追放されしNTR勇者は辺境の地でスローライフを ~聖女と共に最強の村を作ります~

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中

文字の大きさ
57 / 58

[番外編:前編] 婚約者を寝取られた男

【シュヴァルク王国】

「勇者エルド様……どうかお願いです。フィオナを……取り戻して欲しい」

 俺の目の前で頭を下げる元貴族の男エドマンズ。
 つい最近まで伯爵の令息だったらしく、権力もあった――はずだった。

 だが、婚約者を“寝取られて”しまい、絶望。今は勘当を言い渡されて没落貴族となったという。

 俺は偶然、王国に立ち寄ったところを頼られた、というわけだ。

 俺もティアナ姫を寝取られたから、気持ちは凄くよく分かる。


「わかった。話を聞こう」
「さすがエルド様……ありがとうございます」

 何度も何度も土下座をするエドマンズ。
 そんな教祖を崇めるみたいにされると、人目に困るっていうか。

「では、エルドさん。あちらのカフェでどうですか?」

 隣で神妙な面持ちのオーロラ。
 さすがに“寝取られた”――だなんて内容は、あんまりいい気分ではないようだな。

「ああ、そうしよう。それと……」
「はい?」
「すまんな。まさか、悩み相談を受けることになるとは」
「いいんですよ。エルドさんは勇者なんですから」
「いや、俺はもう勇者ではないよ。ただのエルドさ」
「そんなことありません! わたくしだけの勇者様です!」

 自信に満ち溢れているような瞳を向けるオーロラ。そこまで言われると照れるっていうか。嬉しい。

 さっそく近場のカフェへ行き、エドマンズの話を聞いた。


「……実は、オルジスタという錬金術師の“従弟”……トランジスタという男に婚約者を寝取られたんです……」


 錬金術師オルジスタ……だと。
 その名前を聞いて俺は驚いた。
 ヤツはもういないが、従弟がいたのかよ。

 オルジスタの意思は継がず、ひっそりと王国で暮らしていたわけか。そのトランジスタがこのエドマンズの婚約者を寝取ったわけか。


「なるほど。悪は滅んでいないというわけか」
「……どうか、どうかヤツに罰を……!」


 泣きついてすがられる。
 そこまで頼られると仕方ない。
 このまま放置するなんて真似もできないし、目覚めも悪い。


「わかった。オルジスタの従弟となれば無視はできない」
「ありがとうございます……!」

「居場所は分かるか?」

「はい。彼は今、私の父……ドメニコ伯爵の邸宅を乗っ取り、悠々自適に暮らしているのです」


 マジかよ。
 よりによって、自宅まで奪われていたのか。災難すぎるぜ。

 情報を得た俺たちは、さっそくその『ドメニコ伯爵』の邸宅へ向かった。
 それにしても……乗っ取ったって、トランジスタの素行の悪さが既に露呈しているな。
 やはり、従弟といえども同じ性格なのか。


「なんだか心配です……」


 不安気にするオーロラ。
 確かにな。
 オルジスタには何度も苦しめられてきた。
 辺境の地ゼルファードも何度危ない目にあったことか。

 そんな従弟が王国から逃げ出さず、悪行を繰り返しているとは……エスカレートする前に――いや、既にしているけど、芽を摘んでおかねば。


 南西の閑静な場所に、その邸宅はあった。広大な土地の中にある巨大な建築物。もはや、お城にも匹敵する。


「ここが……」
「伯爵って凄いんですね」


 呆然となるオーロラ。俺も同じ気持ちだ。

 だが、今は建物に見とれている場合ではない。

 そのまま進むと玄関の方から人影が。

 ヤツがトランジスタか?


「……やはり来たか、エルド」


 綺麗な女性を背後に連れている若い男。オルジスタの雰囲気がそこにはあった。結構似ているな。


「お前がトランジスタか」
「そうだ。まさか、こんなにも早くここへたどり着くとはな」

「エドマンズから依頼があってな。寝取った婚約者を、邸宅を返してもらおうか」


 と、俺が要求するとトランジスタは不敵に笑う。……なんだ、コイツ。


「ふざけるな。彼女フィオナは私のものだ。身も心も全てなッ!」


 女性の方は俯き、少し辛そうにしていた。
 強引なのか、それとも自らトランジスタに抱かれたのか。真意のほどは分からない。……が、どちらにせよ、トランジスタは倒さねばならない。


「エルドさん、私はフィオナさんを助けます」
「ああ、頼む」


 トランジスタは、この国にいてはいけない男だ。
 きっと国さえも乗っ取る気でいるはず。

 鞘から聖剣アルビオンを抜き、俺は構えた。


「おい、トランジスタ。逃げるなら今だぞ」
「あまり私を舐めるなよ、エルド。私はオルジスタの馬鹿野郎と同じではない!!」


 手を向けるトランジスタ。かなりの魔力を感じるが、手から魔法らしきものは出ていない。……不発なのか?

 俺は気にせず、地面を蹴るのだが――。


「いけません、エルドさん!」


 オーロラの声が響く。


 え……



 その瞬間、目の前が真っ暗になった。



 は!?


 いや、これは!!


 地面に大穴が!


「なんだこりゃああああ! 落とし穴!?」


 気づけば俺は『落とし穴』に落ちていた。しかも、結構深いぞ。

 そして上からなにか落ちてくる。その前に俺は脱出。


「チィ! 上手く逃げたか、エルド!」
「トランジスタ、てめぇ……落とし穴スキルを使うのか!」

「そうだ。落とし穴に落とし、そして岩の魔法『ストーンヘンジ』を落とす」


 なかなか凶悪な野郎だ。

 しかも、地面は落とし穴だらけかよ。微量な魔力を感じるので分かった。
 この程度なら何とかなるな。

 ギリギリの足場を使い、俺はトランジスタに接近。


「なに!?」

「諦めろ」


 剣をトランジスタの喉元につきつけた。

 案外楽勝だったな。


「……フフフ。私の能力がこれだけだと思ったか?」
「なに?」

「錬金術師の力を見せてやろ――がはあああああああ……!?」


 なにかを言いかけたその時、トランジスタは口から大量の血を吐いていた。……何事!?


【後編へ続く】
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。