13 / 103
10.カロリナ、魔物(盗賊)を退治する。
しおりを挟む
カロリナを抱いたままで影は林の中を高速で移動してきた。
しかし、声の主らしいものが見当たらない。
影はちょっと焦った。
それで勢い余って盗賊達を飛び越してしまったのだ。
『いた』
可愛い声の主はカロリナだ。
裏道が谷間のように窪んでおり、その上空を無防備な姿を晒した。
猿も木から落ちる。
影も油断していた。
まさか、王都内で敵がいるとは考えていなかった。
盗賊に勝機があったなら、この瞬間だけであった。
完全な無防備で上空を通過した影は文字通り、カロリナとエルを両脇に抱えて脇が甘くなっていた。
大失態である。
ただ、影以上に盗賊達も油断していた。
土手に着地するのを許すと、二人を降ろして影は戦闘体勢を取った。
カロリナは倒れている商人風の男と傷ついた子供を見つけ、ローブを脱ぎ去って盗賊達を指差した。
「貴方達が盗賊という魔物ね!」
盗賊達は魔物にされた。
今日の目的は魔物退治だ。
カロリナが魔物と決めれば、彼らは魔物なのだ。
「剣の錆にしてくれるわ」
「カロリナ様、最初の魔物討伐は魔法でしましょう」
「そうです、お嬢様。お嬢様の剣を使うまでありません」
「そ、そう、そうだわね。判ったわ」
カロリナは素直に応じる。
この急斜面の土手を下りるのが怖かった。
そう言ってくれてよかったと胸を撫でおろした。
「て、てめいら何者だ!」
「魔物に名乗る名前などないわ」
「糞チビが! チビが何人出てこようと怖くないわ」
カロリナもエルも小さい。
さらに護衛の影も少女にしか見えない。
盗賊の頭がそう思うのが仕方ない。
「最近の魔物は言葉をしゃべるのですね。アンブラ、やってしまいなさい」
「はい、お嬢様」
カロリナは盗賊の頭と思われる者に杖を翳し詠唱を始めた。
盗賊の頭も身を構えた。
だが、焦ることはない。
少女と子供二人が増えただけだ。
盗賊の頭は冷静だった。
虎を猫と間違っていなければ!
影をタダの少女ではない。
影はあの『森の悪魔』と呼ばれるラーコーツィ族であった。
敵兵100人を相手に一人で全滅させることができる妖精種は初代王から褒められて侯爵の地位を授かった。
ラーコーツィ家の当主には盟約によってラーコーツィ族の幼子が貸して貰える。
この『森の悪魔』を相手に冒険者崩れの盗賊6人では勝負にならない。
ずぽぉ、ずぽぉ、ずぽぉ、ずぽぉ、ずぽぉ、首が狩られて綺麗な大噴水が広がった。
電光石火の早業であった。
まるで5人の影が一瞬で首を狩ったように見えた。
「何だと!」
おいおいおい、何が起こった?
盗賊の頭は流石に焦った。
しかし、カロリナが詠唱を見過ごすべきではない。
『ファイラー!』
ぶべべべべべぇ、影に気を取られたことが最悪の結果となった。
紅蓮の炎が盗賊の頭を包み込む。
ファイラーフレア並の炎柱が撒き上がる。
商人も子供達も目を見張る。
子供の魔法と思って油断し、腕に付けている小盾で受けたのが敗因だ。
初級魔法ならそれが常套手段で決して間違った対応ではない。
しかし、カロリナの魔法は大人顔負けの威力がある。
盗賊の頭は対魔法用のチャフ(囮)を出して逃げるべきであった。
頑丈な皮を持つオークにも通用すると教師もお墨付きをくれている魔法を小盾で受ければ、消し炭になって当然であった。
「流石、お嬢様。魔法は天下一です。凄いです」
「当然よ」
エルがカロリナを褒め讃える。
お父様もカロリナは魔法の天才と褒めてくれている。
カロリナの鼻が高くなるのも当然であった。
魔物を退治できて大満足なカロリナであった。
しかし、声の主らしいものが見当たらない。
影はちょっと焦った。
それで勢い余って盗賊達を飛び越してしまったのだ。
『いた』
可愛い声の主はカロリナだ。
裏道が谷間のように窪んでおり、その上空を無防備な姿を晒した。
猿も木から落ちる。
影も油断していた。
まさか、王都内で敵がいるとは考えていなかった。
盗賊に勝機があったなら、この瞬間だけであった。
完全な無防備で上空を通過した影は文字通り、カロリナとエルを両脇に抱えて脇が甘くなっていた。
大失態である。
ただ、影以上に盗賊達も油断していた。
土手に着地するのを許すと、二人を降ろして影は戦闘体勢を取った。
カロリナは倒れている商人風の男と傷ついた子供を見つけ、ローブを脱ぎ去って盗賊達を指差した。
「貴方達が盗賊という魔物ね!」
盗賊達は魔物にされた。
今日の目的は魔物退治だ。
カロリナが魔物と決めれば、彼らは魔物なのだ。
「剣の錆にしてくれるわ」
「カロリナ様、最初の魔物討伐は魔法でしましょう」
「そうです、お嬢様。お嬢様の剣を使うまでありません」
「そ、そう、そうだわね。判ったわ」
カロリナは素直に応じる。
この急斜面の土手を下りるのが怖かった。
そう言ってくれてよかったと胸を撫でおろした。
「て、てめいら何者だ!」
「魔物に名乗る名前などないわ」
「糞チビが! チビが何人出てこようと怖くないわ」
カロリナもエルも小さい。
さらに護衛の影も少女にしか見えない。
盗賊の頭がそう思うのが仕方ない。
「最近の魔物は言葉をしゃべるのですね。アンブラ、やってしまいなさい」
「はい、お嬢様」
カロリナは盗賊の頭と思われる者に杖を翳し詠唱を始めた。
盗賊の頭も身を構えた。
だが、焦ることはない。
少女と子供二人が増えただけだ。
盗賊の頭は冷静だった。
虎を猫と間違っていなければ!
影をタダの少女ではない。
影はあの『森の悪魔』と呼ばれるラーコーツィ族であった。
敵兵100人を相手に一人で全滅させることができる妖精種は初代王から褒められて侯爵の地位を授かった。
ラーコーツィ家の当主には盟約によってラーコーツィ族の幼子が貸して貰える。
この『森の悪魔』を相手に冒険者崩れの盗賊6人では勝負にならない。
ずぽぉ、ずぽぉ、ずぽぉ、ずぽぉ、ずぽぉ、首が狩られて綺麗な大噴水が広がった。
電光石火の早業であった。
まるで5人の影が一瞬で首を狩ったように見えた。
「何だと!」
おいおいおい、何が起こった?
盗賊の頭は流石に焦った。
しかし、カロリナが詠唱を見過ごすべきではない。
『ファイラー!』
ぶべべべべべぇ、影に気を取られたことが最悪の結果となった。
紅蓮の炎が盗賊の頭を包み込む。
ファイラーフレア並の炎柱が撒き上がる。
商人も子供達も目を見張る。
子供の魔法と思って油断し、腕に付けている小盾で受けたのが敗因だ。
初級魔法ならそれが常套手段で決して間違った対応ではない。
しかし、カロリナの魔法は大人顔負けの威力がある。
盗賊の頭は対魔法用のチャフ(囮)を出して逃げるべきであった。
頑丈な皮を持つオークにも通用すると教師もお墨付きをくれている魔法を小盾で受ければ、消し炭になって当然であった。
「流石、お嬢様。魔法は天下一です。凄いです」
「当然よ」
エルがカロリナを褒め讃える。
お父様もカロリナは魔法の天才と褒めてくれている。
カロリナの鼻が高くなるのも当然であった。
魔物を退治できて大満足なカロリナであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる