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世界でただ一人の『大聖女』
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帝国・ジェミニに入って、その風景に感動した。
「建物が大きいなぁ。何階建てなんだろう」
「二階建てがほとんどですね。エタニティ教会はこの先ですが……」
「ん? アイル、浮かない顔してどうしたの?」
帝国に到着して早々、アイルは少し元気が無かったように見えた。でも、ここまで来ればそのプリミティブ辺境伯とも合流できそうな気がしていた。
「その、わたし……」
何かを言いかけてアイルは、肩をビクッとさせた。誰かに肩を叩かれたらしい。
「ごめん。驚かせちゃったね」
「あ、さっき黄色いスライムに襲われていたラルさん」
「さっきはありがとう、キエルくん。そうそう、ひとつ思い出したことがあってね」
「はい、なんでしょう?」
「そこの銀髪の子さ。よ~く見たら『アイル』様じゃないか! 俺ってばどうして見過ごしていたんだろうな」
「という事は、まさか……」
「そうさ、俺はプリミティブ辺境伯の息子さ」
なんという奇遇。
これは辺境伯にアイルを返すチャンスではないだろうか。
「ラルさん、この子……アイルを辺境伯に引き渡したいんですけど、頼めます?」
「それは出来ないかな」
「どうして?」
「父さんは、大聖女アイル様の護衛を任されていたんだけど、見事に任務失敗。今はお城に呼び出され、教会の連中やらに問い詰められている頃合いだろう。もしかしたら、牢屋にぶち込まれるかもなあ……アハハ」
アハハって……笑っている場合なの!?
結構、ピンチな気が。
「助けなくて良いんですか?」
「もちろん助けたいよ。でもね、お城に入るには厳重な警備があるし、帝国認定のホーリーナイトとかパラディンでもないと通して貰えないよ」
「ラルさんは辺境伯の息子なんでしょう。入れるのでは?」
首をブンブン横に振るラルは、滝のように涙を流して泣いた。
「俺は……ただの剣士さ。そんな権限はないよ。……あぁ、ウチはおしまいだ!! 一族郎党皆殺しにされてしまうんだー!!」
絶望的……って、わけでもないかな。
「落ち着いて、ラルさん。ここにアイルはいるでしょ。何とか説得しましょうよ」
「……! そ、そうか。それもそうだな。俺はいつも先走ってしまう癖があるからな。反省するよ。というわけだ、アイル様……どうかお力添えを」
頭を下げるラル。
それに対し、アイルは頷く。
「もちろんです。もとはと言えばわたしが逸れたからです。プリミティブ辺境伯に罪はありませんから、助け出しましょう」
こうして救出作戦が決まった。
とはいえ、厳重な警備をどう掻い潜ったものか。まずは、お城の前まで歩いてみようかな。
◆
大通りを突き進み、お城へ向かう。
ここまで多くの人とすれ違ったな。こんなに人間がいるだなんて……いや、獣人とかエルフ、ドワーフとかもいたけど、色んな人種がいるんだなって僕は思った。
「ここか」
「やっぱり、お城の守りは厳重ですね」
「いつも通り騎士があちらこちらに……これは無理だ」
僕、アイル、ラルの順番で状況の感想を吐露する。確かに、凄い騎士の数。二十、三十というレベルではない。百人はいた。
……ん、でも待てよ。
今更ながら僕は思い出した。
「なあ、アイル」
「はい、なんでしょう?」
「君って……『大聖女』なの?」
「ええ、そうですけれど……」
……アイルって、天然なのかな。
自分の立場が分かってなさそうだ。
というか、僕もスルーしすぎて、まったく気にしていなかったけど『大聖女』って、世界でただひとりの存在だぞ!!
「という事は、こんなコソコソしなくとも、アイル、君なら普通にお城に入れるんじゃ」
「あ……」
僕達は見つめ合う。
そして――、
「「「ああああああああああああ!!!」」」
叫んだ。
大きな門へ向かうと……
驚くほどあっさりと通され、お城へ入れた……。なんだ、楽勝だったんじゃないか。
「キエル、君すげぇな!!」
ラルからはそう尊敬の眼差しを向けられるけど、いやいや!! ……まあいいか、これで辺境伯を助けられそうだな。
「建物が大きいなぁ。何階建てなんだろう」
「二階建てがほとんどですね。エタニティ教会はこの先ですが……」
「ん? アイル、浮かない顔してどうしたの?」
帝国に到着して早々、アイルは少し元気が無かったように見えた。でも、ここまで来ればそのプリミティブ辺境伯とも合流できそうな気がしていた。
「その、わたし……」
何かを言いかけてアイルは、肩をビクッとさせた。誰かに肩を叩かれたらしい。
「ごめん。驚かせちゃったね」
「あ、さっき黄色いスライムに襲われていたラルさん」
「さっきはありがとう、キエルくん。そうそう、ひとつ思い出したことがあってね」
「はい、なんでしょう?」
「そこの銀髪の子さ。よ~く見たら『アイル』様じゃないか! 俺ってばどうして見過ごしていたんだろうな」
「という事は、まさか……」
「そうさ、俺はプリミティブ辺境伯の息子さ」
なんという奇遇。
これは辺境伯にアイルを返すチャンスではないだろうか。
「ラルさん、この子……アイルを辺境伯に引き渡したいんですけど、頼めます?」
「それは出来ないかな」
「どうして?」
「父さんは、大聖女アイル様の護衛を任されていたんだけど、見事に任務失敗。今はお城に呼び出され、教会の連中やらに問い詰められている頃合いだろう。もしかしたら、牢屋にぶち込まれるかもなあ……アハハ」
アハハって……笑っている場合なの!?
結構、ピンチな気が。
「助けなくて良いんですか?」
「もちろん助けたいよ。でもね、お城に入るには厳重な警備があるし、帝国認定のホーリーナイトとかパラディンでもないと通して貰えないよ」
「ラルさんは辺境伯の息子なんでしょう。入れるのでは?」
首をブンブン横に振るラルは、滝のように涙を流して泣いた。
「俺は……ただの剣士さ。そんな権限はないよ。……あぁ、ウチはおしまいだ!! 一族郎党皆殺しにされてしまうんだー!!」
絶望的……って、わけでもないかな。
「落ち着いて、ラルさん。ここにアイルはいるでしょ。何とか説得しましょうよ」
「……! そ、そうか。それもそうだな。俺はいつも先走ってしまう癖があるからな。反省するよ。というわけだ、アイル様……どうかお力添えを」
頭を下げるラル。
それに対し、アイルは頷く。
「もちろんです。もとはと言えばわたしが逸れたからです。プリミティブ辺境伯に罪はありませんから、助け出しましょう」
こうして救出作戦が決まった。
とはいえ、厳重な警備をどう掻い潜ったものか。まずは、お城の前まで歩いてみようかな。
◆
大通りを突き進み、お城へ向かう。
ここまで多くの人とすれ違ったな。こんなに人間がいるだなんて……いや、獣人とかエルフ、ドワーフとかもいたけど、色んな人種がいるんだなって僕は思った。
「ここか」
「やっぱり、お城の守りは厳重ですね」
「いつも通り騎士があちらこちらに……これは無理だ」
僕、アイル、ラルの順番で状況の感想を吐露する。確かに、凄い騎士の数。二十、三十というレベルではない。百人はいた。
……ん、でも待てよ。
今更ながら僕は思い出した。
「なあ、アイル」
「はい、なんでしょう?」
「君って……『大聖女』なの?」
「ええ、そうですけれど……」
……アイルって、天然なのかな。
自分の立場が分かってなさそうだ。
というか、僕もスルーしすぎて、まったく気にしていなかったけど『大聖女』って、世界でただひとりの存在だぞ!!
「という事は、こんなコソコソしなくとも、アイル、君なら普通にお城に入れるんじゃ」
「あ……」
僕達は見つめ合う。
そして――、
「「「ああああああああああああ!!!」」」
叫んだ。
大きな門へ向かうと……
驚くほどあっさりと通され、お城へ入れた……。なんだ、楽勝だったんじゃないか。
「キエル、君すげぇな!!」
ラルからはそう尊敬の眼差しを向けられるけど、いやいや!! ……まあいいか、これで辺境伯を助けられそうだな。
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