無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗

文字の大きさ
18 / 38

レアガチャぶん回し作戦

しおりを挟む
 蘇生して戻ってきた者を含めて二十人程となった。各々、疲弊ひへいして地面へ座り込む。絶望感な空気が漂っているな。

 俺はともかく、ローザとミランダは顔色が悪い。休ませてやらないと。


「二人とも寝るといいよ。俺が見張っているから」
「分かりました、アビス様。ちなみに、ローザ様はもう眠られました」


 うらやましいことに、ミランダに膝枕ひざまくらしてもらって快適な睡眠をむさぼっていた。いいなぁ……きっと良い夢が見れるだろう。

「悪いな、ミランダ」
「いえいえ。ローザ様は蘇生魔法をたくさん使ってよく働きましたから」

 そうだな、おかげで十人以上は救えた。
 けど犠牲者の方があまりにも多かった。あんな犯罪者ギルドなんて現れなければ……もっと生き残っていただろうに。

 これは、犯罪者を野放しにしているリディア共和国の怠慢たいまんだな。


「そうだな、魔力も枯渇こかつしているだろう。ご褒美にブルーポーションを沢山プレゼントしてやらないとな」
「そうですね。後衛職は、どうしても魔力消費量が膨大ぼうだいですから」

「魔力消費を抑える防具とかあればいいんだけどな」

「ありますよ。でも、S級以上のレアアイテムばかり……そう簡単には手に入りません」
「おぉ、そうか。“レアアイテム”か!」


 重大なことに気づいた。
 俺には『無限初回ログインボーナス』があるんだ。昨晩だって送られてきているはずだ。まだまだ二年半分近くが手つかずで残っている。

 そうだ、魔晶石も随分ずいぶんと余っている。そろそろガチャをぶん回したいところ。

 なんとなく魔晶石を手に置いて転がして遊んでいると、それを見たミランダが驚いていた。


「わぁ、それって『金の魔晶石』ですよね!?」
「まあね。ミランダも持っているだろ」

「持っていませんよ~。その金の魔晶石は、滅多に入手できない石ですよ……。初回に貰えますけど、大体それっきりです」

「そうなのか。う~ん、ガチャが出来れば装備を整えられるかもなんだが」
「それでは一度、街へ戻りますか?」


 ミランダは、さりげなく凄いことを言った気が。

 ……えっと。

 今、ミランダはなんと言った?


「すまん、ローザの寝顔に見惚みほれていて聞き取れなかった。もう一度言ってくれ」
「そうなのですか!? あー、いえ……街へ戻りますか?」

 街へ、戻る?

「待ってくれ。このダンジョンで一度入ったら出れないんじゃないの?」

「いえ、そんな事はありませんよ。“セイフティゾーン”に進入すれば、ワープポータルを開いたり、テレポートしたり、帰還アイテムの『アベオの葉』を使えるんです」

「え、マジィ!?」


 し、知らなかった。
 ダンジョンはともかく、安全地帯では『帰還』が可能だったのか。俺はてっきり、一方通行なのかと……。


「しかも、転送スキルの『ワープポータル』なら、また攻略した階層まで戻って来れますよ~。メモリアル機能があるので!」


 詳細がいきなり目の前に出てきた。



【ワープポータル】
【補助スキル】
【詳細】
 消費魔力:50。
 好きな場所に“転移の扉”を開く。
 最大十名を特定の場所へ転移する。
 メモリーした座標へ転移可能。
 最大五つの『座標』をメモリーできる。転移禁止エリアのメモリーは不可能。このスキルの使用には [アクアマリン] 1個を触媒にする必要がある。

 Lv.1:座標メモリー①
 Lv.2:座標メモリー②
 Lv.3:座標メモリー③
 Lv.4:座標メモリー④
 Lv.5:座標メモリー⑤



 これは、ギルドの受付嬢も使っていた“転移スキル”じゃないか。


「も、もしかしてミランダって転移スキルが使えるの?」
「はい。わたくし、ソーサラーなので!」

 えっへんと胸を張るミランダさん。そうか、そうだったのか……!

 これは吉報だぞ。
 街へ戻れるのなら、一度アイテムとか装備を整えられる。


「ミランダ、いったん街へ戻ろう」
「分かりました。でも、今日はもう疲れましたから、明日にでも」
「そうだな、そうしよう。ここは俺に任せてくれ」

「アビス様も眠ってくださいませ。もう随分と寝られていないのでしょう? どうか、ご自愛ください」


 そんな女神様のような優しい瞳で見つめられると――うぅ、だが。


「二人を守らなきゃいけないし」
「わたくしが代わりに見張っていますから」
「いや、ミランダは眠ってくれ」
「だめです。これ以上、無理なされるのなら、子守歌スキルで強制的に眠らせますよ。これでもジプシーでもありますから」

 踊り子ジプシースキルか。
 ミランダは、なかなか引き出しが多そうだな。

「分かった。俺の負けだよ、ミランダ」

 ミランダの横に腰掛けた。
 すると、遠くからこちらを見守っていたオーガストが話しかけてきた。

「見張りは俺がしてやんよ」
「オーガスト……あんた。そういえば、頭の傷は大丈夫か?」
「ああ、お前さんの仲間を守ると豪語したのに、このザマだ。そのお詫びと言ってはなんだが……一晩、見張りをさせてくれ、頼む」

 頭を深々と下げられた。
 別に気にすることはないのだが、なんだか断り辛いな。それに、少しでも安全が保障されるのなら彼を頼るべきだろう。

「ありがとう、オーガスト」
「おやすみ。良い夢を」


 ▼△▼△▼△


 ――翌日。

 爆睡した俺は、すっかり寝不足が解消された。ここ最近、ずっと起きっぱなしだったからな。睡眠不足で死ぬかと思った。

「おはようございます、アビスさん」

 ミランダのスプラッシュで顔を洗いながら挨拶するローザ。せめて、洗い終えてからにしろよっ。


 仕度を済ませ、俺はローザに事情を話した。


「――というわけだ。一度、街へ戻るぞ」
「え! ミランダさんって、ワープポータルが使えたんです!? それ、え……嘘、信じられません」


 予想以上に驚くローザ。
 そんなにビックリすることなのか。
 こっそり聞いてみると、ワープポータルは通常、魔術師ウィザード系の上位職が習得できるスキルだという。だけど、習得条件だとか習得クエストが激ムズらしい。

 ただ、ギルドの受付嬢は特殊な訓練・・・・・を受けて、そこそこ簡単に覚えられるようだ。


「そういうことか。まあ、おかげで街へ戻れるんだ。細かいことは気にしなくていいんじゃないか」
「そ、それはそうですけれど……そうですね。今はとにかく、装備を整え直す方が優先ですね」


 方針は固まった。
 俺は、オーガストに分かれを告げた。彼はしばらく十階で冒険者をサポートするようだ。


 ついに、ミランダが『ワープポータル』を開く。
 リディア共和国へ行こうとした時、ギルドの受付嬢が出したものと同じものだ。これは間違いない、本物の転移スキルだ。


「アビス様、ローザ様、飛び込んでくださいませ」


 先に俺が光の柱の中へ飛び込んだ。

 この先にはリディア共和国の街並みが――え?


 な、なんで?


 その先に出て、俺は混乱した。
 見覚えのある光景が広がって、つい最近利用した『噴水』があって……ああ、ここは『ケイオス帝国』なのだと直ぐに理解した。


「おいおい……リディア共和国じゃないのかよ!」


 ミランダのことだから、共和国へ転移してくれるものかと思っていたが、それは違った。

 続いてやってきたローザも叫んでしまっていた。


「え、ええ~!! なんで、ケイオス帝国なのです!?」
「さあ、分からん。だけど、これでガチャは出来るぞ」


 しばらくして、ミランダもこっちへ来た。


「お待たせしました。ケイオス帝国で良かったですよね?」
「あ、ああ……でも、なんで帝国なんだ」

「え……御存知ありません? 聖地アヴァロンは、帝国の近くにあるんです。だから、交流のあるこの国を選んでみたのですが……」


 あー、なるほどね。
 って、そうだったのか。

 まさか帝国とエルフの国に、そんな関係性があったとは。

 いや、感心している場合ではないな。今は『レアガチャ』が最優先。ローザとミランダを強化する――!
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

処理中です...