異世界で勇者をすることとなったが、僕だけ何も与えられなかった

晴樹

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83話 ジークムント2

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食堂を後にして、イケメンの部屋を訪ねた。
コンコンッと部屋の扉をノックする。
中からゴソゴソと物音がした後、扉を開けてイケメンが顔を出した。
「はい、何でしょうか?」
と礼儀正しく返事をしこちらを見るイケメン。そして、僕と笠井さんの顔を見て、仲間の見知った人物だと分かると安心したように「なんだよ~」と気を抜いた声を出した。
どうやら、城の偉いさんの誰かだと思ったらしい。
「まぁ、入れよ」
イケメンは僕らを自らの部屋へ招き入れてくれた。
僕は遠慮なく部屋の中に入っていく。

「それにしても2人が一緒だなんて、珍しいじゃないか?」
と問いかけてくる。
確かに僕が八雲以外と一緒だなんて珍しい事この上ない。
今はそんな事どうでもいい。
「そんなことよりもだ、今日は聞きたい事があってきたんだ」
「聞きたいこと?なんだい」
「それは……」
と僕が言いかけた時だった。
なぜかいつもは騒がしい筈なのに、静かだった笠井さんが口を開く。
「実はね、健! 私たち元のせか……んー」
僕は気づいて、笠井さんの口を塞いだ。この女いきなり秘密をバラそうとしたのだ。とんでもない事をする。
なんか嫌な予感がしていたが、案の定あっていた。
口を塞がれてもごもご言う彼女を引きずりながら、部屋の外に出た。

そこで口を塞いでいたのをやめて、解放する。
「な、何すんのよ」
それはこっちのセリフである。
「今何話そうとした?」
「もちろん元の世界に帰るゲートがあるかもって事に決まってるでしょ」
悪びれるそぶりも秘密を秘密と思っていない事を平然と告白する。
ゲート探しの仲間にしたのはまずかったかなと後悔の念が湧いてくる。
ため息まじりに言葉を返す。
「君はバカなのか?」
普段言われる立場の自分がこんな事を言う時が来るとは、下には下がいるものだ。(普段僕の事をバカにして来るのは、当然八雲)
「どうして、バカなのかなんて言われなくちゃいけないの? どう考えたっていい事を伝えるのは間違ってないでしょ! みんな帰りたがってる。1番に健に教えてあげたいの!」
確かにその言い分はわかる。でもそれは、ぬか喜びになる可能性もあるのだ。
「それはやめたほうがいいよ」
「どうして! 健だったら協力してくれるわよ? それの何がダメなの?」
「これ以上、彼を疲れさせたいの? 今までみんなのために頑張ってリーダーをしてくれている彼に、さらにゲートを探す仕事を押し付けてしまう事になる。ゲートを探すのは、僕たちだけでするべきだ」
「で、でも……元の世界に帰れるかもって事くらいは伝えてもいいでしょ?」
「それはもっと危険だ。ぬか喜びになるかもしれない。いつ見つかるかもわからないし、あるかも正確に分かってない今は伝えるべきではない」
「……そうなの?」
「これは僕たちが見つけて、帰れる見積もりが取れた段階で教えてあげるのが一番いいはずだよ。だから、見つけよう僕らで」
「そっか……ならそうする。ごめんね南」
分かってくれたようで安心です。
さて、部屋に戻るとするか、どう説明したのもか。言い訳を考えなくてはならんな。
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