金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中

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SSS級ブラッドアックスの秘密

 金貨の塊は、金色の閃光を輝かせながらオーク族の男・ジャスパーへ命中した。


「んなッ、なんだこの光――ぶあああああああああああ!!!」


 アサシンさんは、その隙に避難して物陰に隠れていた。ナイス、判断。

 オークはとうとう遠くへ吹き飛び、空へ飛翔していく。さすが金貨1000枚の威力。伊達じゃない。


「吹き飛べえええええッ!!」
「く、くそおおおおおおおおおおおおおおおお……!!」


 ドンッと花火のように打ち上がり、どこかへ吹き飛んでいった。おぉ、山の向こうまで吹き飛んだ。

 ふぅ……と、汗をぬぐっているとヨークが飛びついてきた。


「ヘンリーさぁん!!」
「ヨーク。無事だったか」
「はい、お陰様でっ」


 ヨークの体を抱きしめていると、アサシンさんも駆け寄ってきた。どうやら、大きなケガはないようだ。


「あ、あの光はいったい……ヘンリーがやったの?」
「そそ。僕には金貨を操るような能力があるんだ」

「金貨を!?」

「うん。今のはスキルの『金貨投げ』なんだ。固定ダメージを与えられるんだけどね」
「な、なんと……そんな凄いスキルを持っていたとは」


 目を白黒させるアサシンさん。
 さて、ここに留まるのはまずいな。住人が何事かと集まってきていた。とにかく、スコットを出て行って、ランカスター帝国を目指すか。


 * * * 


 中立地帯スコットを離れ、草原フィールドを歩いていく。穏やかな風が吹き抜け、心地よい。

 この道を真っ直ぐいけば、半日でランカスター帝国だ。だけど、時間的に到着時点で夜になるだろうな。

 しばらくは作戦とか考えながら向かうしかないだろう。


「それにしても、弓男が殺され……オークの暗殺者が出てくるとはね。アサシンさん、あのオークはいったい何なんだ?」

「あれは、暗殺者を消す為の暗殺者。しかし、オーク族だったとは……あんな巨漢は初めて見た。恐らく“王の候補”だろう」


 王の候補。
 そんな聞きなれない言葉に僕もヨークも首を傾げた。

「あの、アサシンさん。その王の候補とは?」
「うん。オーク族には、王を決める血の戦いがあるようだ。その勝者には、このSSS級ブラッドアックスを王の証……つまり『ブラックオークロード』として示すことができるんだ」

 ギルド職員時代に聞いた事がある。
 EXボスモンスターに『ブラックオークロード』の存在が確認されていた。この地域のどこかに生息していると噂が流れていた。

 しかし、オークがあまりに強くて上級冒険者でも倒すのが難しいとされていた。

 そうか、ガヘリスはアサシンさんがブラッドアックスを持っていたから、その情報を流して交渉したんだろうな。

「一応聞いていいかな、アサシンさん」
「ん、なんだ」
「そのSSS級ブラッドアックスはどうやって入手したんだ?」

「……それを聞くか。いや、いいだろう、ヘンリーとヨークちゃんになら話してやる」

「ああ、頼む」


 一呼吸入れ、アサシンさんは語り始めた。


「私は、種族は人間だけど……その昔、オークに拾われた。で、長いこと大切にされて、ここまで育ててもらった」

「オークに!?」

「普通、食べられてもおかしくないんだけどね。幸い、私の両親は赤ん坊だった私に情が移ってしまったようでね。運が良かったんだ」

 どうやら、アサシンさんは子供の頃に親に捨てられ、通りかかったオークに拾われたようだ。驚くべき事に丁重な扱いだったようだけど、凄いな。
 そんな話は聞いたことがない。

 オークにも様々な種類がいるんだと、僕は関心を抱いた。

「そうだったんですね。アサシンさんは、どうして暗殺者を?」

 ヨークが聞いてくれた。

「良い質問だ。……まあ、なんだかんだあって、私の親だったオークが殺されてしまってね。まさにさっきの赤いオークのヤツさ。
 あれは『レッドオーク』といって、常に狂暴……噂によれば、生まれ持ってバーサーク状態だって聞いてる。それで、私は親から受け継いだブラッドアックスを使って、レッドオークの情報を収集していたのさ」

 それで暗殺稼業をしていたようだ。
 生活と情報の為に。

 なるほどな、両親の仇を取る為だったんだ。このアサシンさんにも大変な人生があったんだな。

「なら、一緒にレッドオークの住処を探すよ」
「……い、いいのか? ガヘリスも倒さなきゃいけないのに」
「いいんだ。仲間が困っている以上、放っておけないだろ」

「な、仲間……。そう思ってくれるのか、こんな血にまみれた私を」
「僕もヨークも似たような境遇さ。だから気持ちは分かる」

 ヨークが僕の手を握る。

「はい。だから、わたくしはヘンリーさんについていくんです。アサシンさんも一緒に参りましょう」

 今度は、ヨークが手を差し伸べる。
 アサシンさんは少し戸惑い、頬を赤くする。けれど、諦め半分のような顔をして、ヨークの手を握った。

「ヨークちゃんには敵わないや。よろしく」

 決まったところで、どんどん進んで行きますか……!
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