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無限初回ログインボーナス
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「別れましょう、アビス。あなたは子供すぎるし、それに、お金だけが目当てだったんですもの」
十五歳の誕生日。
一年以上付き合った恋人のレイラは、そう言った。俺は騙されていたんだ。
「マジかよ。俺の資産はどうした」
「奪ったわ。全部ね! もういいでしょ、貴方みたいな退屈な人とは別れる。じゃあね」
そんな……そんなの残酷すぎる。
金のために付き合っていたとか、なによりもその事実がショックすぎた。
両親から受け継いだ、家も、土地も、家具も、お金も――なにもかもを奪われた。もう俺のものは何一つ残っていない。
「レイラ、お前!!」
追いかけようとしても、もう遅かった。彼女の姿は消えていた。
俺は……、俺はぁ……!
絶望して帝国中をアテもなく彷徨った。あれから、三日は経ったらしい。服も靴もボロボロでお腹もぺこぺこ。精神的にやられて食べ物が喉を通らず、辛すぎた。
あと150ベルか……しんどいな。
150ベルなんて飲み物を買ったら終わる。これで俺の生命も終わる。
「ん?」
ふと気づくと今いる場所が冒険者であふれていた。みんな、ギルドを行き来していた。その中で気になる会話があった。
「いやぁ、今日もクエストで大量に稼いだよ。僕はいつかお金持ちになって辺境の地で暮らすんだ」
……!
そうか、あのギルドに入ればお金が稼げるんだ。つまり、俺も冒険者になれば今の貧窮した事態を脱することができるかも。
ギルドの受付嬢のところへ向かった。だけど、受付嬢は引いていた。
「……あ、あのぅ。その、お客様ボロボロすぎですよ?」
「身なりは酷いけど許してくれ。冒険者になるにはどうすればいい」
受付嬢は『そんな格好で冒険者になるの?』みたいな視線を送ってきた。当然の反応だけど、構うもんか。今は生きる為に必死なんだ。
「そうですね、分かりました。お客様、お困りのようですし」
「助かる。本当に助かるよ!」
「お名前をお聞かせください」
「アビスだ。アビス・ウィンザー」
「……え? あなた、ウィンザー家の長男では。あの伯爵家の方ですよね」
「もう伯爵家はない。潰えたんだ。それより、冒険者を登録を頼む」
「わ、分かりました。アビス・ウィンザー様の冒険者登録をいたします」
数秒後、俺の頭上に【302003】という数字が現れた。でも、少しして消えた。
「な、なんの数字?」
「それは冒険者ランキングを示しているのです。アビス様は、たった今冒険者になったばかりなので、順位で302003位というわけです」
なるほど、この世界には三十万人もの冒険者がいるんだな。その中の最下位ってわけか。へえ、ランキングなんてあるとか知らなかったな。
「ありがとう。これから、どうすればいい?」
「そうですね、まずは初心者向けの洞窟とか目指されるといいでしょう。その中に“モグモグ”というモグラ系モンスターがいるんです。弱いです!」
倒せば、経験値とかアイテムをゲットできると。
「あ、そうだ。討伐クエストってないの? お金を稼ぎたい」
「ありますよ。では、そのモグモグ討伐を開始しますね」
「頼む」
また青白く光ると、目の前に【モグモグ討伐クエスト(0/30】と現れた。どうやら、30体倒せばいいらしいな。達成で【報酬:3000ベル】と書かれていた。へえ、こりゃ凄いや。
3000ベルあれば、格安宿屋なら一泊できるぞ。
俺はさっそく帝国の近くにあるという『洞窟』へ向かった。
だけど、俺は外の世界を甘く見ていた。
* * *
洞窟に到着。
帝国を出て荒野フィールドを少し歩くとあった。受付嬢の言う通り、明らかに初心者っぽい人しかいなかった。
薄暗い洞窟内を進んでいく。
すると、直ぐにモンスターが現れた。
あの両手で持てそうなサイズ感のモグラが“モグモグ”か。なんだ、弱そうだな。
武器は持っていないので『素手』で殴る。それしか攻撃方法がなかった。
「おらっ!!」
一発ブン殴ると一応命中。だけど、たいしたダメージは与えられなかった。うわ、モンスターって意外と体力あるな。
今度は、モグモグが攻撃をしてきた。
『ヌー!!』
「うわっ!!」
俺は小ダメージを受けた。そこそこ痛いな。だけど、耐えられる痛みだ。死ぬほどではない。なんだ、なんとかなりそうじゃないか。
と、思ったその時。
モグモグがどんどん現れ、俺は囲まれてしまった。……え、ナニコレ。どういうこと。モグモグって雑魚なんだろ? なのに目の前には十、二十はいた。
『ヌゥゥ!!』
バコバコ殴られて、俺は瀕死になった。や、やべえ……痛いし、死ぬ。死んでしまう。逃げようと必死にもがく。
死にかけた時だった。
ごうっと洞窟内を覆う程白い光が吹き抜け、モグモグを蒸発させた。……な、なんだ!? 凄い光だぞ。
「ホーリークロス……です!」
目の前にはいつの間にか銀髪の少女がいた。後ろ姿でよく見えないけど、俺を守ってくれたようだった。
「き、君はいったい」
「わたしは、大聖女ローザ。アビス様、お忘れですか。あなたにその昔『無限初回ログインボーナス』を授けた者です」
な、なんですとっ!?
無限初回ログインボーナスって、なにそれ!?
十五歳の誕生日。
一年以上付き合った恋人のレイラは、そう言った。俺は騙されていたんだ。
「マジかよ。俺の資産はどうした」
「奪ったわ。全部ね! もういいでしょ、貴方みたいな退屈な人とは別れる。じゃあね」
そんな……そんなの残酷すぎる。
金のために付き合っていたとか、なによりもその事実がショックすぎた。
両親から受け継いだ、家も、土地も、家具も、お金も――なにもかもを奪われた。もう俺のものは何一つ残っていない。
「レイラ、お前!!」
追いかけようとしても、もう遅かった。彼女の姿は消えていた。
俺は……、俺はぁ……!
絶望して帝国中をアテもなく彷徨った。あれから、三日は経ったらしい。服も靴もボロボロでお腹もぺこぺこ。精神的にやられて食べ物が喉を通らず、辛すぎた。
あと150ベルか……しんどいな。
150ベルなんて飲み物を買ったら終わる。これで俺の生命も終わる。
「ん?」
ふと気づくと今いる場所が冒険者であふれていた。みんな、ギルドを行き来していた。その中で気になる会話があった。
「いやぁ、今日もクエストで大量に稼いだよ。僕はいつかお金持ちになって辺境の地で暮らすんだ」
……!
そうか、あのギルドに入ればお金が稼げるんだ。つまり、俺も冒険者になれば今の貧窮した事態を脱することができるかも。
ギルドの受付嬢のところへ向かった。だけど、受付嬢は引いていた。
「……あ、あのぅ。その、お客様ボロボロすぎですよ?」
「身なりは酷いけど許してくれ。冒険者になるにはどうすればいい」
受付嬢は『そんな格好で冒険者になるの?』みたいな視線を送ってきた。当然の反応だけど、構うもんか。今は生きる為に必死なんだ。
「そうですね、分かりました。お客様、お困りのようですし」
「助かる。本当に助かるよ!」
「お名前をお聞かせください」
「アビスだ。アビス・ウィンザー」
「……え? あなた、ウィンザー家の長男では。あの伯爵家の方ですよね」
「もう伯爵家はない。潰えたんだ。それより、冒険者を登録を頼む」
「わ、分かりました。アビス・ウィンザー様の冒険者登録をいたします」
数秒後、俺の頭上に【302003】という数字が現れた。でも、少しして消えた。
「な、なんの数字?」
「それは冒険者ランキングを示しているのです。アビス様は、たった今冒険者になったばかりなので、順位で302003位というわけです」
なるほど、この世界には三十万人もの冒険者がいるんだな。その中の最下位ってわけか。へえ、ランキングなんてあるとか知らなかったな。
「ありがとう。これから、どうすればいい?」
「そうですね、まずは初心者向けの洞窟とか目指されるといいでしょう。その中に“モグモグ”というモグラ系モンスターがいるんです。弱いです!」
倒せば、経験値とかアイテムをゲットできると。
「あ、そうだ。討伐クエストってないの? お金を稼ぎたい」
「ありますよ。では、そのモグモグ討伐を開始しますね」
「頼む」
また青白く光ると、目の前に【モグモグ討伐クエスト(0/30】と現れた。どうやら、30体倒せばいいらしいな。達成で【報酬:3000ベル】と書かれていた。へえ、こりゃ凄いや。
3000ベルあれば、格安宿屋なら一泊できるぞ。
俺はさっそく帝国の近くにあるという『洞窟』へ向かった。
だけど、俺は外の世界を甘く見ていた。
* * *
洞窟に到着。
帝国を出て荒野フィールドを少し歩くとあった。受付嬢の言う通り、明らかに初心者っぽい人しかいなかった。
薄暗い洞窟内を進んでいく。
すると、直ぐにモンスターが現れた。
あの両手で持てそうなサイズ感のモグラが“モグモグ”か。なんだ、弱そうだな。
武器は持っていないので『素手』で殴る。それしか攻撃方法がなかった。
「おらっ!!」
一発ブン殴ると一応命中。だけど、たいしたダメージは与えられなかった。うわ、モンスターって意外と体力あるな。
今度は、モグモグが攻撃をしてきた。
『ヌー!!』
「うわっ!!」
俺は小ダメージを受けた。そこそこ痛いな。だけど、耐えられる痛みだ。死ぬほどではない。なんだ、なんとかなりそうじゃないか。
と、思ったその時。
モグモグがどんどん現れ、俺は囲まれてしまった。……え、ナニコレ。どういうこと。モグモグって雑魚なんだろ? なのに目の前には十、二十はいた。
『ヌゥゥ!!』
バコバコ殴られて、俺は瀕死になった。や、やべえ……痛いし、死ぬ。死んでしまう。逃げようと必死にもがく。
死にかけた時だった。
ごうっと洞窟内を覆う程白い光が吹き抜け、モグモグを蒸発させた。……な、なんだ!? 凄い光だぞ。
「ホーリークロス……です!」
目の前にはいつの間にか銀髪の少女がいた。後ろ姿でよく見えないけど、俺を守ってくれたようだった。
「き、君はいったい」
「わたしは、大聖女ローザ。アビス様、お忘れですか。あなたにその昔『無限初回ログインボーナス』を授けた者です」
な、なんですとっ!?
無限初回ログインボーナスって、なにそれ!?
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