金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗

文字の大きさ
57 / 62

妖精王・ヘイスティングス

しおりを挟む
 ヨーク大聖堂へひとり・・・で向かった。
 ヨーク達に気づかれないよう、細心の注意を払う。……よし、つけられてはいない。

 金貨100枚を支払って扉を開ける。

 そうか、これって毎回必要なんだ。けど、僕はいくつでも金貨を出せるし関係ない。通路を進み――椅子に座り、本を読むプランタに話しかけた。


「あの……プランタさん」
「おや。ヘンリーさんではないですか、わざわざひとりで――大金を支払って戻ってくるとは……何か、あったのですか」

 少し不思議そうに首を傾げるプランタ。その通り、僕はヨークについて知りたかった。謎多き少女の情報を。


「ヨークのことを知りたい」
「ヨーク様ですか」

「ああ、教えてくれ。彼女は何者なんだ」

「金貨100枚を払ってこの部屋に入ったのです。追い返すわけにはいきませんね」


 本を閉じ、椅子から立ち上がるプランタは僕の目の前に寄ってくる。


「ヨークは何なんだ。僕にどうして、こんな金貨の力をくれたんだ」
「彼女は、この国の象徴といいますか、聖女です。ですが、親もいませんし、孤独でした。そこで、私が幼い彼女を引き取ることに」

「え、まってくれ。プランタって何歳なんだ!?」

「……ヘンリーさん。女性に年齢を聞くとは失礼ですよ」

 じとっとした目で見られ、僕は慌てる。

「ご、ごめんなさい」
「冗談です。実は、私は延命処置を受けているので通常の人間の三倍生きられるんです」
「え?」

「不老不死にちょっと近いかもしれません。外見こそ変わりにくいですが、でも歳は取っていますし、いつか死にます。まあ、年齢で言えば150歳ってところですね」

「ひゃ、ひゃくごちゅう!?」


 うそー……全然そんな風に見えない。ヨボヨボではないし、ぴちぴちの少女。十代と言われても納得するほど若いぞ。

 延命処置っていったい、なんだろうな。


「――とにかく。私はかなり昔から、ヨーク様と知り合い、拾った。そして、不思議な力を持っていることに気づいた」

「聖女の力か」

「はい、それが『金貨の力』ですね。もともと金貨は、千年にも及ぶエルフとダークエルフの闘争がきっかけで作られたものです。その力は、妖精王・ヘイスティングス様が……つまり全ては妖精王が与えたものです」

「そいつは、いったい何者なんだ」

「知りたいですか」
「もちろん!」

「実は……」
「実は……?」

「私です」


「…………え?」


「私なんです。妖精王・ヘイスティングス」
「はあああああああああああ!?」


 驚いた。
 まさか目の前に妖精王・ヘイスティングスがいるとは!!


「驚かせて申し訳ないです。その名は、百年前に広がった名前なんです。それが伝説となって受け継がれてしまったようで。私は本来『大賢者』なんです。それが何故か妖精王だとか噂が広まってしまい……収集がつかなくなってしまったんです」


 それが真相だったのかいっ!
 そうか、延命処置とかいうのも『大賢者』の御業ってところかな。納得。ヨークがヘンに凄い力を持つ理由も、このプランタのおかげってわけか。


 ようやく全てが繋がった。


 このプランタこそが“答え”だったんだ。


「そうだったんだ。僕は、本当に妖精王なんてものがいるかと思っていたよ」
「ヨークは、神託と言っていませんでしたか?」

「ああ、言ってた!」

「それは、枢機卿である私に可能な能力なんです。私がヨーク様に対して送ったものです」

「でもどうして?」
「それは、ヘンリーさん、あなたの未来が視えたからです」

「未来?」

「あなたが『英雄王』になる未来です。この世界を救うんですよ」
「それ、本当だったのか」
「はい、間違いありません。だから、私はヨーク様に神託として情報を与え、ヘンリー様に『金貨増殖』の力を授けたのですよ」

「でもバグってたよ!?」

「それは想定外でした。大賢者の力は、たまに失敗するとそういう事もありますから」

「えー! 失敗だったのー!?」

「結果的には大成功ではありませんか!」


 プランタは笑顔で答える。
 それでいいのかよっ!
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

「女のくせに強すぎて可愛げがない」と言われ婚約破棄された追放聖女は薬師にジョブチェンジします

紅城えりす☆VTuber
恋愛
*毎日投稿・完結保証・ハッピーエンド  どこにでも居る普通の令嬢レージュ。  冷気を放つ魔法を使えば、部屋一帯がや雪山に。  風魔法を使えば、山が吹っ飛び。  水魔法を使えば大洪水。  レージュの正体は無尽蔵の魔力を持つ、チート令嬢であり、力の強さゆえに聖女となったのだ。  聖女として国のために魔力を捧げてきたレージュ。しかし、義妹イゼルマの策略により、国からは追放され、婚約者からは「お前みたいな可愛げがないやつと結婚するつもりはない」と婚約者破棄されてしまう。  一人で泥道を歩くレージュの前に一人の男が現れた。 「その命。要らないなら俺にくれないか?」  彼はダーレン。理不尽な理由で魔界から追放された皇子であった。  もうこれ以上、どんな苦難が訪れようとも私はめげない!  ダーレンの助けもあって、自信を取り戻したレージュは、聖女としての最強魔力を駆使しながら薬師としてのセカンドライフを始める。  レージュの噂は隣国までも伝わり、評判はうなぎ登り。  一方、レージュを追放した帝国は……。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...