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追放の呪い
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ダンジョンからはいつでも撤退可能で任意で転移できた。
「おぉ、地下一階へ戻ってこれた」
「はい、出入口前にワープできるので便利です」
アルマがそう教えてくれた。
通常ダンジョンでは必須と言われている『帰還結晶』が不要だとはね。
帰還結晶は、使用すると特定の街やダンジョン前へ帰還できるアイテム。アイテムショップで1000セントほどで売っている。
それが不要だとはな。
庭に出て屋敷へ戻る。
「付き合ってくれてありがとう、アルマ」
「いえいえ、おかげで『はちみつ』を入手できました。お礼を言うのは、私の方です」
「美味しいパンケーキを頼むよ」
「はい。それでは作ってきます」
丁寧に頭を下げ、アルマは去っていく。
入れ替わるようにしてネヴィルが現れ、爽やかな笑顔を向けてきた。
「おはよう! ヘンリー、ヨーク」
僕たちも挨拶を返す。
「おはよう。元気だな、ネヴィル」
「おはようございます。ネヴィルさん」
ネヴィルは、封筒を投げてきた。
僕はそれをキャッチした。
「封蝋済みの手紙?」
「そう、それは俺が書いた手紙さ。そいつを持ってランカスター帝国へ行くといい。必ずクリフォード卿と面会できる」
「おぉ、そういう事か! ありがとう、ネヴィル」
「礼には及ばない。どちらにせよ、ヘンリー、お前はランカスター帝国へ行かなければならないだろう」
そうだ、ガヘリスを何とかしないと。でも、僕は『追放処分』を受けているから……どうやって帝国内へ入ったものか。
魔法による追放だから、立ち入れば呪いを受けて死ぬかも。
確か、ギルド職員時代にそんな物騒な情報を耳にした覚えがあった。
となると、まずは帝国へ入る方法を模索しないとな。
「本当に助かる。朝食を食べたら出発しようと思うよ」
「分かった。そういえば、暗殺者さんがヘンリーを探していたぞ」
「僕を?」
ちょうど良い。
僕も暗殺者さんに聞きたい事があった。
* * *
屋敷内をウロウロしていると、暗殺者さんの姿を見つけた。ここは……魔導書が納められている書斎。こんなところにいたのか。
「何しているの、暗殺者さん」
「やあ、ヘンリー」
「やあ、じゃなくてさ」
「魔導書を読んでいたんだ」
「いや、それって魔法使いとか賢者が読むものだろ? 暗殺者さんじゃ、分からないんじゃ」
「そうでもない。例えばこの風属性スキル」
手に電気を帯びる暗殺者さん。って、嘘でしょ!? あの職業は普通、魔法スキルが使えないはず。
「それって、魔法使いの『ライトニングボルト』?」
「そう。下級魔法だけどスキルレベルが高ければ結構強い」
【ライトニングボルト】【Lv.4】
【詳細】
風属性攻撃を与える。
Lv.1:魔法攻撃力 100%
Lv.2:魔法攻撃力 200%
Lv.3:魔法攻撃力 300%
Lv.4:魔法攻撃力 400%
「魔導書を読んでそんな簡単に覚えられるものだっけ。僕の知識によれば、職業を選んだ瞬間からスキルツリーは決まっているって聞いたけど」
「その通り。でも、常に例外は存在する」
「例外――か」
僕の知らない世界があるのかもしれない。ギルド職員といっても三年ほどのキャリア。冒険者としては数日も経過していないヒヨッコ。
世界は広いんだ。
何があってもおかしくはない。
「それより、私に用があるんでしょ」
「あ、ああ……ランカスター帝国へ入りたいんだ」
「え? 普通に入ればいいのでは?」
僕は、追放された過去の事情を離した。
「――というわけで、現状は帝国には戻れない状態なんだ」
「そんな海よりも深い事情があったとは。ヨークちゃんとは、その時に出会ったのね」
「ああ、暗殺者さんなら何か知っているかなって思ってさ」
ジッと僕を見つめる暗殺者さん。なんかそうジロジロ見られると居心地が悪い。というか、なんでそんな僕を見つめるの!?
視線にドキドキしていると、彼女は笑った。
「分かった。その代わり、報酬が欲しい」
「金貨か」
「うん。成功報酬としてサマセット金貨100枚が欲しい」
「分かった。金なら任せくれ」
「交渉成立だね」
握手を交わし、ここに契約は完了した。
「そういえば、暗殺者さんって名前は?」
「名前なんて忘れたさ。暗殺者でいい」
「えっ!? 忘れたって……」
そんな事あるの?
――とにかく“アサシンさん”でいっか。
「おぉ、地下一階へ戻ってこれた」
「はい、出入口前にワープできるので便利です」
アルマがそう教えてくれた。
通常ダンジョンでは必須と言われている『帰還結晶』が不要だとはね。
帰還結晶は、使用すると特定の街やダンジョン前へ帰還できるアイテム。アイテムショップで1000セントほどで売っている。
それが不要だとはな。
庭に出て屋敷へ戻る。
「付き合ってくれてありがとう、アルマ」
「いえいえ、おかげで『はちみつ』を入手できました。お礼を言うのは、私の方です」
「美味しいパンケーキを頼むよ」
「はい。それでは作ってきます」
丁寧に頭を下げ、アルマは去っていく。
入れ替わるようにしてネヴィルが現れ、爽やかな笑顔を向けてきた。
「おはよう! ヘンリー、ヨーク」
僕たちも挨拶を返す。
「おはよう。元気だな、ネヴィル」
「おはようございます。ネヴィルさん」
ネヴィルは、封筒を投げてきた。
僕はそれをキャッチした。
「封蝋済みの手紙?」
「そう、それは俺が書いた手紙さ。そいつを持ってランカスター帝国へ行くといい。必ずクリフォード卿と面会できる」
「おぉ、そういう事か! ありがとう、ネヴィル」
「礼には及ばない。どちらにせよ、ヘンリー、お前はランカスター帝国へ行かなければならないだろう」
そうだ、ガヘリスを何とかしないと。でも、僕は『追放処分』を受けているから……どうやって帝国内へ入ったものか。
魔法による追放だから、立ち入れば呪いを受けて死ぬかも。
確か、ギルド職員時代にそんな物騒な情報を耳にした覚えがあった。
となると、まずは帝国へ入る方法を模索しないとな。
「本当に助かる。朝食を食べたら出発しようと思うよ」
「分かった。そういえば、暗殺者さんがヘンリーを探していたぞ」
「僕を?」
ちょうど良い。
僕も暗殺者さんに聞きたい事があった。
* * *
屋敷内をウロウロしていると、暗殺者さんの姿を見つけた。ここは……魔導書が納められている書斎。こんなところにいたのか。
「何しているの、暗殺者さん」
「やあ、ヘンリー」
「やあ、じゃなくてさ」
「魔導書を読んでいたんだ」
「いや、それって魔法使いとか賢者が読むものだろ? 暗殺者さんじゃ、分からないんじゃ」
「そうでもない。例えばこの風属性スキル」
手に電気を帯びる暗殺者さん。って、嘘でしょ!? あの職業は普通、魔法スキルが使えないはず。
「それって、魔法使いの『ライトニングボルト』?」
「そう。下級魔法だけどスキルレベルが高ければ結構強い」
【ライトニングボルト】【Lv.4】
【詳細】
風属性攻撃を与える。
Lv.1:魔法攻撃力 100%
Lv.2:魔法攻撃力 200%
Lv.3:魔法攻撃力 300%
Lv.4:魔法攻撃力 400%
「魔導書を読んでそんな簡単に覚えられるものだっけ。僕の知識によれば、職業を選んだ瞬間からスキルツリーは決まっているって聞いたけど」
「その通り。でも、常に例外は存在する」
「例外――か」
僕の知らない世界があるのかもしれない。ギルド職員といっても三年ほどのキャリア。冒険者としては数日も経過していないヒヨッコ。
世界は広いんだ。
何があってもおかしくはない。
「それより、私に用があるんでしょ」
「あ、ああ……ランカスター帝国へ入りたいんだ」
「え? 普通に入ればいいのでは?」
僕は、追放された過去の事情を離した。
「――というわけで、現状は帝国には戻れない状態なんだ」
「そんな海よりも深い事情があったとは。ヨークちゃんとは、その時に出会ったのね」
「ああ、暗殺者さんなら何か知っているかなって思ってさ」
ジッと僕を見つめる暗殺者さん。なんかそうジロジロ見られると居心地が悪い。というか、なんでそんな僕を見つめるの!?
視線にドキドキしていると、彼女は笑った。
「分かった。その代わり、報酬が欲しい」
「金貨か」
「うん。成功報酬としてサマセット金貨100枚が欲しい」
「分かった。金なら任せくれ」
「交渉成立だね」
握手を交わし、ここに契約は完了した。
「そういえば、暗殺者さんって名前は?」
「名前なんて忘れたさ。暗殺者でいい」
「えっ!? 忘れたって……」
そんな事あるの?
――とにかく“アサシンさん”でいっか。
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