in fool

ミルクEX

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 高熱に苦しみながら少女は一人布団の中で眠る。
 吐き出す息は荒く、汗で衣服は湿っている。
 薬も飲んだし寝て起きたら少しはマシにっているだろう。



 体が幾らか軽くなっているのに気づき、少女は体を起こす。
 目を開けるとそこは洞窟のような場所だった。だが自室の布団に入っていたのに洞窟の中にいるなんてことは有り得ない。すぐに夢の中だと思い至り、頬をつねる。
「……なんで痛いの」
 お決まりの方法で夢か確認すると、痛みを感じた。状況が理解できない症状。
「寒い……」
 薄手のパジャマだけでは寒いのは当たり前だ。しかし、夢の中ならそんなことは感じないだろう。
 そこで一つの結論を出す。これは高熱によって見てる幻覚に過ぎないのだと。
 ならば変なことをせずに、じっとしているのが吉だ。下手に動いて怪我をしたら大変だ。
「いやいや、幻覚だと思っているのかもしれないけどそれは違うよ」
 後ろから金属を擦ったような声がしたので振り返る。そこには、蛸のような変な生物がいた。
「ここは夢の中。ただし出口に行かなければ永遠に覚めない夢だ」
 緑の蛸は出口まで連れて言ってあげようと言う。しかし、それを少女は断った。借りを作りたくないのと、自力で出来ると思ったからだ。
「そうかい、じゃあ頑張ってくれ。この道を真っ直ぐ行けばいずれ出口にたどり着くよ」



 あれからどれ位歩き続けるけただろう。道中たくさんの生き物にあった。どの生き物も変てこな外見をしていたが優しく少女に力を貸そうと申し出た。しかし、少女は一度も手を借りることはなく自力で出口までたどり着いた。 
〝終幕の部屋〟と書かれた部屋に入る。
 ぺたぺたと足音だけが響く。
 部屋の中央まで来たところで少女の視界は途切れた。



「――――いずれ出口にたどり着くよ」
 少女が目を開けると目の前には緑の蛸がいた。
 ゾクッと全身を死の恐怖が包み込む。体が喰いちぎられる錯覚に見舞われたのだ。
 蛸はいつまでも動かない少女を訝しみ、声をかける。
 少女はゆっくりと顔を上げ声を振り絞る。
「ねえ、〝終幕の部屋〟には何がいるの?」
 蛸は驚いたようだったが、触手を一度振りゆっくりと話し始めた。
 中には何かがいる。それは何かはわからないが、入ったものを食べてしまう。しかし、2人以上で入るとどちらかは助かるとのこと。ここの生き物が助かれば一緒に入った人間として現実で生きる。人間が助かれば現実に戻る。
「じゃあこれを踏まえた上で答えてくれ。もう一度提案しよう、出口まで連れて行ってあげよう」



 〝終幕の部屋〟に再びたどり着いた。 
 中に入り、出口を目指して歩み始める。
 部屋の中央にたどり着いた瞬間、上から蛇のような生き物が降ってきた。

「生贄はどちらだ?」
 蛇は問う。
「私です」
 蛸は答えた。
  
 少女の息が止まる。
 真横にいたはずの蛸は一瞬でいなくなっていた。
 蛇は食事が終わると上に去っていった。
 出口まであと数メートル。だけど、少女は歩み始めることが出来なかった。
 道中、他の生き物から貰ったナイフで自分の首を掻っ切る。
 


 目を開けると蛸が目の前にいた。
 ああ、馬鹿だ。あのまま逃げてしまえば良かったのだ。そうすればすべて終わった。
 だけどあのまま終わりたくないと少女は思った。例え馬鹿だと言われても、この夢にいる奴らは愚者ばかりだ。なら、愚者でもいいから友を犠牲して自分だけ助かるなんてことは認めない。例え何度やり直そうと犠牲なしで出口にたどり着いてみせる。
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