追放されしNTR勇者は辺境の地でスローライフを ~聖女と共に最強の村を作ります~

桜井正宗

文字の大きさ
5 / 56

第5話 勇者と聖女

しおりを挟む
「大変なことになりましたな、勇者エルド殿」

 危機感を露わにする村長タル。
 その表情は明らかに険しそうだった。……やはり、上級魔導士と聞いては眉間みけんしわが寄るよな。

 上級騎士でも十分ヤバいのだが、魔導士は更に桁違いの強さ。
 物理攻撃なら何とかなるが、魔法ともなると様々。
 対処するのも難しい。


「巻き込んでしまった以上、ゼルファードは俺が守ります」
「大丈夫。ここの住人は結束力が非常に高い。他の街や村にも要請をかけてみましょう」

 と、村長は柔軟に答えてくれた。
 すげえな。
 普通は恐怖して、事の発端となった俺を責めるところのはず。でも、そうはせず、むしろ味方でいてくれた。
 なんて良い村長なんだ。


「俺が言うのもなんですが、お願いします」
「いやいや、勇者エルド殿のおかげでゼルファードはあるのです。誇ってください」

「そんなことはないです。俺はまだ何もしていないので」
「いやいや! 騎士やハルネイドを対処してくれていますので」


 謙遜けんそんする必要はないと、村長は食い下がる。
 そこまで言われてはな。


「エルド様、いったんゼルファードを回ってみましょう。この村を知れば、守備もしやすくなるでしょう?」

 オーロラの言う通りだ。
 今は守りを固め、少しでも防衛力を上げるべきだ。それしかない

 村長に挨拶をして、俺とオーロラはゼルファードの全体を視察する。

 歩けば、直ぐに挨拶をしてくれる住人。みんな笑顔で優しい。野菜もくれるし、良い人ばかりだ。

「おはよう、エルド様!」「今日もいい天気だね」「王国とヤり合うって!?」「ゼルファードは屈しねえぜ」「やるってなら相手にになろう」「俺たちは何度も戦ってきているのさ」「がんばろうぜ!!」「もしければ一緒にダンジョン行こうか?」「ウチのお店にも寄ってくれ~」


 と、本当に多くの人に話しかけられた。
 とてもありがたいことだ。


「人気者ですね、エルド様!」
「そうかなあ?」
「そうですよ~」

 そや、オーロラのことをまだあまり聞いていない。
 そろそろ休憩にして、そこのベンチで軽く聞いてみるかね。

 椅子に腰かけ、オーロラも隣にやってきた。
 丁度いい。ほんの少しだけ質問をしてみるか。


「オーロラ、聞いてもいいか?」
「はい? スリーサイズ以外はなんでも答えます!」

「そんなこと聞かねえって! えっと、君はゼルファードでどうしたいんだ?」
「わたくしですか。う~ん、エルド様が幸せになってくれるのなら、なんでもいいです」

 ……俺が?
 俺が幸せになるか……それは無理かもな。
 ティアナ姫を寝取られて俺の心は今も尚、ズタズタだ。

 それとも聖女なりの優しさなのか。


「どうかな。今はこの辺境の地で必死に人々を守るくらいしかできないな」
「それでいいじゃないですか」
「え」

「だって勇者はそういうものでしょう?」


 言われてみればそうだな。
 今までも魔王の手から人々を救ってきた。
 それが今はゼルファードという土地に限定されているだけだ。今も昔も変わらないということだ。

 そうだな、王国と敵対するのはちと悲しいが、幸せを掴むためにがんばろうかな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

トカゲ令嬢とバカにされて聖女候補から外され辺境に追放されましたが、トカゲではなく龍でした。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。  リバコーン公爵家の長女ソフィアは、全貴族令嬢10人の1人の聖獣持ちに選ばれたが、その聖獣がこれまで誰も持ったことのない小さく弱々しいトカゲでしかなかった。それに比べて側室から生まれた妹は有名な聖獣スフィンクスが従魔となった。他にもグリフォンやペガサス、ワイバーンなどの実力も名声もある従魔を従える聖女がいた。リバコーン公爵家の名誉を重んじる父親は、ソフィアを正室の領地に追いやり第13王子との婚約も辞退しようとしたのだが……  王立聖女学園、そこは爵位を無視した弱肉強食の競争社会。だがどれだけ努力しようとも神の気紛れで全てが決められてしまう。まず従魔が得られるかどうかで貴族令嬢に残れるかどうかが決まってしまう。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

処理中です...