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レアガチャぶん回し作戦

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 蘇生して戻ってきた者を含めて二十人程となった。各々、疲弊ひへいして地面へ座り込む。絶望感な空気が漂っているな。

 俺はともかく、ローザとミランダは顔色が悪い。休ませてやらないと。


「二人とも寝るといいよ。俺が見張っているから」
「分かりました、アビス様。ちなみに、ローザ様はもう眠られました」


 うらやましいことに、ミランダに膝枕ひざまくらしてもらって快適な睡眠をむさぼっていた。いいなぁ……きっと良い夢が見れるだろう。

「悪いな、ミランダ」
「いえいえ。ローザ様は蘇生魔法をたくさん使ってよく働きましたから」

 そうだな、おかげで十人以上は救えた。
 けど犠牲者の方があまりにも多かった。あんな犯罪者ギルドなんて現れなければ……もっと生き残っていただろうに。

 これは、犯罪者を野放しにしているリディア共和国の怠慢たいまんだな。


「そうだな、魔力も枯渇こかつしているだろう。ご褒美にブルーポーションを沢山プレゼントしてやらないとな」
「そうですね。後衛職は、どうしても魔力消費量が膨大ぼうだいですから」

「魔力消費を抑える防具とかあればいいんだけどな」

「ありますよ。でも、S級以上のレアアイテムばかり……そう簡単には手に入りません」
「おぉ、そうか。“レアアイテム”か!」


 重大なことに気づいた。
 俺には『無限初回ログインボーナス』があるんだ。昨晩だって送られてきているはずだ。まだまだ二年半分近くが手つかずで残っている。

 そうだ、魔晶石も随分ずいぶんと余っている。そろそろガチャをぶん回したいところ。

 なんとなく魔晶石を手に置いて転がして遊んでいると、それを見たミランダが驚いていた。


「わぁ、それって『金の魔晶石』ですよね!?」
「まあね。ミランダも持っているだろ」

「持っていませんよ~。その金の魔晶石は、滅多に入手できない石ですよ……。初回に貰えますけど、大体それっきりです」

「そうなのか。う~ん、ガチャが出来れば装備を整えられるかもなんだが」
「それでは一度、街へ戻りますか?」


 ミランダは、さりげなく凄いことを言った気が。

 ……えっと。

 今、ミランダはなんと言った?


「すまん、ローザの寝顔に見惚みほれていて聞き取れなかった。もう一度言ってくれ」
「そうなのですか!? あー、いえ……街へ戻りますか?」

 街へ、戻る?

「待ってくれ。このダンジョンで一度入ったら出れないんじゃないの?」

「いえ、そんな事はありませんよ。“セイフティゾーン”に進入すれば、ワープポータルを開いたり、テレポートしたり、帰還アイテムの『アベオの葉』を使えるんです」

「え、マジィ!?」


 し、知らなかった。
 ダンジョンはともかく、安全地帯では『帰還』が可能だったのか。俺はてっきり、一方通行なのかと……。


「しかも、転送スキルの『ワープポータル』なら、また攻略した階層まで戻って来れますよ~。メモリアル機能があるので!」


 詳細がいきなり目の前に出てきた。



【ワープポータル】
【補助スキル】
【詳細】
 消費魔力:50。
 好きな場所に“転移の扉”を開く。
 最大十名を特定の場所へ転移する。
 メモリーした座標へ転移可能。
 最大五つの『座標』をメモリーできる。転移禁止エリアのメモリーは不可能。このスキルの使用には [アクアマリン] 1個を触媒にする必要がある。

 Lv.1:座標メモリー①
 Lv.2:座標メモリー②
 Lv.3:座標メモリー③
 Lv.4:座標メモリー④
 Lv.5:座標メモリー⑤



 これは、ギルドの受付嬢も使っていた“転移スキル”じゃないか。


「も、もしかしてミランダって転移スキルが使えるの?」
「はい。わたくし、ソーサラーなので!」

 えっへんと胸を張るミランダさん。そうか、そうだったのか……!

 これは吉報だぞ。
 街へ戻れるのなら、一度アイテムとか装備を整えられる。


「ミランダ、いったん街へ戻ろう」
「分かりました。でも、今日はもう疲れましたから、明日にでも」
「そうだな、そうしよう。ここは俺に任せてくれ」

「アビス様も眠ってくださいませ。もう随分と寝られていないのでしょう? どうか、ご自愛ください」


 そんな女神様のような優しい瞳で見つめられると――うぅ、だが。


「二人を守らなきゃいけないし」
「わたくしが代わりに見張っていますから」
「いや、ミランダは眠ってくれ」
「だめです。これ以上、無理なされるのなら、子守歌スキルで強制的に眠らせますよ。これでもジプシーでもありますから」

 踊り子ジプシースキルか。
 ミランダは、なかなか引き出しが多そうだな。

「分かった。俺の負けだよ、ミランダ」

 ミランダの横に腰掛けた。
 すると、遠くからこちらを見守っていたオーガストが話しかけてきた。

「見張りは俺がしてやんよ」
「オーガスト……あんた。そういえば、頭の傷は大丈夫か?」
「ああ、お前さんの仲間を守ると豪語したのに、このザマだ。そのお詫びと言ってはなんだが……一晩、見張りをさせてくれ、頼む」

 頭を深々と下げられた。
 別に気にすることはないのだが、なんだか断り辛いな。それに、少しでも安全が保障されるのなら彼を頼るべきだろう。

「ありがとう、オーガスト」
「おやすみ。良い夢を」


 ▼△▼△▼△


 ――翌日。

 爆睡した俺は、すっかり寝不足が解消された。ここ最近、ずっと起きっぱなしだったからな。睡眠不足で死ぬかと思った。

「おはようございます、アビスさん」

 ミランダのスプラッシュで顔を洗いながら挨拶するローザ。せめて、洗い終えてからにしろよっ。


 仕度を済ませ、俺はローザに事情を話した。


「――というわけだ。一度、街へ戻るぞ」
「え! ミランダさんって、ワープポータルが使えたんです!? それ、え……嘘、信じられません」


 予想以上に驚くローザ。
 そんなにビックリすることなのか。
 こっそり聞いてみると、ワープポータルは通常、魔術師ウィザード系の上位職が習得できるスキルだという。だけど、習得条件だとか習得クエストが激ムズらしい。

 ただ、ギルドの受付嬢は特殊な訓練・・・・・を受けて、そこそこ簡単に覚えられるようだ。


「そういうことか。まあ、おかげで街へ戻れるんだ。細かいことは気にしなくていいんじゃないか」
「そ、それはそうですけれど……そうですね。今はとにかく、装備を整え直す方が優先ですね」


 方針は固まった。
 俺は、オーガストに分かれを告げた。彼はしばらく十階で冒険者をサポートするようだ。


 ついに、ミランダが『ワープポータル』を開く。
 リディア共和国へ行こうとした時、ギルドの受付嬢が出したものと同じものだ。これは間違いない、本物の転移スキルだ。


「アビス様、ローザ様、飛び込んでくださいませ」


 先に俺が光の柱の中へ飛び込んだ。

 この先にはリディア共和国の街並みが――え?


 な、なんで?


 その先に出て、俺は混乱した。
 見覚えのある光景が広がって、つい最近利用した『噴水』があって……ああ、ここは『ケイオス帝国』なのだと直ぐに理解した。


「おいおい……リディア共和国じゃないのかよ!」


 ミランダのことだから、共和国へ転移してくれるものかと思っていたが、それは違った。

 続いてやってきたローザも叫んでしまっていた。


「え、ええ~!! なんで、ケイオス帝国なのです!?」
「さあ、分からん。だけど、これでガチャは出来るぞ」


 しばらくして、ミランダもこっちへ来た。


「お待たせしました。ケイオス帝国で良かったですよね?」
「あ、ああ……でも、なんで帝国なんだ」

「え……御存知ありません? 聖地アヴァロンは、帝国の近くにあるんです。だから、交流のあるこの国を選んでみたのですが……」


 あー、なるほどね。
 って、そうだったのか。

 まさか帝国とエルフの国に、そんな関係性があったとは。

 いや、感心している場合ではないな。今は『レアガチャ』が最優先。ローザとミランダを強化する――!
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