刺殺からはじまる侯爵令嬢、カロリナだってがんばります!

牛一/冬星明

文字の大きさ
82 / 103

69.カロリナ、歓迎を受ける!

しおりを挟む
カロリナが責任を感じで引き篭もった。
心の傷を受けて、誰にも会わないようになった。
その療養の為に自領に戻って治療に専念する。
一方、エリザベートも宝物庫に入ると突然に倒れた。
呪いとしか思えない原因不明の奇病で療養することになった。
こうして二人の少女が王都から消えた。
そう王宮は公式に発表された。

「領城の探検も飽きました。もういいでしょう!」
「お嬢様、ラーコーツィ領都は王都からの商人や中央領の貴族もやってきます。元気に食べ歩きなどされて困ります」
「変装すれば、大丈夫よ」
「絶対にばれますから駄目です」
「エルのいじわる」
「御自覚下さい」

あの日を境に王都ではカロリナの黒い噂が蔓延している。
奇怪な殺人事件はすべてカロリナがやった。
南の冒険者の町でもオークを呼んだのは力を見せつける為にカロリナ達の自作自演と噂されている。
そんなことになっていると王都から帰ってきたラファウが報告する。
カロリナは淡々と食事を進める。
冒険者のニナが怒っている。

「カロリナ様がそんなことをする訳がありません」
「誰だよ、北の子爵様の毒殺事件までカロリナ様がやったと言う奴は!」
「ホントです」
「怪しい事件や不可解な死因はすべてカロリナ様がやったとかおかしいぜ」
「悪意を感じる」
「誰かが意図的に流しているのでしょうね!」
「誰ですか?」
「知らない」
「ラファウ様は御存じなのでしょうか?」
「いいえ、知りません」
「でも、レフさんよりラファウ様は随分と詳しいのです?」

ニアの友人ジクが最初に同意し、冒険者仲間も一緒に批判する。
裁縫師アザが詳し過ぎるラファウを勘ぐった。
アザは商人の子だからか、情報のまとめ役になっていた。
最初は嫌々だったが、今は異国から輸入される絹などを見て回って楽しんでいる。
アザに指摘されたラファウが口の前で一指し指を立てた。

「秘密です」
「その犯人をご存知とかじゃないのでしょうね?」
「ですから、秘密ですと言っています」

当たりだった。
ラファウもアルコ商会やシャイロックに会って確認して来たとは言えない。
その噂の事件にシャイロックが関わっているのはわずかだった。
そもそも誰かを殺せとか言う指示はほとんどない。
貴族の密偵らしい調査が多い。
秘密警察のようなことをさせられていた。
拷問もほどほどにと言っておいた。
中にはラファウにとってもありがたい情報がいくつかあった。
今回の噂を出している1つは宰相のアポニー家だ。
知っているぞと脅しているのだろうか?
ところで、今年に入って指示らしいものが入らなくなったそうだ。
ある意味、自然に思えた。
今年のカロリナは正月からほとんど王都にいない。

みんながカロリナの事を心配して議論を交わしている。
ダ~ン!
カロリナがテーブルを叩いた。

「みなさん、情報収拾ご苦労さまです。明日から私も参加します」
「お嬢様、無理を言わないで下さい」
「もう20日も軟禁状態ですよ。我慢の限界です」
「出るのは拙いです」
「私も情報収拾します。食べ歩きもしたいのです。自慢話は聞き飽きました」

何も自慢話をしているのではない。
6月の社交会シーズンにこっそり王都を出ると、河を下ってラーコーツィ領都の城に入った。
城の者は歓迎してくれた。
身内が入れ替わりやって来て、カロリナを労ってくれた。
でも、10日もすれば飽きた。
悪い噂が引けば、カロリナも領都を出歩けるようになると約束してくれたが、噂は酷くなる一方であった。
もう待っていられません。
エルが必至に止めているがもう限界だった。

「仕方ない。領内の視察でもいきますか?」
「ルドヴィク、無茶を言うな!」
「大丈夫さ! 他領の貴族が徘徊せず、商人の数も限定できる場所があるだろう」
「西の開拓地か。珍しい物は何もないぞ!」
「この際、珍しい物は必要ない」
「その開拓地とはどこですか?」
「20年前に王の直轄地だった土地を下賜されました。覚えておりませんか?」
「思い出しました。未開で漁村しかなかった土地ですね」
「その通りです。5年前の開拓事業で6つ村ができました。港1つと4つ漁村と8つ村があるだけの領地です。代官を置いて管理しております」
「判りました。すぐに行きましょう!」
「お待ち下さい。準備と連絡に三日だけ頂きたい」
「三日だけですよ」
「南には国境が在って睨みあっています。本来、カロリナ様を連れてゆくような場所ではありません」
「開拓民がどういう暮らしをしているのか、興味があります」
「カロリナ様なら、そう言うと思いました」
「ルドヴィク」
「カロリナ様が町を出歩くよりマシだろう」

ラファウは今回の事件の責任を取らされて、無期限の登城禁止を言い渡された。
裏で色々と画策し過ぎた。
ゴビリン・スレイヤーの件で二階級特進が取り消され、来年の昇格も見込めないので降格と同じだ。
誰かが責任を取らないといけないと納得している。

ルドヴィクはもっと悲惨だ。
肝心な時にいなかった責任で同罪にされた。
カロリナの護衛4人のレベル上げにダンジョンに籠っていた訳であり、レヴィンの許可も貰っていた。
一人では足りないのでスケープゴートにされた。
領地からあいさつ来た祖母が永遠にカロリナに苦情を申し立てた方が、ルドヴィクにはキツかったようだ。

屋敷での護衛はイグナーツ、イェネー、クリシュトーフ、カールの四人が行っている。
レベルが28まで上がった。
ルドヴィクは30まで上げると言っている。
レベル30と言えば、貴族学校で優秀な卒業生が達するレベルだ。

本当の護衛はアンブラ達だ。
しかし、所詮は城の中なので侍女に扮して暇も持て余していた。

情報収拾はレフをリーダとする冒険パーティ『森人シルバ・ホミネース』の30人が行っている。
今回の同行者だ。
南の旅行では仲間外れにされたニナとジクが怒っていた。

三日後、ラファウは約束通りに船をチャーターして河を下った。
そして、そのまま海を渡って漁村に到着した。

漁港には村人が総出でカロリナを出迎えてくれた。

『カロリナ様、万歳!』

漁民達は大歓迎だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...