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商人連合追放
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「お前を追放する、カイン・パーシアス!!」
その言葉が心に深く突き刺さって、絶望さえした。
上手くやっていたつもりだったのに。
「……ぁ」
こんなところで俺は、また嫌な記憶をフラッシュバックしていたらしい。
この異世界マキシマイズは、アイテム取引の盛んな世界。僕はただ、そんな冒険者達の支えになれればという思いで『商人』の職業を選んだ。
だが、ある失敗が原因で僕は『帝国』の商人連合を追放された。大きな取引を失敗させてしまったんだ。
途方に暮れて『共和国』へ向かうと、そこには【アナライズ】という商人ギルドがあった。僕は夢を諦めきれずに、そこへ商人登録申請した――。
「――カイン。カイン・パーシアス様ですね。ご出身は……マテリアル帝国っと。年齢は十六歳。へぇ、お若いですね」
ギルドの受付のお姉さんは、いそいそとペンを走らせていた。僕のプロフィールを登録してくれていた。どうやら、無事に審査は通ったようで【合格】を貰った。公認をこうもアッサリ貰えるとは。商人の経験ありが寄与したか。
「それで、僕はどうすればいい?」
「そうですね、まずは『商人』として頑張って戴くのですが……あなた様はもう立派な『商人』のようですね」
職業だけは固定されていた。
商人連合を追放されたからと言って、職業までは消えるわけではない。職業の管理自体は“世界ギルド”が行っているから共通なのだ。
「じゃあ、共和国で商売すればいいかな?」
「このような事例はない為……しょ、少々お待ち下さい」
ギルドの受付のお姉さんは慌しく、奥へと消えた。……マジか。まさか、前例がないとはな。困惑していると、奥からお偉いさんらしき人物が姿を現した。
「お待たせしました。私はこの商人ギルドのマスターであります『オーティス』です。あなたがカインくんですかな」
二十代後半の爽やかな笑みの男性が現れ、そう名乗った。このギルドのマスターか。
「そ、そうですけど……やっぱり問題あります?」
「いや、そうでもないのです。あなたは帝国からわざわざこの共和国の商人ギルドを選ばれたのですね。商人連合は……」
「追放されました」
「そのような深いご事情が。ですが、私どもは歓迎します。商人は貴重な存在であり、冒険者を支える要。我々の支えがあってこそ冒険者様はダンジョン攻略に励める。それが真理。しかし、この頃はダンジョン内での略奪事件が多発しており、非常に危惧しています。よくお客様は神様と申しますが、それは真逆。こちらが神なのです」
な、なんだこの人。
凄いことを口走るな。
商人が神か。
面白いじゃないか。
「僕はどうすれば?」
「あなたから何やら才能を感じます。帝国の商人連合は見る目がないようだ。だが、私の心眼は間違いないと訴えかけている。あなたは『店長』の器に相応しい」
「ぼ、僕が『店長』だって?」
「ええ、特別に『ダンジョン露店』ライセンスを差し上げます。これがあると、通常では出来ないダンジョンでの露店が開けるんです」
「ダ、ダンジョンで露店って、そりゃ出世コースじゃないか!」
「その通り。ダンジョンを征する商人こそ、真の豪商と成りえる。カインくん、君からはそんな可能性を感じるんです」
「で、ですが」
「心配ご無用。自分で言うのもアレですが……私は昔から、洞察力があるといいますか、つまり、人を見る目があるんですよ。だから、ここまで成り上がった」
説得力があるなと僕は思った。
そうだな、マスターである彼がそう言うんだ。彼の言葉を信じてみよう。それに、僕は夢だった『店長』をやってみたかった。
「やります! 僕、店長をやります!」
「良い返事です。では、今日からカイン、あなたは『店長』です。よろしくお願いしますね」
握手を交わし、ここに契約は完了した。
僕は『店長』になった。
その言葉が心に深く突き刺さって、絶望さえした。
上手くやっていたつもりだったのに。
「……ぁ」
こんなところで俺は、また嫌な記憶をフラッシュバックしていたらしい。
この異世界マキシマイズは、アイテム取引の盛んな世界。僕はただ、そんな冒険者達の支えになれればという思いで『商人』の職業を選んだ。
だが、ある失敗が原因で僕は『帝国』の商人連合を追放された。大きな取引を失敗させてしまったんだ。
途方に暮れて『共和国』へ向かうと、そこには【アナライズ】という商人ギルドがあった。僕は夢を諦めきれずに、そこへ商人登録申請した――。
「――カイン。カイン・パーシアス様ですね。ご出身は……マテリアル帝国っと。年齢は十六歳。へぇ、お若いですね」
ギルドの受付のお姉さんは、いそいそとペンを走らせていた。僕のプロフィールを登録してくれていた。どうやら、無事に審査は通ったようで【合格】を貰った。公認をこうもアッサリ貰えるとは。商人の経験ありが寄与したか。
「それで、僕はどうすればいい?」
「そうですね、まずは『商人』として頑張って戴くのですが……あなた様はもう立派な『商人』のようですね」
職業だけは固定されていた。
商人連合を追放されたからと言って、職業までは消えるわけではない。職業の管理自体は“世界ギルド”が行っているから共通なのだ。
「じゃあ、共和国で商売すればいいかな?」
「このような事例はない為……しょ、少々お待ち下さい」
ギルドの受付のお姉さんは慌しく、奥へと消えた。……マジか。まさか、前例がないとはな。困惑していると、奥からお偉いさんらしき人物が姿を現した。
「お待たせしました。私はこの商人ギルドのマスターであります『オーティス』です。あなたがカインくんですかな」
二十代後半の爽やかな笑みの男性が現れ、そう名乗った。このギルドのマスターか。
「そ、そうですけど……やっぱり問題あります?」
「いや、そうでもないのです。あなたは帝国からわざわざこの共和国の商人ギルドを選ばれたのですね。商人連合は……」
「追放されました」
「そのような深いご事情が。ですが、私どもは歓迎します。商人は貴重な存在であり、冒険者を支える要。我々の支えがあってこそ冒険者様はダンジョン攻略に励める。それが真理。しかし、この頃はダンジョン内での略奪事件が多発しており、非常に危惧しています。よくお客様は神様と申しますが、それは真逆。こちらが神なのです」
な、なんだこの人。
凄いことを口走るな。
商人が神か。
面白いじゃないか。
「僕はどうすれば?」
「あなたから何やら才能を感じます。帝国の商人連合は見る目がないようだ。だが、私の心眼は間違いないと訴えかけている。あなたは『店長』の器に相応しい」
「ぼ、僕が『店長』だって?」
「ええ、特別に『ダンジョン露店』ライセンスを差し上げます。これがあると、通常では出来ないダンジョンでの露店が開けるんです」
「ダ、ダンジョンで露店って、そりゃ出世コースじゃないか!」
「その通り。ダンジョンを征する商人こそ、真の豪商と成りえる。カインくん、君からはそんな可能性を感じるんです」
「で、ですが」
「心配ご無用。自分で言うのもアレですが……私は昔から、洞察力があるといいますか、つまり、人を見る目があるんですよ。だから、ここまで成り上がった」
説得力があるなと僕は思った。
そうだな、マスターである彼がそう言うんだ。彼の言葉を信じてみよう。それに、僕は夢だった『店長』をやってみたかった。
「やります! 僕、店長をやります!」
「良い返事です。では、今日からカイン、あなたは『店長』です。よろしくお願いしますね」
握手を交わし、ここに契約は完了した。
僕は『店長』になった。
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