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第4話 お風呂を覗いちゃった
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「ど、どうかな」
「どうかなって、さすがに無理だろ」
そうだ、小桜と一緒に風呂とか俺の身が滅びちまうよ。
「そ、そか。そうだよね……うん」
「なんで悲しそうなんだよ。あのな、いくら今日夫婦っぽくなったとはいえ、一日しか経過していないんだぞ。いきなり、風呂はレベルが高すぎる」
せめて、もうちょっと小桜のことを知ってからだ。その方が緊張も薄れるだろうし。今は、誘われただけで心臓を吐き出す領域に到達していた。
あぁ……死ぬ。
死んでしまう。
はやる心を押さえ、俺は改めて遠慮した。
「分かった。無理言ってごめんね」
「俺の方こそすまない。それじゃ、風呂をいただこうかな」
「うん、着替えとかどうする?」
「さっき、親父から着替えのセットを手渡された。親父のやつ、用意周到っていうか……準備が良すぎるよ。まさか、この事態を予知していたんじゃ」
そんなまさかとは思いたくないが、いつでも準備できるよう車の中に仕込んでいたんだろうな。
俺は着替えを持ち、風呂へ。
小桜に案内してもらい、入浴を開始した。
* * *
「――ふぅ、いい湯だった」
浴室はひとりで使うには広すぎた。
二人は余裕で入れる空間があったし、なぜかジェットバスがあった。しかも、ここは40階だから眺めが最高。夜景を見ながら、くつろげた。
金持ちの家ってすげー!
ていうか、これがもし小桜と一緒だったら……もう最高すぎて幸せだろうなあと思った。いつか……いつか一緒に入ってマッタリしてみたいな。
そんな願望を胸へ閉まって、俺は小桜とバトンタッチ。
「じゃあ、今度はわたしが行ってくるね。天満くんは、リビングで待っていて」
「ああ、うん」
俺は遠慮なく横になり、スマホをいじる姿勢に移った。あとは寝るだけだ。小桜は、女の子だから風呂も長いだろうし、俺はゲームとかネットでも見ているかな。
そうして、久しぶりに一人の時間ができた。
できたのだが、俺は気づいてしまった。
今、この瞬間にも小桜が裸になっているであろうことを。むろん、考えるつもりはなかった。なかったけど不思議なことにシャワーの音が聞こえてしまった。
ここって防音は甘いのか?
ああ、そうか。
リビングとバスルームは、それほど距離が離れていない。それに、扉が少し空いているじゃないか。
「~~~♪」
小桜の鼻歌が聞こえるし。
……ったく、扉を閉めてやるか。
わずかに開いている扉を閉めようとバスルームの前に立つ。……あれ、バスルームの扉も開いてる?
え、え、ええッ!?
ほんの数センチ開いていた。
その隙間から小桜の裸が見えそうだった――というか、ほんの少し見えていた。
「ちょ……嘘だろ!」
「……? 天満くん、そこにいるの?」
「あ、いや……。すまん、覗くつもりはなかった。ただ、扉が開いていたから閉めてやろうかと思ってな」
「天満くんの、えっち!!」
「いやだから……ごめん。俺が悪かった。この通りだから」
さすがに裸の一部を見てしまって、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「興奮、した?」
「え……」
「正直に言って欲しいな」
正直にって……そんな馬鹿正直な感想を言っていいものやら。けど、ここで嘘をついても意味はないだろう。俺は男して――天満 遙として感じた全てを小桜へ伝えた。
「……俺は、小桜に興奮した。多分、背中だと思うけど……すっげーエロかった」
「へー」
へーって!
それだけかよっ。
明らかに軽蔑しているような返答じゃん。あぁ、終わった。俺と小桜の同棲生活。短い夢だったな。
下手すりゃ警察に突き出されるのかな。で、俺の学生生活もおしまい。なんて儚い人生。でも、悔いはない。
たった一日でも小桜と過ごせた時間は、十年の重みに相当するといっても過言ではない。だから潔く立ち去ろうと――あれ?
「……小桜?」
「実はね、扉を開けるのクセなんだ。だから、いいの」
「え、そうだったのか」
「うん。ちょっと扉を開けないと怖くてさ。ほら、家って広いじゃん? だからさ、不安があるっていうのかな。でも、今は天満くんもいるから、その必要もなかったよね」
「あ、ああ。そうだよ、俺が守ってやる」
「ありがと。わたし、両親と離れてもう結構長いし、ひとりがずっと続いていたから……こうして天満くんと一緒に生活できるようになって嬉しいんだよ」
それが小桜の本意、ということか。……あぁ、馬鹿だな俺。勝手に決めつけて立ち去ろうとしていた。小桜は俺に居て欲しかったんだ。
「良かった……安心したよ。俺はてっきり嫌われちゃったかと」
「そんなことない。だって、もし嫌っていたら家すら上げないし、お風呂だってトイレだって使わせないよ。天満くんを信用しているから、扉だって開けていたの」
「そう言ってくれて嬉しいよ。それに、小桜は優しいな」
「わたし、ずっと周りが女の子ばっかりの環境だったからね~。男の子と仲良くしたいなって思っていたんだ」
「そうなのか」
聞くところによれば、小桜は小学校も中学校も女子学校だったようだ。だから、男と接する機会はほとんどなく育ってきたという。
しかし、高校になってからは共学となったようだけど。それから、ほどなくしてウチの高校へ転校してきたみたいだけど。
その理由は話してくれなかった。
「まさか同棲するだなんて思わなかったけどね。でも、天満くんで良かった」
「どうして? 俺なんかヘッポコだぞ」
「ううん、そんなことないよ。だって、普通の人は『結婚しています!』なんて言わないよ。あの一言にズキューンきちゃった」
顔を赤くする小桜。
どうやら、俺のあの一言がクリティカルヒットしたようだ。そうだな、俺にしてはありえないセリフだ。だけど、あれは危機を脱する為だったんだけどな。
思えば、なんてことを口走っていたんだ俺。
けど、そのおかげで今がある。
勇気を出して本当に良かった。
そんな他愛のない話を続け――小桜は深夜になる前に風呂から上がった。
「どうかなって、さすがに無理だろ」
そうだ、小桜と一緒に風呂とか俺の身が滅びちまうよ。
「そ、そか。そうだよね……うん」
「なんで悲しそうなんだよ。あのな、いくら今日夫婦っぽくなったとはいえ、一日しか経過していないんだぞ。いきなり、風呂はレベルが高すぎる」
せめて、もうちょっと小桜のことを知ってからだ。その方が緊張も薄れるだろうし。今は、誘われただけで心臓を吐き出す領域に到達していた。
あぁ……死ぬ。
死んでしまう。
はやる心を押さえ、俺は改めて遠慮した。
「分かった。無理言ってごめんね」
「俺の方こそすまない。それじゃ、風呂をいただこうかな」
「うん、着替えとかどうする?」
「さっき、親父から着替えのセットを手渡された。親父のやつ、用意周到っていうか……準備が良すぎるよ。まさか、この事態を予知していたんじゃ」
そんなまさかとは思いたくないが、いつでも準備できるよう車の中に仕込んでいたんだろうな。
俺は着替えを持ち、風呂へ。
小桜に案内してもらい、入浴を開始した。
* * *
「――ふぅ、いい湯だった」
浴室はひとりで使うには広すぎた。
二人は余裕で入れる空間があったし、なぜかジェットバスがあった。しかも、ここは40階だから眺めが最高。夜景を見ながら、くつろげた。
金持ちの家ってすげー!
ていうか、これがもし小桜と一緒だったら……もう最高すぎて幸せだろうなあと思った。いつか……いつか一緒に入ってマッタリしてみたいな。
そんな願望を胸へ閉まって、俺は小桜とバトンタッチ。
「じゃあ、今度はわたしが行ってくるね。天満くんは、リビングで待っていて」
「ああ、うん」
俺は遠慮なく横になり、スマホをいじる姿勢に移った。あとは寝るだけだ。小桜は、女の子だから風呂も長いだろうし、俺はゲームとかネットでも見ているかな。
そうして、久しぶりに一人の時間ができた。
できたのだが、俺は気づいてしまった。
今、この瞬間にも小桜が裸になっているであろうことを。むろん、考えるつもりはなかった。なかったけど不思議なことにシャワーの音が聞こえてしまった。
ここって防音は甘いのか?
ああ、そうか。
リビングとバスルームは、それほど距離が離れていない。それに、扉が少し空いているじゃないか。
「~~~♪」
小桜の鼻歌が聞こえるし。
……ったく、扉を閉めてやるか。
わずかに開いている扉を閉めようとバスルームの前に立つ。……あれ、バスルームの扉も開いてる?
え、え、ええッ!?
ほんの数センチ開いていた。
その隙間から小桜の裸が見えそうだった――というか、ほんの少し見えていた。
「ちょ……嘘だろ!」
「……? 天満くん、そこにいるの?」
「あ、いや……。すまん、覗くつもりはなかった。ただ、扉が開いていたから閉めてやろうかと思ってな」
「天満くんの、えっち!!」
「いやだから……ごめん。俺が悪かった。この通りだから」
さすがに裸の一部を見てしまって、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「興奮、した?」
「え……」
「正直に言って欲しいな」
正直にって……そんな馬鹿正直な感想を言っていいものやら。けど、ここで嘘をついても意味はないだろう。俺は男して――天満 遙として感じた全てを小桜へ伝えた。
「……俺は、小桜に興奮した。多分、背中だと思うけど……すっげーエロかった」
「へー」
へーって!
それだけかよっ。
明らかに軽蔑しているような返答じゃん。あぁ、終わった。俺と小桜の同棲生活。短い夢だったな。
下手すりゃ警察に突き出されるのかな。で、俺の学生生活もおしまい。なんて儚い人生。でも、悔いはない。
たった一日でも小桜と過ごせた時間は、十年の重みに相当するといっても過言ではない。だから潔く立ち去ろうと――あれ?
「……小桜?」
「実はね、扉を開けるのクセなんだ。だから、いいの」
「え、そうだったのか」
「うん。ちょっと扉を開けないと怖くてさ。ほら、家って広いじゃん? だからさ、不安があるっていうのかな。でも、今は天満くんもいるから、その必要もなかったよね」
「あ、ああ。そうだよ、俺が守ってやる」
「ありがと。わたし、両親と離れてもう結構長いし、ひとりがずっと続いていたから……こうして天満くんと一緒に生活できるようになって嬉しいんだよ」
それが小桜の本意、ということか。……あぁ、馬鹿だな俺。勝手に決めつけて立ち去ろうとしていた。小桜は俺に居て欲しかったんだ。
「良かった……安心したよ。俺はてっきり嫌われちゃったかと」
「そんなことない。だって、もし嫌っていたら家すら上げないし、お風呂だってトイレだって使わせないよ。天満くんを信用しているから、扉だって開けていたの」
「そう言ってくれて嬉しいよ。それに、小桜は優しいな」
「わたし、ずっと周りが女の子ばっかりの環境だったからね~。男の子と仲良くしたいなって思っていたんだ」
「そうなのか」
聞くところによれば、小桜は小学校も中学校も女子学校だったようだ。だから、男と接する機会はほとんどなく育ってきたという。
しかし、高校になってからは共学となったようだけど。それから、ほどなくしてウチの高校へ転校してきたみたいだけど。
その理由は話してくれなかった。
「まさか同棲するだなんて思わなかったけどね。でも、天満くんで良かった」
「どうして? 俺なんかヘッポコだぞ」
「ううん、そんなことないよ。だって、普通の人は『結婚しています!』なんて言わないよ。あの一言にズキューンきちゃった」
顔を赤くする小桜。
どうやら、俺のあの一言がクリティカルヒットしたようだ。そうだな、俺にしてはありえないセリフだ。だけど、あれは危機を脱する為だったんだけどな。
思えば、なんてことを口走っていたんだ俺。
けど、そのおかげで今がある。
勇気を出して本当に良かった。
そんな他愛のない話を続け――小桜は深夜になる前に風呂から上がった。
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