異世界で勇者をすることとなったが、僕だけ何も与えられなかった

31話 帰宅

試し打ちを終えると、帰宅した。
帰宅した僕の部屋の前にある男が鎮座している。
「おかえり」
彼はそういうと、立ち上がり、僕を睨んできた。
何事だ。僕が何をしたというのだ。
「結城、君はよくも姫様と二人っきりにしてくれたな…面倒くさいことを押し付けた上、変な噂が立ってしまったではないか」
目の前の男は僕がイケメンと呼んでいる同級生の男。
勇者一行のパーティー内ではリーダー的役割をしている。
「めんどくさいことだったから押し付けたんだよ。それに変な噂って？」
変な噂が今日の出来事で生まれたのか、彼は一体何をしでかしたといのか。興味がある。
「食堂内で姫様と話しているのを見られてな。それで王の後継者を狙っているのではないかという噂が出てきたんだ」
「今日の今日でか？　それは早い噂だな。でもそうい噂が立つということは仲良くしていたと見受けられる。姫様を狙ってたんじゃ…」
「狙ってない！　俺は王になりたいわけでもないし、ロリコンでもない！！　俺はもっと大人っぽい女性の方が好みなんだ！！！」
と僕の部屋の前で大きな声を出し、自分の好みを教えてくるイケメン男子。
この顔なら後輩から先輩まで選びたい放題だろう。年上の相手もすぐできるだろうし。もしかするともういるのかもしれないな相手が。
そんな彼が、ロリコン疑惑をかけられていることに腹を立てているようだ。確かにそんな噂が広がれば、誤解されること間違いない。

「それはすまないことをしたな。ごめん」
「分かってくれたか」
「あぁ、じゃ、部屋に入れてくれ」
「ダメだ。今日は噂を払拭するまで付き合ってもらうぞ、結城」
「え、噂を払拭って何？　どうするつもり？？」
「それを考えるんだ。朝まで付き合ってもらうぞ」
とイケメンは言う。
おいおい。まじか。こいつ僕を寝かせないつもりか！
銃の試し打ちで疲れているというのに…勘弁してくれ。
イケメンは僕の手首をがっしりと掴む。そして、強引に連れていこうとする。
「おいおい、どこ行くんだよ！」
「俺の部屋だ。噂を払拭するための話し合いだ」
待て待て、それじゃあ、別の誤解が生まれちまうじゃねぇか。男同士で部屋で朝まで…って腐った女子が好みそうなことに巻き込まないでくれ…
「助けてくれ…誰か……」
僕の声は空しく、だれも助けには来てくれなかった。
「さぁ、俺のために力をかすんだ」
誰かこいつを助けてやってくれ…僕も一緒に。
部屋の前まで引きずられてきた僕は、イケメンの部屋の前で女の子がいるのを見てしまった。
それも同級生の女の子だ。クラスメイトで勇者一行の一人だ
「あ、戻ってきた」
「ん？　何かようか？　翔子（しょうこ）」
「いや、遊ぼうと思ってきたんだけど…なんで南？　を連れてるの？」
気軽に女子が遊びに来るのか部屋に、しかももう夜と言ってもいい時間帯ではないか。まことにけしからんぞ。うらやましい。
翔子と呼ばれた女子が僕のことを不思議そうに見ている。あまり女子に見られたことないので少し緊張してくる。
「あぁ、結城には責任を取ってもらうからな部屋に連れてきた。今日は結城と朝までやることがあるから帰ってくれないか？」
「あ、うん。わかった…え、責任…朝まで…」
「お、おい」
イケメンはそういうと僕を部屋に押し込み、部屋のドアを閉じた。廊下に翔子という女子を残して…
彼女は「え、」といって戸惑っていたように見えた。完全に誤解されるような言い方をしやがって！　このイケメン！！　ゆるすまじ。
「さぁ、好きな所に座ってくれ」
まったく気にしていない様子のイケメン。こいつは鈍感系主人公ですか？　と言いたくなる。
「お前、またいらん噂が流れるぞ」
「ん？　何のことだ」
「明日を楽しみにしていろ…」
僕は地獄だが…
忠告だけしておくことにした。
被害は僕が一番大きそうだ。と心の中で思うのだった。