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第38話 帰るべき場所
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混沌の気配が消えた。
遥か彼方へ飛び立っていったのか、あるいは消滅したのか――定かではないけれど、少なくとも、撃退には成功した。
「……防衛成功だ。運命を変えたんだ!」
「うおおおおおお!!」「国は満身創痍だが、生き残った者の方が多い!」「国はまた建て直せばいいさ!」「今は生きていることに感謝だ!」「ユメ様のおかげだろ!」「俺、絶対死ぬかと思ってたよ……」「パラドックス万歳!」「我が国は無敵だ!」
皆、勝利に喜び、酔いしれた。
……これで、きっと、滅びは回避されたはずだ。みんなで作り上げたこの国を、あんな残酷な運命で終わらせていいはずがないのだから。
「ユメ」
ぱふっと誰かが抱きついてきた。
フォースだ。
「助かったよ、お前の力がなかったら俺は……俺たちは全滅だった。今の国があるのもフォースのおかげだ。ありがとう」
ぎゅっと優しく抱きしめて、俺は心より感謝した。
彼女がいたからこそ、俺はここまで来れた。いや、ゼファもネーブルも。誰一人でも欠けていたら、俺は今頃闇に押しつぶされていただろう。そして、覇王が言うように『闇の王』に君臨し、世界を闇と混沌に陥れていたかもしれない。
そんな世界はいらない。
俺が欲しいものは世界ではなく、帰るべき場所。
国だ。
そして、家と暖かく迎えてくれる仲間。
それだけあれば十分だったのだ。
「さあ、帰りましょう」
「そうだな、ネーブル。家へ帰ろう」
フォースを肩車し、ネーブルと手を繋いだ。それから、ゼファとも。
「ユメ様。不幸中の幸いと申しますか、我が家は無事です」
「マジか。でも、みんなの家は……」
「ご安心を。ほら、見てください」
ふと振り返ると、強大なソウルフォースが国中の瓦礫の山を持ち上げていた。それらは元へ帰るようにして逆再生のように動き回り、自動修復を始めた。……すげぇ。こんな奇跡をも超える奇跡を起こせるのは、世界でただひとりだけだ。
「師匠……ありがとう」
「なぁに、愛弟子の悲しい顔が見たくないだけじゃ。だから、今回だけは特別大サービスってところじゃな」
そう会話の間にも瓦礫はどんどん本来の姿を取り戻し、建物に戻っていった。通常、ここまで戻すには大量の資材が必要だし、お金もかなり掛かる。だけど、こりゃやべぇ……無料で戻ってしまった。
これ、師匠いれば壊れても元に戻せるな……でも、今回は特別大サービスらしいし、毎回やってくれるわけないよなー。
ふむ、ソウルフォースもう少し極めてみるのもアリだろう。
◆
今晩の料理は、ネーブルが担当。
失礼ながら大雑把に見えるのだけど、意外や家庭的。というか、思った以上にしっかり者。下手をすればゼファよりも家事好きかもしれない。
そんなこんなで、美味しいパーフェクト和風定食(母さんから教わったらしい)をいただき、腹を満たした。
「ネーブル、ごちそうさま。最高に美味かったよ。こんなに満足したのは久しぶりかもしれない。また作ってくれ」
「……そ、そんな褒められると照れちゃうわね。あはは……」
顔が真っ赤だ。
嬉しさのあまり、ネーブルは顔が綻んでいた。
「ネーブルの料理は、あたしも好き。またお願い」
「わ、分かったわ。そうべた褒めされると本当に照れちゃうわ」
味五月蠅いフォースも認める美味ということだ。
だが、ゼファはちょっと悔しがっていた。
「ユメ様の舌を満足させるとは……やりますね、ネーブル。わたくしも負けていられません。今度、お母さまに和風定食の作り方を教えて戴かなければ」
ふんすと対抗意識を燃やす。
ゼファも料理好きだもんなぁ。
「……さて、じゃ、俺は風呂に――――」
ひとり立ち上がると、
「いく」
「わたしも!」
「わたくしもです」
……ですよねぇ!!!
遥か彼方へ飛び立っていったのか、あるいは消滅したのか――定かではないけれど、少なくとも、撃退には成功した。
「……防衛成功だ。運命を変えたんだ!」
「うおおおおおお!!」「国は満身創痍だが、生き残った者の方が多い!」「国はまた建て直せばいいさ!」「今は生きていることに感謝だ!」「ユメ様のおかげだろ!」「俺、絶対死ぬかと思ってたよ……」「パラドックス万歳!」「我が国は無敵だ!」
皆、勝利に喜び、酔いしれた。
……これで、きっと、滅びは回避されたはずだ。みんなで作り上げたこの国を、あんな残酷な運命で終わらせていいはずがないのだから。
「ユメ」
ぱふっと誰かが抱きついてきた。
フォースだ。
「助かったよ、お前の力がなかったら俺は……俺たちは全滅だった。今の国があるのもフォースのおかげだ。ありがとう」
ぎゅっと優しく抱きしめて、俺は心より感謝した。
彼女がいたからこそ、俺はここまで来れた。いや、ゼファもネーブルも。誰一人でも欠けていたら、俺は今頃闇に押しつぶされていただろう。そして、覇王が言うように『闇の王』に君臨し、世界を闇と混沌に陥れていたかもしれない。
そんな世界はいらない。
俺が欲しいものは世界ではなく、帰るべき場所。
国だ。
そして、家と暖かく迎えてくれる仲間。
それだけあれば十分だったのだ。
「さあ、帰りましょう」
「そうだな、ネーブル。家へ帰ろう」
フォースを肩車し、ネーブルと手を繋いだ。それから、ゼファとも。
「ユメ様。不幸中の幸いと申しますか、我が家は無事です」
「マジか。でも、みんなの家は……」
「ご安心を。ほら、見てください」
ふと振り返ると、強大なソウルフォースが国中の瓦礫の山を持ち上げていた。それらは元へ帰るようにして逆再生のように動き回り、自動修復を始めた。……すげぇ。こんな奇跡をも超える奇跡を起こせるのは、世界でただひとりだけだ。
「師匠……ありがとう」
「なぁに、愛弟子の悲しい顔が見たくないだけじゃ。だから、今回だけは特別大サービスってところじゃな」
そう会話の間にも瓦礫はどんどん本来の姿を取り戻し、建物に戻っていった。通常、ここまで戻すには大量の資材が必要だし、お金もかなり掛かる。だけど、こりゃやべぇ……無料で戻ってしまった。
これ、師匠いれば壊れても元に戻せるな……でも、今回は特別大サービスらしいし、毎回やってくれるわけないよなー。
ふむ、ソウルフォースもう少し極めてみるのもアリだろう。
◆
今晩の料理は、ネーブルが担当。
失礼ながら大雑把に見えるのだけど、意外や家庭的。というか、思った以上にしっかり者。下手をすればゼファよりも家事好きかもしれない。
そんなこんなで、美味しいパーフェクト和風定食(母さんから教わったらしい)をいただき、腹を満たした。
「ネーブル、ごちそうさま。最高に美味かったよ。こんなに満足したのは久しぶりかもしれない。また作ってくれ」
「……そ、そんな褒められると照れちゃうわね。あはは……」
顔が真っ赤だ。
嬉しさのあまり、ネーブルは顔が綻んでいた。
「ネーブルの料理は、あたしも好き。またお願い」
「わ、分かったわ。そうべた褒めされると本当に照れちゃうわ」
味五月蠅いフォースも認める美味ということだ。
だが、ゼファはちょっと悔しがっていた。
「ユメ様の舌を満足させるとは……やりますね、ネーブル。わたくしも負けていられません。今度、お母さまに和風定食の作り方を教えて戴かなければ」
ふんすと対抗意識を燃やす。
ゼファも料理好きだもんなぁ。
「……さて、じゃ、俺は風呂に――――」
ひとり立ち上がると、
「いく」
「わたしも!」
「わたくしもです」
……ですよねぇ!!!
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