこれ……魚料理かな。こっちは肉のようだけど見たことない。どれも高級食材っぽいぞ。

 これが貴族の料理か。

「い、良い匂いです。食べてもいいんですか!?」
「はい、ヨーク様。どうぞ、召し上がってください」

 僕もナイフとフォークを手に取り、魚料理を口に運ぶ。……うま、なんだこの魚。油がのってプルップルだ。

「これはなんて魚?」
「それは“キングフィッシュ”という大魚でございます、ヘンリー様。あの湖、ニニアンで私が釣り上げたものとなります」

 と、エドワードが説明をくれた。あの湖で釣り上げたのか! すごいな、それ。ていうか、釣りが出来るんだ。

 へえ、ギルド職員時代はそんな趣味に時間を割く暇がなかったから、やってみたいな。今こそ自由な時間があるし、いろいろ挑戦してみたい。

「エドワード、料理だけでなく釣りもできるんだ」
「ええ、食材は自給自足が基本ですからね。たまに街で買ったりもしますが」
「自給自足? 畑とか農業やってるんだ?」
「はい、基本的には私とアルマで農作物を育て、収穫しております。たまにネヴィル様やリナ様にも手伝っていただいておりますが」


 そういえば、屋敷の前には農地が広がっていたな。いろんな果物や野菜の畑が広がっていた。それだけじゃない、お茶栽培もしていたな。
 酪農らくのう――牛モンスターもいたし、牛乳とかも作っているようだ。それと畜産。イノシシモンスターが見えたし、そうか、あれは野生ではなく家畜か。


 いいね、僕も混ざってみようかな。その昔は、こういう屋敷生活に憧れていた。でも優雅に生活を送るイメージだったけど、ここは違った。
 自分で食べ物を作り、静かに暮らしている。なんていうか……理想の田舎暮らし的な。こういう隠居暮らしもいいかもな。

 だけど、ガヘリス問題は解決しなければならない。自分だけでなく、ヨークの仇でもあるガヘリスを。

 でも今は快適な暮らしをしてみるのもいいだろう。人間、いつ、どんな時に災難が降りかかるか分からないのだから――今を大切に生きよう。


「わたくし、農業をやってみたいです!!」


 いきなり椅子から立ち上がり、叫ぶヨーク。あまりに大声で耳がキーンとした。


「ヨ、ヨークさん!?」
「あ……ごめんなさい、リナさん」
「いいんです。でも、農業に興味があるのですね! 一緒にやりますか?」
「はい、やってみたいです!」

「分かりました。わたしが手取り足取り教えましょう」
「わーい! リナさん、ありがとぉー」

 なんて良い笑顔だ。
 今日一番のニコニコスマイルじゃないか? でもいい、ヨークが何かをしたいのなら僕は止めない。それに、僕は僕で釣りをやってみたいな。


 だけど、食後に事態は急変した……。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

処理中です...