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第六十六話 涙の理由
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「どうして泣いてるの」
さっきから見ているだけだった妹が口を開いた。それは泣いている一馬くんのことが心配だからだ。
そんな一馬くんは妹のその問いかけに涙を流しながら答えた。
「僕は、ただ千穂ちゃんとなら友達になりたいと思っただけなんだ。なのに千穂ちゃんに迷惑をかけていたなんて知らなかったんだ」
これは一馬くんの本心だった。
それを聞いた妹が口を開いて喋ろうとした時、それよりも先に一馬くんが妹に謝った。
「ごめんなさい」
一馬くんは床に額を擦り付けて、全力で土下座した。
なんて、男らしいんだ。
僕は一馬くんを見てそう思った。
そして、一馬くんに謝られた妹が口を開く。
「どうして…」
一馬くんは顔を上げて妹の方を見る。
「どうして、私となんかと友達になりたいと思ったの?」
それは、妹が一馬くんに抱いた疑問だった。僕は、最初に妹から話を聞いた時、一馬くんは下心があって妹に近づいているんだと思っていた。しかし、今は一馬くんが女の子であったという事実を知ったことでその考えが間違いであったというのがわかった。
「それは…僕に対して下心がなかったから」
一馬くんは小さな声でそう言った。
「下心がなかったってどういうことだ?」
部外者である僕が妹の代わりに聞いた。
「千穂ちゃん以外の女の子は、僕に対してはみんな下心が丸出しなんです。でも千穂ちゃんは、僕に対しても普通に接してくれたんです。だから、千穂ちゃんなら本当のお友達になってくれるんじゃないかって思って僕から近づいたんです」
と一馬くんは話してくれた。僕は思った、ただ単に妹の好みでなかったから、下心がなかったのでは、と。
そんなことは口が裂けても言えないので、僕は口のチャックを閉める。
しかし、一馬くんの本心を聞いた妹は、口を開いてこう言った。
「一馬くんは考えすぎだと思う。みんながみんな一馬くんに下心を持っているわけではないから、私を特別視するのは間違いだと思う」
妹は一馬くんに対して今までで1番冷たい言い方をする。一馬くんはそれを聞いて、少し悲しそうな顔をした。
そんな姿を見ていた僕は妹が言うことは分からなくもないけれど、さすがにバッサリ言い過ぎではないかと思った。それじゃあ、一馬くんが可哀想だ。
「それでも、私と友達になりたいと思うのなら、考えなくてもないけど…」
と妹は一馬くんに言った。
その言葉を聞いた一馬くんは、ぱあっと明るくなり、そして…
「もちろん、僕千穂ちゃんと友達になりたい!」
「じゃあ、仕方ないな」
「うん!」
一馬くんは涙を拭いながら、笑顔なる。そして、立ち上がり、妹に抱きついた。
それほど嬉しかったんだろう。
妹はと言うと、一馬くんに抱きつかれて焦っていた。これは予想外だったらしい。頬を赤く染めて「やめろ~、抱きつくな~」といいながらこれ以上寄ってくるな、と一馬くんの肩に手を置いていた。それでも、その手には力があまり入っていない様子だった。
そこまで嫌じゃないのかもしれない。今度、僕もやってみようかなと考えながら、2人を微笑ましく見ていた。
さっきから見ているだけだった妹が口を開いた。それは泣いている一馬くんのことが心配だからだ。
そんな一馬くんは妹のその問いかけに涙を流しながら答えた。
「僕は、ただ千穂ちゃんとなら友達になりたいと思っただけなんだ。なのに千穂ちゃんに迷惑をかけていたなんて知らなかったんだ」
これは一馬くんの本心だった。
それを聞いた妹が口を開いて喋ろうとした時、それよりも先に一馬くんが妹に謝った。
「ごめんなさい」
一馬くんは床に額を擦り付けて、全力で土下座した。
なんて、男らしいんだ。
僕は一馬くんを見てそう思った。
そして、一馬くんに謝られた妹が口を開く。
「どうして…」
一馬くんは顔を上げて妹の方を見る。
「どうして、私となんかと友達になりたいと思ったの?」
それは、妹が一馬くんに抱いた疑問だった。僕は、最初に妹から話を聞いた時、一馬くんは下心があって妹に近づいているんだと思っていた。しかし、今は一馬くんが女の子であったという事実を知ったことでその考えが間違いであったというのがわかった。
「それは…僕に対して下心がなかったから」
一馬くんは小さな声でそう言った。
「下心がなかったってどういうことだ?」
部外者である僕が妹の代わりに聞いた。
「千穂ちゃん以外の女の子は、僕に対してはみんな下心が丸出しなんです。でも千穂ちゃんは、僕に対しても普通に接してくれたんです。だから、千穂ちゃんなら本当のお友達になってくれるんじゃないかって思って僕から近づいたんです」
と一馬くんは話してくれた。僕は思った、ただ単に妹の好みでなかったから、下心がなかったのでは、と。
そんなことは口が裂けても言えないので、僕は口のチャックを閉める。
しかし、一馬くんの本心を聞いた妹は、口を開いてこう言った。
「一馬くんは考えすぎだと思う。みんながみんな一馬くんに下心を持っているわけではないから、私を特別視するのは間違いだと思う」
妹は一馬くんに対して今までで1番冷たい言い方をする。一馬くんはそれを聞いて、少し悲しそうな顔をした。
そんな姿を見ていた僕は妹が言うことは分からなくもないけれど、さすがにバッサリ言い過ぎではないかと思った。それじゃあ、一馬くんが可哀想だ。
「それでも、私と友達になりたいと思うのなら、考えなくてもないけど…」
と妹は一馬くんに言った。
その言葉を聞いた一馬くんは、ぱあっと明るくなり、そして…
「もちろん、僕千穂ちゃんと友達になりたい!」
「じゃあ、仕方ないな」
「うん!」
一馬くんは涙を拭いながら、笑顔なる。そして、立ち上がり、妹に抱きついた。
それほど嬉しかったんだろう。
妹はと言うと、一馬くんに抱きつかれて焦っていた。これは予想外だったらしい。頬を赤く染めて「やめろ~、抱きつくな~」といいながらこれ以上寄ってくるな、と一馬くんの肩に手を置いていた。それでも、その手には力があまり入っていない様子だった。
そこまで嫌じゃないのかもしれない。今度、僕もやってみようかなと考えながら、2人を微笑ましく見ていた。
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