元勇者は魔力無限の闇属性使い ~世界の中心に理想郷を作り上げて無双します~

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中

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第142話 奪われた極魔法使い

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 ある日、フォースと共にパラドックスを歩いていると。


「――フォースさん、僕と付き合って下さい!」


 見知らぬ青年がフォースに告白した。
 俺はビックリした。突然そんなイベントが発生するとか、予想もしていなかったからだ。ていうか、フォースに告白とか……そんなファンがいたのか。

「…………」

 当然、フォースは押し黙った。
 彼女は俺とか仲間以外には基本こんな感じ。
 人見知りがとにかく激しかった。


「あー…、そうですよね。そんな反応されるのも無理はないですね。まずは自己紹介を、僕はこれでも『地の神国クレド』の貴族。名を『ソイル』と申します」


 茶髪の青年・ソイルはお辞儀した。
 こうして見れば落ち着きがあるというか、どことなくフォースと同じ出身だということが分かる。うん、この土の香りは似ている。


「俺はユメ。悪いけど、こいつの身内でね」
「ええ、貴方の事は理解しています。ですが、僕はそれでもフォースさんに恋をしてしまったのです。貴方がいようとも関係ない」


 ……強いな。
 諦めないか。だったら。


「フォースは俺のそばにいる、こうしてね」

 隣に立っているフォースを抱き寄せてた。
 ソイルは眉をひそめるが、それでも怯まなかった。


「それくらいは普通でしょう。抱き合う程度……」


 これでも折れないか。
 仕方ない、公の場でキスはどうかと思ったが……やむを得ないか。これ以上、青年とトラブルになる前に現実を見せつけるしか――。


 そう行動に出ようとした時だった。


「では、フォースさん。これを差し上げます」


 ソイルは服からゴソゴソと何かを取り出し、フォースの前へ差し出した。……あ、あれは、まさか!


「……!」


 フォースも目を見開き、それに注目した。


「フォースさん、これは貴女の大好物……たい焼き・・・・です」


 な、なぜそれを知っている!
 ま……まあ、たまに買い与えていたから、その時に見られていたか。くそう、あんなモンを出されたら……あ!

 俺から離れるフォースは、たい焼きに釣られてしまった。まさにエサに食いつく魚のようだった。おいおい!


「ふっ」


 ソイルはドヤと俺を見た。
 うぜぇ……。てか、フォースが取られた!

 しかも、ヤロー…フォースの肩に触れやがって。


「ソイル……」
「フフフ、彼女の好物はリサーチ済み。なにも策を考えず来るわけないでしょう。さあ、フォースさん、行きましょう。僕はこのパラドックスに家を建てたので、すぐ近くにあるんですよ」


「……(コクコク)」


 顔を赤く染めて、頷くフォース。
 だめだ……食べ物に集中してるせいで、周りが見えていない。この俺も映る価値なし状態だ。くそ、あの状態だと呼んでも無駄なんだよな。


 ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


 ――あたしは、気づけば知らない人の家にいた。

「あれ……ユメは?」
「ユメ? ああ、あの少年ですか。あなたのそばから消えましたよ」
「……え」


 嘘。ユメがあたしを置いていくわけない。
 そんな事、今まで一度もなかったし、これからもない。

 絶対に。


「フォースさんは、これから僕と一緒に住むんですよ」
「そんなのいやだ。あたしは帰る」
「どこへ帰るというのですか。貴女の帰る家はもうココです」
「違う。みんなのとこ」


 そう否定すると、ソイルという青年は不気味に笑った。


「違う? それこそ違う。フォースさん……あなたは世界屈指の 極魔法使いアルティメットウィザードです。元々、僕と同じ『地の神国クレド』の出身。だから、貴族である僕と結婚するべきなのです」


 意味が分からなかった。
 出会って十分も経たず、相手のこともまるで理解していないというのに……いきなり、付き合って? 結婚して? 気味が悪い。


「もういい。さようなら」


 あたしは扉へ向かおうとした――

 だが、ソイルが進路を阻み……
 あたしの腕を掴んだ。


「…………い、いたい」
「フォースさん。どこへ行くのですか……君はもう僕のモノだ」


 出会った頃とはまるで違う、悪魔のような表情。
 はぁはぁと息を乱し、あたしの服に手を掛けてくる。……いや、気持ち悪い。こんな人だったなんて……安易に釣られたあたしが馬鹿だった。


 ――ごめんね、ユメ。
 ……大好きなユメを裏切ってしまった。

 なぜか涙が溢れて止まらなかった。

 そんな間にもソイルは、あたしをベッドに押し倒して……覆いかぶさってきた。体重が重く圧し掛かり、その手は下半身へ。


「や……め…て」


 ユメ……たすけて。


 そう願った瞬間、



『――――――イベントホライゾン!!!』



 闇が突然現れ、ソイルは部屋の壁を突き抜けていき――外へ吹っ飛んでいった。その光景にあたしは、ただ驚くばかりだった。


「これは……」
「よう、フォース」
「ユメ……どうして場所が分かったの?」


「お前の心の声が聞こえたからな」
「そっか、ソウルフォースであたしの心を読んだのね」


 ユメはうなずく。
 そして、怒るわけでもなく――ただ、あたしを優しく抱きしめてくれた。……それがすっごく嬉しくて、あたしは泣いた。


「ユメ」
「もう食べ物なんかに釣られるなよ」
「……うん、ごめんね」


 ぎゅっといつも以上に熱い抱擁ほうようだった。
 あたたかい……。


 ――ああ、やっぱり、
 あたしは彼がいないと生きていけない。


 ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


 フォースを救出した。
 俺の腕の中には、小さな身体からだ

 極魔法使いアルティメットウィザードが小動物のように丸まっていた。これが可愛くて、たまらなかった。


「ちょっと寄り道していくか」


 笑顔で静かにうなずく小さき魔法使い、フォース。エメラルドグリーンの瞳が輝いている。


 もうすぐ日が沈む。


 ダークウォールの上へ向かい、星空でも眺めよう。


 今夜は輝線星雲が見られるだろう。
 緑のリングで、それはフォースの瞳そのものだ。


「ねぇ、ユメ」
「うん?」
「愛してるよ♡」
「知ってる。だから必死になって探し回ったし」


 顔を真っ赤にするフォースは、顔を近づけ唇を重ねてきた。……夜空にはエメラルドグリーンの輝線星雲が俺たちを祝福するように輝いていた。
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