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【番外編】 いつも、ありがとね side:天音
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無人島生活が始まって何日か経った。
スマホは電池節約の為に起動できないから、時間の感覚が狂う。
いつになったら救助が来るんだろう。
あんな事故が起きたのに、船ひとつ見かけないなんて……。
救いは頼りになる同級生『早坂 啓』くんがいること。北上さんのサバイバル術のおかげでお腹を空かさずに済んでいることだ。
二人とも本当に凄い。
わたしなんて……なんの役にも立てない。
「どうした、天音」
「……わたしにも出来る仕事ないかな。少しでも役に立ちたいの」
「じゃあ、薪でも作ってみるか? 焚火がないと火を起こせないし、暖も取れない。動物からも身を守れないんだぞ」
「分かった。やってみる。どうすればいいの?」
早坂くんはナイフを取り出した。
あれは北上さんの所持品だ。
今は借りているみたいだった。
「いいか、天音。太い枝を持つ……で、ナイフでこう皮を剥いていく要領で刻んでいくんだ。するとこれが『フェザースティック』になるんだ」
「あ~、前に言っていたヤツね」
「そ。着火剤になるんだよ。それに薪としても優秀なんだぞ。燃焼効率いいし」
「さすが早坂くん。うん、がんばって作ってみる」
わたしは指示された通りに、ナイフを手にして……太い枝を削っていく。
『ピッ――、ブンッ、ピッ……』
うぅ、全然削れない。
それどころか早坂くんは青ざめて、わたしの手を止めさせた。
「あ、危ないぞ、天音さん! そんな荒削りだと怪我するって。いいか、こうゆっくりと力を入れていくんだ」
「…………うぅ、不器用でごめん」
「仕方ないな。天音、その……手に触れてよければ力加減を教えられるが」
照れくさそうにする早坂くんが、そんな提案をした。瞬間、わたしは心臓の鼓動が早くなった……。男の子に触れられるなんて……なくはない。
そういえば、アイドル時代は握手会くらいはあった。
でも、でも、でも……好きな人から、そんな……心の準備がっ。
「…………っ」
「ど、どうした天音。顔が真っ赤だぞ!?」
「う、うるさいなっ……誰のせいだと思ってるのぉ……」
「嫌ならやめておく」
「嫌じゃない。触れて教えて」
「あ、ああ……」
早坂くんの大きな手がわたしの手に触れた。なんて、たくましくて温かいのだろう。握手とは違う、優しい感触。
そうやってナイフの力加減を教えてもらった。
「こうかな」
「うん、そんな感じ。無駄に力を入れると危ないし、疲れるから」
「そうなんだ。その……早坂くん、ありがとね」
「いいってことさ。俺も嬉しいし」
「それってどういう意味?」
「……っ」
今度は早坂くんが顔を真っ赤にした。分かりやすいんだから。でも、そんな風に言ってくれて、わたしも嬉しかった。こうして二人きりで過ごせる時間は貴重だし、なによりも、わたし自身が彼を気に入っている。
今までわたしを全力で守ってくれる人はいなかった。
自分の身を守れるのは自分だけだった。
それが今はこうして寄り添って貰えて、ちゃんと話も聞いてくれるし、守ってくれる。そんな早坂くんの存在が心の拠り所になりつつあった。
だから、わたしは彼のことが――。
「ねえ、早坂くん」
「お、おう。なんだ?」
「ちょっと、そこに立ってくれる?」
「ん~?」
首を傾げる早坂くんは、渋々ながら指示に従ってくれた。わたしは、そのまま彼に抱きついて驚かせた。
「いつも、ありがとね」
「――――!?!?!?」
早坂くんはビックリして硬直していた。
次第に煙を上げ、わたしから離れた。あ……もう少し抱き合っていても良かったのにな~。
「いつも守ってもらってばかりだもん。お礼ね」
「…………天音、大胆すぎるだろう。アイドルなのに」
「握手をすっ飛ばして抱きついてみました~」
「飛躍しすぎだが……ありがとう。めっちゃ嬉しかった」
「でしょ。またしようね」
「……ほどほどにな」
無人島生活は過酷で大変だけど、彼と出会えたことは奇跡だ。なんとしてでも振り向かせたいっ。絶対にわたしを好きになってもらいたい。……がんばろう。
スマホは電池節約の為に起動できないから、時間の感覚が狂う。
いつになったら救助が来るんだろう。
あんな事故が起きたのに、船ひとつ見かけないなんて……。
救いは頼りになる同級生『早坂 啓』くんがいること。北上さんのサバイバル術のおかげでお腹を空かさずに済んでいることだ。
二人とも本当に凄い。
わたしなんて……なんの役にも立てない。
「どうした、天音」
「……わたしにも出来る仕事ないかな。少しでも役に立ちたいの」
「じゃあ、薪でも作ってみるか? 焚火がないと火を起こせないし、暖も取れない。動物からも身を守れないんだぞ」
「分かった。やってみる。どうすればいいの?」
早坂くんはナイフを取り出した。
あれは北上さんの所持品だ。
今は借りているみたいだった。
「いいか、天音。太い枝を持つ……で、ナイフでこう皮を剥いていく要領で刻んでいくんだ。するとこれが『フェザースティック』になるんだ」
「あ~、前に言っていたヤツね」
「そ。着火剤になるんだよ。それに薪としても優秀なんだぞ。燃焼効率いいし」
「さすが早坂くん。うん、がんばって作ってみる」
わたしは指示された通りに、ナイフを手にして……太い枝を削っていく。
『ピッ――、ブンッ、ピッ……』
うぅ、全然削れない。
それどころか早坂くんは青ざめて、わたしの手を止めさせた。
「あ、危ないぞ、天音さん! そんな荒削りだと怪我するって。いいか、こうゆっくりと力を入れていくんだ」
「…………うぅ、不器用でごめん」
「仕方ないな。天音、その……手に触れてよければ力加減を教えられるが」
照れくさそうにする早坂くんが、そんな提案をした。瞬間、わたしは心臓の鼓動が早くなった……。男の子に触れられるなんて……なくはない。
そういえば、アイドル時代は握手会くらいはあった。
でも、でも、でも……好きな人から、そんな……心の準備がっ。
「…………っ」
「ど、どうした天音。顔が真っ赤だぞ!?」
「う、うるさいなっ……誰のせいだと思ってるのぉ……」
「嫌ならやめておく」
「嫌じゃない。触れて教えて」
「あ、ああ……」
早坂くんの大きな手がわたしの手に触れた。なんて、たくましくて温かいのだろう。握手とは違う、優しい感触。
そうやってナイフの力加減を教えてもらった。
「こうかな」
「うん、そんな感じ。無駄に力を入れると危ないし、疲れるから」
「そうなんだ。その……早坂くん、ありがとね」
「いいってことさ。俺も嬉しいし」
「それってどういう意味?」
「……っ」
今度は早坂くんが顔を真っ赤にした。分かりやすいんだから。でも、そんな風に言ってくれて、わたしも嬉しかった。こうして二人きりで過ごせる時間は貴重だし、なによりも、わたし自身が彼を気に入っている。
今までわたしを全力で守ってくれる人はいなかった。
自分の身を守れるのは自分だけだった。
それが今はこうして寄り添って貰えて、ちゃんと話も聞いてくれるし、守ってくれる。そんな早坂くんの存在が心の拠り所になりつつあった。
だから、わたしは彼のことが――。
「ねえ、早坂くん」
「お、おう。なんだ?」
「ちょっと、そこに立ってくれる?」
「ん~?」
首を傾げる早坂くんは、渋々ながら指示に従ってくれた。わたしは、そのまま彼に抱きついて驚かせた。
「いつも、ありがとね」
「――――!?!?!?」
早坂くんはビックリして硬直していた。
次第に煙を上げ、わたしから離れた。あ……もう少し抱き合っていても良かったのにな~。
「いつも守ってもらってばかりだもん。お礼ね」
「…………天音、大胆すぎるだろう。アイドルなのに」
「握手をすっ飛ばして抱きついてみました~」
「飛躍しすぎだが……ありがとう。めっちゃ嬉しかった」
「でしょ。またしようね」
「……ほどほどにな」
無人島生活は過酷で大変だけど、彼と出会えたことは奇跡だ。なんとしてでも振り向かせたいっ。絶対にわたしを好きになってもらいたい。……がんばろう。
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