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第二章 魯坊丸と楽しい仲間達
九夜 ハローワークで神人教育
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〔天文十七年 (一五四八年)春三月三日〕
今日の会合は勘三郎(加藤-延隆)が主役であり、『一緒に帆船を造ろうぜ』というのが趣旨である。
勘三郎はその帆船で七つの海を跨ぎたいと言っているが、帆船が完成する頃に勘三郎が何歳になっているのだろうかと首を捻る。
美しい三本マストの帆船が十年後で造船できれば、十分に奇跡だと思う。
帆船を古くさいと思うのも間違いだ。
最新の海事総合誌や会報誌『ザ・ロープ』などを読めばわかるが、ガラス繊維や炭素素材を使用した帆船は時代の最先端であり、次世代は帆船の時代へと移行している。
目指す帆船は最先端技術をぶち込んだハイテクな帆船だ。
だが、俺に造船の知識はなく、基本構造は教えられるが造るのは船大工なのだ。
夢は広がるが道のりは遠い。
さて、帆船の模型を作らせた俺に会いたいという荒尾-小太郎(空善)と佐治-為貞に要望されて会うことになったのだ。
最初は顔見せ、立会人に過ぎない。
話し合いを延隆に任せて席を立つつもりだったが、二回目の酒造りの米を用立ててもらうことに変更した。
プレゼンをする為に夕食を食べながらの会見とした。
「季忠様。夕食の準備は整っておりますか?」
「手抜かりはございません。魯坊丸様より賜った『天ぷら』を披露いたします。朝から新鮮な海老や魚を準備させ、春ものと一緒に出す準備ができております」
「醤油と味醂で味付けさせた『天ぷら汁』を持参しました。塩と一緒にならべて下さい」
「ありがとうございます。遂に天ぷら汁も完成しましたか」
「間に合いました」
季忠は一品にカレイのバター焼きとハマグリ酒蒸し、汁物にとろろ昆布と梅のお吸い物、幻の清酒を用意したという。
バター焼きは俺が教えたレシピであり、千秋家に残る貴重な清酒を放出する。
俺と季忠が顔をにやけさせた。
酒でどれほど儲かるかを二人に教え、俺の後ろ盾となってもらう。
二回目の米は、現物でも良いし、銭でも良い。
勘三郎、荒尾、佐治の三家に出してもらって急場を凌ぐのだ。
「魯坊丸様。夕食前に休憩を取られるとして、まだ少し時間があると思いましが、炊き出しに参加されませんか?」
「そんな時間か」
「何か御用でもございますか。発起人の魯坊丸様が参加されると皆が喜びます」
「書庫で本を読もうと思っていただけだ。参加させてもらおう」
「ありがとうございます」
参加といっても、俺がお玉をもって炊き出しのお粥を椀に注ぐ訳ではない。
広場の離れに設置した台の上に立つだけだ。
炊き出しは鎮守の森の南、東鳥居近くの広場で行われており、俺と季忠が台の上に現れると、神官が、大きなメガホンを口に当てて声を上げた。
『今から炊き出しをはじめる。一同は集まり、整列するように』
炊き出しを命じられた流民が移動をはじめる。
神官に誘導されながら順番に並び、具のほとんど入っていない粥汁が入ったお椀と匙を渡された。
元の場所に戻ると、一口また一口と口に注ぐ。
腹一杯には程遠い。
今日の飢えを凌ぐのみ、それで空腹感が癒える訳もないほど少ない量なのだ。
『食べながらでよいが、聞くがよい。あちらに御座すのが、炊き出しの考案者であられる熱田明神の生まれ代わりであられる織田魯坊丸様と神宮の大宮司であられる千秋季忠様である』
流民らは食べながらもこちらにお辞儀をして礼を示した。
『其方らが望むならば、神宮は其方らを神人として迎える用意がある。腹一杯の食事を保障しよう。しかし、自由はなくなる。その身のすべてを神宮に捧げてもらうことになる。傷ついた翼を休める為にここに来た者は、神人になることを勧めぬ。ご恩を返したい者は名乗りでよ。女、子供でも問題はない。腕を失った者、足を失った者、言葉が不自由な者も拒むことはない。その身を神宮に捧げる意志がある者はこちらにくるがよい』
無償の炊き出しの愛は流民を救う。
キャッチフレーズは美しい。
労働力が足りない熱田において、労働者の売り手市場なのに恩着せがましく、無償の労働者を確保しようという悪徳である。
涙を流して崇められると悪い気がする。
毎日のように炊き出しをしているが、十日に一度だけ流民の雇用を呼び掛けている。
すべての流民を雇用したのに、すぐにまた増えてくるのだ。
人手不足なので都合がいい。
台を降りると、控えていた千代女が焦って尋ねてきた。
「魯坊丸様、このような慈善ばかりをなさって大丈夫なのですか?」
「これは慈善ではない。むしろ、悪徳だ」
「どこが悪徳なのですか?」
「日当八文が相場だが、衣食住を保障するだけで一文も払っていない」
「村を捨てた者が容易に働けぬのは当然でありませんか」
これが時代ギャップだ。
室町から戦国に掛けて、後ろ盾のない者は搾取される。
どこに所属するかの選択権などない。
主を失った者、村を捨てた者は、新しい所属を認められない限り、安全が保障されない。
主になってくださいとお願いできるが、なってやると引き手数多なのは希な例だ。
例外が神社と寺の敷地となる。
神・仏域である敷地内での騒動の御法度があるので争い事から逃れることができる。
だが、それ以上の恩恵はない。
神人になると、神社が主となって仕事につける。
衣食住を保障すると言った手前もあり、元手は掛かるがリターンも大きい。
「千代女は職業安定所を見ていなかったか」
「ハローワーク?」
「まだ、時間あるので足を運ぶか」
「魯坊丸様。ご一緒させていただいてかまいませんか?」
「こちらでは季忠様がいらっしゃる方が助かります」
「さあさあ、行きましょう」
「この近くにハローワークがあるのですか?」
「ここにもあるが、中根村にも同じものがあるぞ。雇用した者に仕事を教える設備だ。最初は必要なかったのだが、後からきた者が足を引っ張るようになったので、先に仕事を教えることにした」
「なるほど、それともう一つ。痩せこけた感じの猫背で、髪を紐でくくっていた男は、どこかの間者と思われます」
「間者か。季忠様、聞こえましたか」
「聞こえました。そのように伝えておきましょう」
河原者を抱えた当初の俺はまったく気がついていなかったが、定季に指摘されて間者の炙り出しをはじめた。
河原者にしろ、流民にしろ、敵国の間者が紛れているらしい。
まず、五人組という互いに監視するグループを形成させる。
仕事の能力や様々の評判を元に信用がおける者のみに鉄の鍬などを貸し与えることに変更させた。
鉄の鍬を持つことから、俺に信頼されている『黒鍬者』と呼ばれるようになった。
この黒鍬者を中心に五人組を使わせる。
黒鍬者には作業工程や内容を教えるが、五人組以下には分業した作業の一工程にしか従事させないことにした。
つまり、ローマンコンクリートの作業も分割し、一つの作業と整地などの一般的な土木作業しか知らないようになった。
整地なら砂利を運ぶ者、土を運ぶ者、地面を叩く者、ローラーを引く者、大工なら木を切る者、木を板にする者、板を張る者などと分業化してゆく。
酒も同じく、精米をする者、麹室で働く者、蔵で働く者と分けていった。
可能な限り分業し、同じ作業に従事させる。
作業の練度が上がる上に、情報が漏洩しても全貌がわかり難いように工夫したのだ。
加えて、熱田神宮には、中根家にない者がいた。
「千代女殿。ご心配めさるな。甲賀者ほどの手練れはおりませんが、熱田神宮でも古来より、その方面に携わってきた者がおります。選別は十分にしております」
「そうなのですか?」
「間者と疑わしい者は能力のあるなしに関わらず、土運びのみです。それ以外はさせません」
「出過ぎた真似をいたしました」
「いいえ、気がついたときは教えてください。こちらも取りこぼしがあるやもしれません」
熱田神宮は古くからあるだけあって忍者に近い隠者がいた。
舞の中に古武術を隠し伝えているとか?
見ているだけでは、美しい舞にしか見えないのに隠者なの?
先代の千秋季光が河原者に混ぜて、俺を警護させる為に隠者を送っていたとか聞かされたときは驚いた。
河原者の中に妙にできる奴がいた訳が明かされたのだ。
「これがハローワークですか」
「熱田の大通りは焼レンガを敷いて大八車が走りやすいように改造中だ。酒造所の道も焼レンガを敷いている。あれがレンガを焼く窯だ。常滑焼きの窯士を誘致して師にしておる」
「あちらは木を切る実習だ。板がたくさん消費されるので、いくら作っても足りない」
「あれは猫車で土を運ぶ訓練だ。魯坊丸様の考えた猫車は素晴らしい」
季光が自慢そうに千代女らに説明して俺の出番がない。
新たに神人になった者に怒鳴り声が響いていた。
軍隊式で土木作業を教えながら、木のスコップや木の鍬で土を掘り、土を運び、土も捏ねて、土を焼くなど、能力と人格で振り分けられてゆくのだ。
振り分けののちに、場所を変えて信用できると思われた者らは専門の技術を教えてゆく。
何故、軍隊式か?
命令されることに慣れた者を育てるのが、目的の1つだと俺は教えた。
鎌倉ではないが、イザぁという時に兵になる。
それを知っていたので、季光の説明にも力が帯びて楽しそうであった。
がざっ、物陰に隠れていた影が動いた。
何かに足を取られて躓いたようにも見えたが、その瞬間にさくらが動いた。
とりゃ、そう叫ぶと俺の後ろを守っていたさくらが飛ぶと、倒れてくる影の腕を取って、軽く捻り、足を弾いて影を地面に落とすと、いつの間にか懐刀を抜いて首に翳していた。
動けば殺すという感じだ。
「千代女様。さくらはやりました。怪しい奴を捕らえました」
千代女は首を少し振り、うつむき加減で手を頭に当てた。
話の流れから見れば、熱田の隠者さんだろう。
慌てた季光が手を広げて「殺さないで」とジェスチャーしているようにも見える。
楓は「さくらに負けてられないな」と煽っているように見えるし、紅葉は手を口元に翳して、「駄目です。殺しちゃ駄目です」と叫んでいる。
「さくら、リリースだ」
「えっ、リリースとは何でするか?」
「すぐに解き放て」
「どうしてですか?」
仕事熱心なのはいいが、さくらはどこがズレているんだな。
今日の会合は勘三郎(加藤-延隆)が主役であり、『一緒に帆船を造ろうぜ』というのが趣旨である。
勘三郎はその帆船で七つの海を跨ぎたいと言っているが、帆船が完成する頃に勘三郎が何歳になっているのだろうかと首を捻る。
美しい三本マストの帆船が十年後で造船できれば、十分に奇跡だと思う。
帆船を古くさいと思うのも間違いだ。
最新の海事総合誌や会報誌『ザ・ロープ』などを読めばわかるが、ガラス繊維や炭素素材を使用した帆船は時代の最先端であり、次世代は帆船の時代へと移行している。
目指す帆船は最先端技術をぶち込んだハイテクな帆船だ。
だが、俺に造船の知識はなく、基本構造は教えられるが造るのは船大工なのだ。
夢は広がるが道のりは遠い。
さて、帆船の模型を作らせた俺に会いたいという荒尾-小太郎(空善)と佐治-為貞に要望されて会うことになったのだ。
最初は顔見せ、立会人に過ぎない。
話し合いを延隆に任せて席を立つつもりだったが、二回目の酒造りの米を用立ててもらうことに変更した。
プレゼンをする為に夕食を食べながらの会見とした。
「季忠様。夕食の準備は整っておりますか?」
「手抜かりはございません。魯坊丸様より賜った『天ぷら』を披露いたします。朝から新鮮な海老や魚を準備させ、春ものと一緒に出す準備ができております」
「醤油と味醂で味付けさせた『天ぷら汁』を持参しました。塩と一緒にならべて下さい」
「ありがとうございます。遂に天ぷら汁も完成しましたか」
「間に合いました」
季忠は一品にカレイのバター焼きとハマグリ酒蒸し、汁物にとろろ昆布と梅のお吸い物、幻の清酒を用意したという。
バター焼きは俺が教えたレシピであり、千秋家に残る貴重な清酒を放出する。
俺と季忠が顔をにやけさせた。
酒でどれほど儲かるかを二人に教え、俺の後ろ盾となってもらう。
二回目の米は、現物でも良いし、銭でも良い。
勘三郎、荒尾、佐治の三家に出してもらって急場を凌ぐのだ。
「魯坊丸様。夕食前に休憩を取られるとして、まだ少し時間があると思いましが、炊き出しに参加されませんか?」
「そんな時間か」
「何か御用でもございますか。発起人の魯坊丸様が参加されると皆が喜びます」
「書庫で本を読もうと思っていただけだ。参加させてもらおう」
「ありがとうございます」
参加といっても、俺がお玉をもって炊き出しのお粥を椀に注ぐ訳ではない。
広場の離れに設置した台の上に立つだけだ。
炊き出しは鎮守の森の南、東鳥居近くの広場で行われており、俺と季忠が台の上に現れると、神官が、大きなメガホンを口に当てて声を上げた。
『今から炊き出しをはじめる。一同は集まり、整列するように』
炊き出しを命じられた流民が移動をはじめる。
神官に誘導されながら順番に並び、具のほとんど入っていない粥汁が入ったお椀と匙を渡された。
元の場所に戻ると、一口また一口と口に注ぐ。
腹一杯には程遠い。
今日の飢えを凌ぐのみ、それで空腹感が癒える訳もないほど少ない量なのだ。
『食べながらでよいが、聞くがよい。あちらに御座すのが、炊き出しの考案者であられる熱田明神の生まれ代わりであられる織田魯坊丸様と神宮の大宮司であられる千秋季忠様である』
流民らは食べながらもこちらにお辞儀をして礼を示した。
『其方らが望むならば、神宮は其方らを神人として迎える用意がある。腹一杯の食事を保障しよう。しかし、自由はなくなる。その身のすべてを神宮に捧げてもらうことになる。傷ついた翼を休める為にここに来た者は、神人になることを勧めぬ。ご恩を返したい者は名乗りでよ。女、子供でも問題はない。腕を失った者、足を失った者、言葉が不自由な者も拒むことはない。その身を神宮に捧げる意志がある者はこちらにくるがよい』
無償の炊き出しの愛は流民を救う。
キャッチフレーズは美しい。
労働力が足りない熱田において、労働者の売り手市場なのに恩着せがましく、無償の労働者を確保しようという悪徳である。
涙を流して崇められると悪い気がする。
毎日のように炊き出しをしているが、十日に一度だけ流民の雇用を呼び掛けている。
すべての流民を雇用したのに、すぐにまた増えてくるのだ。
人手不足なので都合がいい。
台を降りると、控えていた千代女が焦って尋ねてきた。
「魯坊丸様、このような慈善ばかりをなさって大丈夫なのですか?」
「これは慈善ではない。むしろ、悪徳だ」
「どこが悪徳なのですか?」
「日当八文が相場だが、衣食住を保障するだけで一文も払っていない」
「村を捨てた者が容易に働けぬのは当然でありませんか」
これが時代ギャップだ。
室町から戦国に掛けて、後ろ盾のない者は搾取される。
どこに所属するかの選択権などない。
主を失った者、村を捨てた者は、新しい所属を認められない限り、安全が保障されない。
主になってくださいとお願いできるが、なってやると引き手数多なのは希な例だ。
例外が神社と寺の敷地となる。
神・仏域である敷地内での騒動の御法度があるので争い事から逃れることができる。
だが、それ以上の恩恵はない。
神人になると、神社が主となって仕事につける。
衣食住を保障すると言った手前もあり、元手は掛かるがリターンも大きい。
「千代女は職業安定所を見ていなかったか」
「ハローワーク?」
「まだ、時間あるので足を運ぶか」
「魯坊丸様。ご一緒させていただいてかまいませんか?」
「こちらでは季忠様がいらっしゃる方が助かります」
「さあさあ、行きましょう」
「この近くにハローワークがあるのですか?」
「ここにもあるが、中根村にも同じものがあるぞ。雇用した者に仕事を教える設備だ。最初は必要なかったのだが、後からきた者が足を引っ張るようになったので、先に仕事を教えることにした」
「なるほど、それともう一つ。痩せこけた感じの猫背で、髪を紐でくくっていた男は、どこかの間者と思われます」
「間者か。季忠様、聞こえましたか」
「聞こえました。そのように伝えておきましょう」
河原者を抱えた当初の俺はまったく気がついていなかったが、定季に指摘されて間者の炙り出しをはじめた。
河原者にしろ、流民にしろ、敵国の間者が紛れているらしい。
まず、五人組という互いに監視するグループを形成させる。
仕事の能力や様々の評判を元に信用がおける者のみに鉄の鍬などを貸し与えることに変更させた。
鉄の鍬を持つことから、俺に信頼されている『黒鍬者』と呼ばれるようになった。
この黒鍬者を中心に五人組を使わせる。
黒鍬者には作業工程や内容を教えるが、五人組以下には分業した作業の一工程にしか従事させないことにした。
つまり、ローマンコンクリートの作業も分割し、一つの作業と整地などの一般的な土木作業しか知らないようになった。
整地なら砂利を運ぶ者、土を運ぶ者、地面を叩く者、ローラーを引く者、大工なら木を切る者、木を板にする者、板を張る者などと分業化してゆく。
酒も同じく、精米をする者、麹室で働く者、蔵で働く者と分けていった。
可能な限り分業し、同じ作業に従事させる。
作業の練度が上がる上に、情報が漏洩しても全貌がわかり難いように工夫したのだ。
加えて、熱田神宮には、中根家にない者がいた。
「千代女殿。ご心配めさるな。甲賀者ほどの手練れはおりませんが、熱田神宮でも古来より、その方面に携わってきた者がおります。選別は十分にしております」
「そうなのですか?」
「間者と疑わしい者は能力のあるなしに関わらず、土運びのみです。それ以外はさせません」
「出過ぎた真似をいたしました」
「いいえ、気がついたときは教えてください。こちらも取りこぼしがあるやもしれません」
熱田神宮は古くからあるだけあって忍者に近い隠者がいた。
舞の中に古武術を隠し伝えているとか?
見ているだけでは、美しい舞にしか見えないのに隠者なの?
先代の千秋季光が河原者に混ぜて、俺を警護させる為に隠者を送っていたとか聞かされたときは驚いた。
河原者の中に妙にできる奴がいた訳が明かされたのだ。
「これがハローワークですか」
「熱田の大通りは焼レンガを敷いて大八車が走りやすいように改造中だ。酒造所の道も焼レンガを敷いている。あれがレンガを焼く窯だ。常滑焼きの窯士を誘致して師にしておる」
「あちらは木を切る実習だ。板がたくさん消費されるので、いくら作っても足りない」
「あれは猫車で土を運ぶ訓練だ。魯坊丸様の考えた猫車は素晴らしい」
季光が自慢そうに千代女らに説明して俺の出番がない。
新たに神人になった者に怒鳴り声が響いていた。
軍隊式で土木作業を教えながら、木のスコップや木の鍬で土を掘り、土を運び、土も捏ねて、土を焼くなど、能力と人格で振り分けられてゆくのだ。
振り分けののちに、場所を変えて信用できると思われた者らは専門の技術を教えてゆく。
何故、軍隊式か?
命令されることに慣れた者を育てるのが、目的の1つだと俺は教えた。
鎌倉ではないが、イザぁという時に兵になる。
それを知っていたので、季光の説明にも力が帯びて楽しそうであった。
がざっ、物陰に隠れていた影が動いた。
何かに足を取られて躓いたようにも見えたが、その瞬間にさくらが動いた。
とりゃ、そう叫ぶと俺の後ろを守っていたさくらが飛ぶと、倒れてくる影の腕を取って、軽く捻り、足を弾いて影を地面に落とすと、いつの間にか懐刀を抜いて首に翳していた。
動けば殺すという感じだ。
「千代女様。さくらはやりました。怪しい奴を捕らえました」
千代女は首を少し振り、うつむき加減で手を頭に当てた。
話の流れから見れば、熱田の隠者さんだろう。
慌てた季光が手を広げて「殺さないで」とジェスチャーしているようにも見える。
楓は「さくらに負けてられないな」と煽っているように見えるし、紅葉は手を口元に翳して、「駄目です。殺しちゃ駄目です」と叫んでいる。
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新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
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意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
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