狩人の徒然日常

ミルクEX

文字の大きさ
1 / 3

一、狩人

しおりを挟む
 扉を開けて家に入る。
 今日の狩りは終わりだ。
 取ってきた木の実だの、動物の肉だのを片付けていく。  
 整理整頓だけはしておくよう、常日頃から気をつけている。周りの狩人には可笑しな奴だと言われるが、どうも散らかってるのは落ち着かない。
 そもそも周りの奴は整頓をしないから、折角取ってきたものが使い物にならなくなった、なんて事が多いのだ。
 具体的には木の実がモンスターの牙で潰れている等だ。
 木の実と生肉の混ざった臭いを漂わせながら酒場に来るのだけはやめて欲しい。あの匂いが本当にダメなのだ。
 折角の飯が喉を通らなくなる。こちとら、少ない金を叩いて外食をしているのだ。
「あーあ、これももうダメかー」
 自分の剣を鞘から出して刃こぼれを確認して見れば、酷い有様だった。
 ガタガタのボロボロ。最近は硬いやつを相手にしていたのだから、仕方ないといえば仕方ないが、この剣は金貨三枚もしたのだ。金貨三枚あったら一ヶ月近くは生活できるぞ。
 まあ、余分に金があったら欲しいものを買ってすぐに無くなりそうだが。
 とりあえず悩んでも仕方が無いので、片付けが終わったら新しい剣を見に行こう。こういう緊急用の金はきちんと貯金をしてあるから困ることは無い。
「ロン様、シーニャです。家賃の受け取りに参りました。ご在宅ですか?」
 外から大家さんの声がする。
「はーい、すぐ行きまーす」
 ベッドの下の鍵が掛けられた箱から袋を取り出し、小走りで玄関に向かう。 
 扉を開けると、大家さんがこちらを見上げるように立っていた。
 この大家さんは前の大家さんの孫で一五歳と俺よりも五つ程若い。
「あ、良かったです。えと、銀貨二枚です」
 二ヶ月経った今でも緊張しているのか、表情が強ばっている。
 綺麗な茶髪から覗く紫の瞳は少しだけ揺れていた。
 なんだか脅かしてるみたいで申し訳なくなり、すぐに銀貨二枚を渡す。
「はい、たしかに受け取りました。ありがとうございます。それでは失礼――みゅう!」
 急いで出ていこうとして、後ろにいた人に思い切りぶつかる。
 後ろで縛った髪がひゅっと跳ね上がり、本人は耐えようとしたものの努力虚しくバランスを崩し尻待ちを着く。
「す、すいません! すいません! ごめんなさい!」
 大家さんはぺこりぺこりと座ったまま頭を下げる。
 それを見下ろしているのは顔に傷のある、筋骨隆々の髭の生えたオッサンだった。
「大家さん、走ったら危ないですよ。気を付けてくださいね。婆さんに怒られちまいますから」
 オッサンは大家さんを起こして俺の方を向く。
 このオッサンは鍛冶屋で腕は国の中でも有数の実力を誇る。ただ、騎士などのお偉いさんが苦手でこんな辺境の村で狩人相手に商売してる変人だ。
 まあ、いい人なのは確かだ。
 「よぉ、ロン。狩りは終わったみたいだな」
 こいつとなんか約束をしていただろうかと首を傾げる。
「ああ、今日はもう終わりだ。アルバからここに来る何て珍しいな」
 こちらも用事があったので都合はいいのだが。
 ただ、家賃を払ったので金があまり無い。緊急用などと言いつつ家賃に使うあたり反省せねばなるまい。
 まあとりあえずはこちらの用よりアルバの用事を先に聞こう。
「ああ、この前お前の剣を見た時、刃こぼれが酷かったからな。そろそろ研ぐなり変えるなりするだろうと思って意見を聞きに来たんだ」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...