41 / 177
第41話 戻れと言われても
しおりを挟む
風の帝王から『戻ってこい』の不幸の手紙は続いた。
でもそんなことはどうでもいい。裏切ったのは帝王だ。だから無視だ。
それよりも、俺の国は闇属性が付与された壁――『ダークウォール』によって囲まれ、守られている。しかし、それには耐久値が存在し、モンスターやクリーチャーから殴られ、ダメージを受ければ当然、いつしかは壊れてしまう完璧とはいえない盾だった。
ので、日々強化や修復をする必要がある。
これが大量の材料を消費し、金も湯水のごとく消えていった。このままではマズイ。これ以上、同盟国である光の天国に迷惑は掛けられない。
「……となると、う~~~ん」
「ユメ、悩んでる?」
つぶらな深緑の瞳でこちらを見るフォースは、俺の膝の上を満喫していた。体を揺らし、機嫌が良さそうだ。……最近、温泉に入る頻度が多いせいか、いつもよりも良い匂いがした。いや、元からしていたけど。
そして、艶のある黒髪はゼファの手が加えられて、三つ編みが生えていた。
へぇ、ショートカットの三つ編みか。似合うな。って、そりゃいいや。
「うん。壁の強化をしたいなって」
「壁」
「そ、壁。ほら、魔神のクリーチャーが度々襲ってくるだろう。というか、毎日だな。このままだと壁は壊され、侵略されちまう。けどな、必要な材料や金が膨大すぎて……維持がなぁ」
「抱っこ」
「……ふぇ? ちゃんと聞いていたか、フォース」
「うん、聞いてた。抱っこして」
と言いつつも、フォースはよじ登ってきた。
なんだか、子供をあやすような状態だ。ちょっと照れくさい。
「これでいいか」
「テレポートする」
「テ、テレポート? って、うわっ!!」
◆
気づけば、別の場所にいた。
畳が広がり、生け花や大きな筆で書かれた文字が飾られてたり、庭には大きな池。なんだこの和風の屋敷。……ん、ここってまさか。
「キャロルの忍者屋敷」
「そういうことか。キャロルに聞いてみろってことか」
「はい! 私ならここに!!」
「わぁぁっ!? いつの間にいたんだ、お前!」
ビックリした……すでに背後にキャロルがいた。珍しく忍者姿で。
「私、忍びですからね。気配遮断など容易いことです。……それで、ユメはどうして我が家へ? なにかご用件があるのですか」
「あ、ああ……壁についてな」
「壁……ふむ、長くなりそうですね。お茶をどうぞ」
スッとお茶を出すキャロル。速い……てか、どこから出した!?
用意がいいというか何というか。
「へぇ、うまいな」
「玉露です」
高級茶のアレか。初めて飲んだな。
「で、本題なんだが……」
「壁ですね。分かりました。それでは……地の神国が良いでしょう」
「ほお、なぜそこなんだ」
「エクサダイトをご存じですよね。ほら、武器とか防具を精錬するときに必要なアイテムです」
「ああ、あれな。でもあれは、そんな大量に採れるものじゃないだろう。希少性があるだけでなく、どの国も欲しがっているからな」
「ええ、普通は無理です。ですが、地の神国にある洞窟ダンジョンには、エクサダイトを大量に落とすモンスターがいるのですよ」
「へえ! そりゃすげえ、そんなダンジョンがあったなんて知らなかったぞ」
「それもそのはずですよ。たどり着くには、エクストラボスを倒さなければなりませんからね。だから、誰も近寄らなかったんです」
そういうことか。だったら、楽勝だ。
「でも、気を付けて下さい。そこのボス、かなり強いみたいですよ」
「へーきへーき。俺のパーティなら負けんよ」
「そうですね。ユメならきっと……あ、そういえば、ブリュンヒルデさんの件はどうなされるつもりです?」
「その件か。もちろん、彼女の姉・アトリも探すよ。任せろ」
「良かった」
「ん? どういうことだ」
「ええ、実は……アトリさんが地の神国で目撃されたという情報も入ったのです」
「なんだって!?」
「忍びはこの世界のどこにでもいますから、情報は常に耳に入ってきます。確かな情報なので、ぜひ壁とアトリさんの件をよろしくお願いします」
そりゃ朗報だ。
両方ともいっぺんに進められるというのなら、ありがたい。
◆
忍者屋敷を後にした。
もちろん、テレポートで帰還だ。
「おかえり」
「ただいま、ネーブル。ゼファも」
「はい、おかりなさいませ」
ネーブルはペディキュアを施していた。足の爪に丁寧に黒色を塗っている。へぇ、器用だな。
「ん、気になる?」
「なぜ黒なのかなっと」
「誰かさんの色だから」
だ、誰かさんねぇ~…誰だろうな。
「と、とにかく……ネーブル、ゼファ。地の神国へ行くぞ」
「了解」「了解しました」
二人とも素直に返事をした。
「おいおい、まだ何も事情を話していないぞ」
「いいよ、大体は分かる。壁とアトリさんでしょ」
「なぜ分かった」
ネーブルも俺の心が読めるのか!?
「ユメの顔に書いてあったから」
「へ? 俺の顔? ん? うそ?」
気になって鏡を見るが、書いてあるはずがない。
「ふふっ、真に受けているユメ可愛い」
そうネーブルはからかうようにして、背後から抱きついてきた。……す、すごいモチモチの感触がっ。そんな状態で耳打ちが。
「……ここ最近見られなかった魔神の動きが活発になっているわ。メイちゃんが言っていたけど、魔界に大規模な地殻変動があったらしい。なにかの前兆かもね……」
ほう、魔界にね。
宇宙に魔神の根城があるから関係は薄いはず。だけど、それは気になるな。魔界ではいったい何が起きているのだろうか。
でもそんなことはどうでもいい。裏切ったのは帝王だ。だから無視だ。
それよりも、俺の国は闇属性が付与された壁――『ダークウォール』によって囲まれ、守られている。しかし、それには耐久値が存在し、モンスターやクリーチャーから殴られ、ダメージを受ければ当然、いつしかは壊れてしまう完璧とはいえない盾だった。
ので、日々強化や修復をする必要がある。
これが大量の材料を消費し、金も湯水のごとく消えていった。このままではマズイ。これ以上、同盟国である光の天国に迷惑は掛けられない。
「……となると、う~~~ん」
「ユメ、悩んでる?」
つぶらな深緑の瞳でこちらを見るフォースは、俺の膝の上を満喫していた。体を揺らし、機嫌が良さそうだ。……最近、温泉に入る頻度が多いせいか、いつもよりも良い匂いがした。いや、元からしていたけど。
そして、艶のある黒髪はゼファの手が加えられて、三つ編みが生えていた。
へぇ、ショートカットの三つ編みか。似合うな。って、そりゃいいや。
「うん。壁の強化をしたいなって」
「壁」
「そ、壁。ほら、魔神のクリーチャーが度々襲ってくるだろう。というか、毎日だな。このままだと壁は壊され、侵略されちまう。けどな、必要な材料や金が膨大すぎて……維持がなぁ」
「抱っこ」
「……ふぇ? ちゃんと聞いていたか、フォース」
「うん、聞いてた。抱っこして」
と言いつつも、フォースはよじ登ってきた。
なんだか、子供をあやすような状態だ。ちょっと照れくさい。
「これでいいか」
「テレポートする」
「テ、テレポート? って、うわっ!!」
◆
気づけば、別の場所にいた。
畳が広がり、生け花や大きな筆で書かれた文字が飾られてたり、庭には大きな池。なんだこの和風の屋敷。……ん、ここってまさか。
「キャロルの忍者屋敷」
「そういうことか。キャロルに聞いてみろってことか」
「はい! 私ならここに!!」
「わぁぁっ!? いつの間にいたんだ、お前!」
ビックリした……すでに背後にキャロルがいた。珍しく忍者姿で。
「私、忍びですからね。気配遮断など容易いことです。……それで、ユメはどうして我が家へ? なにかご用件があるのですか」
「あ、ああ……壁についてな」
「壁……ふむ、長くなりそうですね。お茶をどうぞ」
スッとお茶を出すキャロル。速い……てか、どこから出した!?
用意がいいというか何というか。
「へぇ、うまいな」
「玉露です」
高級茶のアレか。初めて飲んだな。
「で、本題なんだが……」
「壁ですね。分かりました。それでは……地の神国が良いでしょう」
「ほお、なぜそこなんだ」
「エクサダイトをご存じですよね。ほら、武器とか防具を精錬するときに必要なアイテムです」
「ああ、あれな。でもあれは、そんな大量に採れるものじゃないだろう。希少性があるだけでなく、どの国も欲しがっているからな」
「ええ、普通は無理です。ですが、地の神国にある洞窟ダンジョンには、エクサダイトを大量に落とすモンスターがいるのですよ」
「へえ! そりゃすげえ、そんなダンジョンがあったなんて知らなかったぞ」
「それもそのはずですよ。たどり着くには、エクストラボスを倒さなければなりませんからね。だから、誰も近寄らなかったんです」
そういうことか。だったら、楽勝だ。
「でも、気を付けて下さい。そこのボス、かなり強いみたいですよ」
「へーきへーき。俺のパーティなら負けんよ」
「そうですね。ユメならきっと……あ、そういえば、ブリュンヒルデさんの件はどうなされるつもりです?」
「その件か。もちろん、彼女の姉・アトリも探すよ。任せろ」
「良かった」
「ん? どういうことだ」
「ええ、実は……アトリさんが地の神国で目撃されたという情報も入ったのです」
「なんだって!?」
「忍びはこの世界のどこにでもいますから、情報は常に耳に入ってきます。確かな情報なので、ぜひ壁とアトリさんの件をよろしくお願いします」
そりゃ朗報だ。
両方ともいっぺんに進められるというのなら、ありがたい。
◆
忍者屋敷を後にした。
もちろん、テレポートで帰還だ。
「おかえり」
「ただいま、ネーブル。ゼファも」
「はい、おかりなさいませ」
ネーブルはペディキュアを施していた。足の爪に丁寧に黒色を塗っている。へぇ、器用だな。
「ん、気になる?」
「なぜ黒なのかなっと」
「誰かさんの色だから」
だ、誰かさんねぇ~…誰だろうな。
「と、とにかく……ネーブル、ゼファ。地の神国へ行くぞ」
「了解」「了解しました」
二人とも素直に返事をした。
「おいおい、まだ何も事情を話していないぞ」
「いいよ、大体は分かる。壁とアトリさんでしょ」
「なぜ分かった」
ネーブルも俺の心が読めるのか!?
「ユメの顔に書いてあったから」
「へ? 俺の顔? ん? うそ?」
気になって鏡を見るが、書いてあるはずがない。
「ふふっ、真に受けているユメ可愛い」
そうネーブルはからかうようにして、背後から抱きついてきた。……す、すごいモチモチの感触がっ。そんな状態で耳打ちが。
「……ここ最近見られなかった魔神の動きが活発になっているわ。メイちゃんが言っていたけど、魔界に大規模な地殻変動があったらしい。なにかの前兆かもね……」
ほう、魔界にね。
宇宙に魔神の根城があるから関係は薄いはず。だけど、それは気になるな。魔界ではいったい何が起きているのだろうか。
1
あなたにおすすめの小説
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる