1 / 7
婚約破棄
「ファウスティナ、君は聖女の力で“黄金”を作れるんだって?」
父・ギャレットが連れてきた男性は、悪名高き伯爵エルズワース。
わたしに興味津々で、勝手に『婚約』まで進められていた。
お父様ってば……勝手なことを。
「は、はい。ですが、黄金を作りすぎるとその価値も下がってしまいます。それに、魔力には限りがありますから」
価値のことは本当だった。
けれど、魔力の限りがあることは嘘だった。
わたしには膨大な魔力があった。
子爵の娘に生まれた、わたしは聖女としての力も宿していた。その力は“黄金”の生成だった。
池ほどの魔力を消費する代わりに、本物の金が作れた。
この力のおかげで没落貴族になりかけていた家を再建。
お父様は、わたしの黄金を皇帝陛下に献上することにより、辺境伯の地位まで上り詰めたのだ。
けれど、帝国が定める成人年齢・十八歳にもなれば、わたしは黄金がいかに貴重なものか理解できた。
金は人を幸せにするものだけど、不幸にもする。
作り過ぎればバランスの崩壊を招き、やがて戦争さえ引き起こす。それはある貴金属店を営む男性が口にしていたという警鐘でもあった。
「素晴らしい。素晴らしいよ、ファウスティナ! ぜひ、俺と結婚してくれ!」
「…………」
正直、わたしは嫌だった。
伯爵の評判は、悪い噂ばかり。
民から食べ物だけでなく、生活用品、宝石類、貴金属類を巻き上げてるって聞いた。そんな悪人と結婚だなんて……死んでも嫌。
「どうした、我が娘・ファウスティナ。嬉しさのあまり、言葉を失ったかな」
「お父様……そうではありません。わたしは、空いた口が塞がらないだけです」
「なんだと! 伯爵に失礼だろう。お詫びを申し上げるのだ」
「お断りよ! それに、伯爵様。一方的な婚約は不信感しか抱きません。望まぬ結婚なんて……人生の汚点にしかならない」
ハッキリ申し上げると、伯爵は顔を真っ赤にして憤慨した。
「ファウスティナ、貴様……!」
「あら、これは大変な失礼を。でも、この程度で動揺される器とは……どのみち近い将来破綻していたことでしょう。婚約破棄してくだいませ」
わたしは背を向けた。
お父様の静止を振り切り、そのままお屋敷を飛び出した。
――アテもなく帝国の街中を彷徨う。
なにも持たずに出たから、お金もなかった。
けれど大丈夫。
わたしには“黄金”を生成する奇跡の魔法がある。
適度に売ればお金になるし、生活には困らない。
だから、まずはどこかで金を売って……。
「きゃっ」
変なところで躓いて、わたしは倒れた。
……痛っ。
足を挫いてしまったみたい。
足を擦っていると、目の前にあったお店の中から人が現れた。……青空のような爽やかな顔をした男性だった。
とても整った容姿をしていて、けれど、どこか儚げ。
背が高く、金の髪が風に靡いていた。
「君、大丈夫かい」
「えっと……その」
「足を挫いたのかな。どれ、エル・ドラードで診てあげよう」
「エル・ドラード?」
「僕のお店さ。宝石や貴金属を扱っていてね。ともかく、中へ」
いきなりお姫様抱っこされてしまい、わたしは一瞬で顔が熱くなった。
見知らぬ男性にこんな風に運ばれるだなんて……。
でも、すごく嬉しかった。
父・ギャレットが連れてきた男性は、悪名高き伯爵エルズワース。
わたしに興味津々で、勝手に『婚約』まで進められていた。
お父様ってば……勝手なことを。
「は、はい。ですが、黄金を作りすぎるとその価値も下がってしまいます。それに、魔力には限りがありますから」
価値のことは本当だった。
けれど、魔力の限りがあることは嘘だった。
わたしには膨大な魔力があった。
子爵の娘に生まれた、わたしは聖女としての力も宿していた。その力は“黄金”の生成だった。
池ほどの魔力を消費する代わりに、本物の金が作れた。
この力のおかげで没落貴族になりかけていた家を再建。
お父様は、わたしの黄金を皇帝陛下に献上することにより、辺境伯の地位まで上り詰めたのだ。
けれど、帝国が定める成人年齢・十八歳にもなれば、わたしは黄金がいかに貴重なものか理解できた。
金は人を幸せにするものだけど、不幸にもする。
作り過ぎればバランスの崩壊を招き、やがて戦争さえ引き起こす。それはある貴金属店を営む男性が口にしていたという警鐘でもあった。
「素晴らしい。素晴らしいよ、ファウスティナ! ぜひ、俺と結婚してくれ!」
「…………」
正直、わたしは嫌だった。
伯爵の評判は、悪い噂ばかり。
民から食べ物だけでなく、生活用品、宝石類、貴金属類を巻き上げてるって聞いた。そんな悪人と結婚だなんて……死んでも嫌。
「どうした、我が娘・ファウスティナ。嬉しさのあまり、言葉を失ったかな」
「お父様……そうではありません。わたしは、空いた口が塞がらないだけです」
「なんだと! 伯爵に失礼だろう。お詫びを申し上げるのだ」
「お断りよ! それに、伯爵様。一方的な婚約は不信感しか抱きません。望まぬ結婚なんて……人生の汚点にしかならない」
ハッキリ申し上げると、伯爵は顔を真っ赤にして憤慨した。
「ファウスティナ、貴様……!」
「あら、これは大変な失礼を。でも、この程度で動揺される器とは……どのみち近い将来破綻していたことでしょう。婚約破棄してくだいませ」
わたしは背を向けた。
お父様の静止を振り切り、そのままお屋敷を飛び出した。
――アテもなく帝国の街中を彷徨う。
なにも持たずに出たから、お金もなかった。
けれど大丈夫。
わたしには“黄金”を生成する奇跡の魔法がある。
適度に売ればお金になるし、生活には困らない。
だから、まずはどこかで金を売って……。
「きゃっ」
変なところで躓いて、わたしは倒れた。
……痛っ。
足を挫いてしまったみたい。
足を擦っていると、目の前にあったお店の中から人が現れた。……青空のような爽やかな顔をした男性だった。
とても整った容姿をしていて、けれど、どこか儚げ。
背が高く、金の髪が風に靡いていた。
「君、大丈夫かい」
「えっと……その」
「足を挫いたのかな。どれ、エル・ドラードで診てあげよう」
「エル・ドラード?」
「僕のお店さ。宝石や貴金属を扱っていてね。ともかく、中へ」
いきなりお姫様抱っこされてしまい、わたしは一瞬で顔が熱くなった。
見知らぬ男性にこんな風に運ばれるだなんて……。
でも、すごく嬉しかった。
あなたにおすすめの小説
気に入った人を片っ端から『私のモノ』と宣言する料理人を雇ってしまった
ぜんだ 夕里
恋愛
辺境の領主フィリップは慢性的な人手不足に悩んでいた。料理長が腰を抜かして引退し、塩水スープしか食べられない地獄に限界を迎えていたある日、「私、料理ができます!」と一人の少女が現れる。それは、気に入ったものは全て「私のモノ!」と宣言する困った食いしん坊エリーだった。
離縁され隣国の王太子と海釣りをしていたら旦那様が泣きついてきた。私は別の隣国の王太子と再婚します。
唯崎りいち
恋愛
「真実の愛を見つけた」と言って、旦那様に一方的に離縁された侯爵令嬢。だが彼女の正体は、大陸最大級の鉄鋼財閥の後継であり、莫大な資産と魔力を持つ規格外の存在だった。
離縁成立から数時間後、彼女はすでに隣国の王太子と海の上でカジキ釣りを楽しんでいた。
一方、元旦那は後になって妻の正体と家の破産寸前の現実を知り、必死に追いすがるが——時すでに遅し。
「旦那様? もう釣りの邪魔はしないでくださいね」
恋愛より釣り、結婚より自由。
隣国王太子たちを巻き込みながら、自由奔放な令嬢の人生は加速していく。
完結 女性に興味が無い侯爵様、私は自由に生きます
ヴァンドール
恋愛
私は絵を描いて暮らせるならそれだけで幸せ!
そんな私に好都合な相手が。
女性に興味が無く仕事一筋で冷徹と噂の侯爵様との縁談が。 ただ面倒くさい従妹という令嬢がもれなく付いてきました。
すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜
まりー
恋愛
ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。
でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。
後宮入りしたら、冷酷な幼なじみ皇太子に囲われて逃げられません
由香
恋愛
幼い頃、ただ一人だけ優しかった少年。
けれど彼は――皇太子になっていた。
家の都合で後宮に入れられた私は、二度と会うはずのなかった幼なじみと再会する。
冷酷無慈悲と噂される彼は、なぜか私にだけ異常に甘くて――
「他の男に触れるな。……昔から、お前は俺のものだろ」
囲われるように守られ、逃げ場を失う距離感。
けれど後宮は甘さだけじゃ生き残れない。
陰謀、嫉妬、命を狙う妃たち――
それでも彼は、私の手を離さない。
これは、後宮で“唯一の執着”に愛された少女の物語。
愛を知った私は、もう二度と跪きません
阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。
家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。
「呪われた男にでも喰われてこい」
そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。
彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。
その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。
「エカテリーナ様、どうかお助けを!」
かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。
好きな人が嬢を身請けするのが辛くて逃げたら捕まりました~黒服の私は執着騎士に囲われる~
こじまき
恋愛
騎士が集う高級酒場「夜香楼」で女性黒服として働くソフィアは、客である寡黙な騎士ゼインに恋していた。けれど彼が指名するのはいつも人気花嬢イサナで、身請けも近いと予想されていた。
ソフィアは、叶わない想いにと嫉妬に耐えきれず、衝動的に店を去る。
もう二度と会うことはないはずだったのに、身請けした嬢と幸せに暮らしているはずの彼が追ってきて――
「お前への愛は焼き印のように刻まれていて、もう消えない」
――失恋したと思い込んで逃げた黒服が、執着系騎士様に捕まって囲われる話。
※小説家になろうにも投稿しています