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第二章 魯坊丸と楽しい仲間達
三十一夜 京への納品開始と望月兵太夫
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〔天文十七年 (一五四八年)夏五月七日〕
この帝は五穀豊穣など多くの儀式を行い、日の本の安寧を祈る。
帝は日の本にある神社の神官の頂点のようなお方であり、祈りによって国を守る。
長く戦が続くとか、疫病が蔓延するとか、人々は神々の祟りと口にする。
その神々の怒りを鎮めるのが、帝の仕事なのだ。
今上の帝(後の後奈良天皇)は疫病が広まると、自らが書き写した『般若心経』を全国の神社に送り、疫病終息を祈った。
生真面目な方だ。
自分の祈りが足りないと嘆いていそうだ。
俺から見れば人災と天災であり、帝に責任などない。
帝は清廉潔白な方らしく、天文四年 (1535年)のことらしいが、土佐の一条-房冬が左近衛大将に就任した際、朝廷に銭一万疋 (1000貫文、1億2000万円)を約束通りに献金してきたが、それを知った帝は献金を突き返し、執り行う予定だった行事を取り止めたという。
だが、そんな帝も酒の魔力には抗えず、酒豪山科-言継の説得で、殿上人および宮中の人々にも清酒を振る舞うことを許可した。
山科言継と親父(織田-信秀)は、帝への献上品に通行税が掛からないことを逆手にとって、倍の数の酒を京に持ち込んで京で売りさばき、その儲けを折半する。
どちらもズル賢い。
因みに、十斗樽 (180リットル)とは、馬一頭で運べる量だった。
実際に十斗樽を馬の背に乗せるのは難しいので、特別な鐙に二つの五斗樽を両側に乗せることにした。
五斗樽は熱田で船に乗せられ、対岸の伊勢の津(安濃津)まで船で運ぶ。
そこから馬で京の山科邸の倉庫まで運ぶ。
途中に鈴鹿越えがあるので甲賀で一泊だ。
皆に酒を振る舞うのは六月一日の氷室の節会なので、前々日まで御所に運ばれる。
二百頭の馬に乗せた輸送団でも五往復であり、津から山科まで往復四日、計二十日間なので割と日程が厳しい。
雨で船が出せない日があるといけないので、急いで津まで船で運んでいる。
しかし、考えるのは簡単だったが実行は難しい。
まず、馬二百頭を揃えるのも大変だ。
無理をすれば織田家のみでも集まるが、その数になると戦で将がすべて徒歩で異動することになりかねない。
戦の予定はないが予定は未定であり、全頭を借りるのは無理であった。
二百頭も集まらない。
だから、近江の六角家臣や北伊勢の豪族まで借りて集めた。
交渉で頑張ったのは、牧-長義と図書助 (加藤-順盛)である。
長義は親父の家臣だが斯波義統の甥にあたり、近江守護の六角-定頼などの通行許可の交渉に当たった。
図書助らは周辺の六角家臣や北伊勢の豪族に通行の許可と馬などを借りた。
加藤家の一族は、昔から熱田の豪商なのだ。
熱田の商人らを使って、街道沿いの城主や豪族に協力を求めた訳だ。
もちろん、宿場の馬もかき集めた。
配った酒や謝礼などが高くつき、加えて人件費や馬の食費などあって経費が軽く五百貫文 (6000万円)を超えた。
だがしかし、清酒一升の売値を百文と仮定すると、
〔十斗樽(180リットル) × 一千個 ÷ 一升(1.8リットル) = 十万本
十万本 × 一升100文 = 1000万文 (一万貫文)〕
すべてで一万貫文の取引だ。
経費が五百貫文というのも頷ける。
その一万貫文の売り上げの内、半分は献上品で儲けがない。
残り半分である五千貫文は山科言継と折半だが、その取り分二千五百貫文も上洛した際に献金として差し出すそうだ。
念の為に言うが、十斗樽千樽分のお値段四千貫文は請求する。
こちらも支払いがあるからな。
「魯坊丸様、こちらにも手柄控えの書類に署名を」
「定季、俺が署名する意味があるのか?」
「挨拶所や礼状などは牧様や加藤様が書かれますが、荷が動けば、一時的に魯坊丸様の財布から銭が動きます。魯坊丸様の名のない書類では事務方が困ります」
「中根南城の事務方と俺の下に帳簿方を置いて、二人の署名で銭を動かせるように変更だ」
「わかりました。次の熱田衆の会合で変更を通達します。今回の納品が終わってからですな」
「今すぐは無理か」
「魯坊丸様の署名のない書類で荷を動かせと言われた商人らが混乱をきたします」
「城主の忠良様でも問題ありませんが、すでに半分以上を回しております。まだ、回しますか?」
「や、止めておこう」
日常業務の支払い関係は義父上に回した。
義父上や母上の侍女らも悲鳴を上げており、向こうの古株の侍女が俺に止めさせるように陳情してきたが無視している。
あれは愚痴であって陳情ではないということにした。
そして、京に運ぶ酒の管理を俺が担当した。
五斗樽 (90リットル)二千個を京まで運ぶって大変だな。
定季が次の書類を回してきた。
津湊の荷卸し人足賃でなんちゃらかんちゃらで三貫百二十文の支払いを認めたという文章が書かれ、定季が書いた許可書に名前だけ記入する。
その書類と手形の控えを二枚一組にして横の紅葉に渡すと、二枚をずらして割印を押した。
書類は溜まった所で糸を通して束ねておく。
俺の小さな拳と同じ厚さの書類の束が、一日で三冊もできる。
今度は経理の合理化を進めよう。
一冊分が溜まり、さくらが糸で束ねていると、千代女が部屋に入ってきた。
「魯坊丸様。望月から使いの者がやってきました。お会いになって頂けますか」
「誰だ?」
「私の叔父で望月-兵大夫と申します。以前、私が甲賀の者を追加で召し抱えたいと申しました。叔父が追加の者を連れてきました」
「その兵大夫を召し抱えればいいのか。いくらほどだ?」
「いえ、叔父はちょっと」
俺は何か変なことを言ったのか千代女が言葉を濁した。
横の紅葉がにっこりと笑って説明してくれた。
「魯坊丸様。兵大夫様は棟梁の片腕でございます。兵大夫様を取られて望月家は立ち行かなくなります」
「それほど凄いのか?」
「腕前は棟梁と互角。大きな依頼を受けたときは、棟梁の代わりに兵大夫様が望月の者を率いて指揮を執られます。その強さは千代女様の憧れの方なのです」
「紅葉⁉」
「そうなのです。兵大夫様の強さは本物であり、我ら四人で掛かって瞬殺される強さは、このさくらも憧れております」
「さくらは一太刀も浴びせられないだろう」
「そういう楓も、自慢の足で翻弄できずに転がされたではありませんか」
「いつも自滅させられているさくらに言われたくない」
「えっと、このように千代女様と違い、私ら三人は兵大夫様の相手になりません」
「私も赤子扱いでございます」
ほぉと思わず言葉が漏れた。
千代女は強い者と戦うのを好み、伊賀者を雇ったときも実戦で相手の力量を測った。
訓練では、中根南城の武士団の者とも手合わせをよくしている。
力自慢の豪の者らが次々と倒され、皆が千代女を師匠と仰いで訓練に勤しんでいる。
すでに千代女は中根南城で最強の称号を得ている。
その千代女が自ら赤子扱いという強さらしい。
客間に移動して兵大夫様を見ると、ギリギリ三十代と聞いたが年の割に若く、二十代でも通用しようだ。
「お初にお目にかかります。望月-兵太夫と申します」
「織田-魯坊丸だ」
「今回は千代女の要請で望月の者十名をお連れしました。残念ながら豪の者はおりませんが、魯坊丸様を守る目と盾くらいにはなると思います」
「それは助かる」
俺は十人をどうするかと千代女を見た。
千代女は俺の馬を引く者や荷物運ぶ小者らに五人を配置し、残る五人を行商などで城に出入りさせるのがよいと言ったので承認した。
いつもの如く、尋ねもしないが勝手にしゃべるさくらが呟いた。
「五平太には勝ったことがございます」
「五平太?」
「庭で控えている一番端の奴です」
「あれが五平太か」
「はい、泣き虫、五平太です」
五平太が凄く嫌そうな顔をした。
十人の年はバラバラであり、五平太は比較的に若い奴だ。
兵太夫曰く、今回連れてきた十人は下働きを得意とする者であり、戦闘力はさくらと同じくらいか、僅かに劣る程度らしい。
紅葉が自虐的に「大丈夫です。皆さん、強いです。私より強いです」と俺の不安を取り除こうとしたが、紅葉より強いと言われてもピンと来ない。
千代女の希望で索敵と諜報を得意とする者を選んだそうだ。
俸禄は伊賀者と同等でいいらしい。
「最後に、棟梁から伝言です。魯坊丸様の要望に添えず、申し訳ない。その詫びとして、手の者をお貸しするとのことです。問題なければ、某を使って下さい」
「叔父上が魯坊丸様に仕えるのですか?」
「召し抱えられるのは困るが、雇われる分には問題ない」
「条件は?」
「棟梁の要請で望月に戻ることをお許し頂きたい」
「了解だ」
望月兵大夫を雇うことにした。
最初の仕事は、堺に戻る天王寺屋の船に同乗し、熱田衆の警護という名目で、堺や畿内の情勢を探ってもらう。
畿内や西国に酒を売ると決めたが、天王寺屋宗及の話を鵜呑みにできない。
情報は常に複数の筋から手に入れる。
インターネットやスマートフォンのような情報ツールがないのが痛い。
全部、人伝手で探る必要がある。
「調べてもらいたい一番は、物の値段だ」
「戦の有無ではなく、物の値段ですか?」
「物の値段から戦の有無も読める」
「物から戦が?」
「矢が動けば、戦が近いのがわかるだろう。米を買い占めれば、戦を考えている輩がいると考えられる。本当に戦の為に米を買い漁っているのかの状況が把握できれば、理由がわかる」
「確かに」
「つまり、物の値がおかしいところを調べることで、相手の動きが読める」
ほぉほぉ、兵大夫が面白そうに声を上げた。
別に珍しいことを言っていないが、戦国の世では珍しいか。
兵太夫は配下を二十人ほど持っているらしく、それぞれを各地に飛ばして調べると言ってくれた。
商人の護衛もよろしく。
この帝は五穀豊穣など多くの儀式を行い、日の本の安寧を祈る。
帝は日の本にある神社の神官の頂点のようなお方であり、祈りによって国を守る。
長く戦が続くとか、疫病が蔓延するとか、人々は神々の祟りと口にする。
その神々の怒りを鎮めるのが、帝の仕事なのだ。
今上の帝(後の後奈良天皇)は疫病が広まると、自らが書き写した『般若心経』を全国の神社に送り、疫病終息を祈った。
生真面目な方だ。
自分の祈りが足りないと嘆いていそうだ。
俺から見れば人災と天災であり、帝に責任などない。
帝は清廉潔白な方らしく、天文四年 (1535年)のことらしいが、土佐の一条-房冬が左近衛大将に就任した際、朝廷に銭一万疋 (1000貫文、1億2000万円)を約束通りに献金してきたが、それを知った帝は献金を突き返し、執り行う予定だった行事を取り止めたという。
だが、そんな帝も酒の魔力には抗えず、酒豪山科-言継の説得で、殿上人および宮中の人々にも清酒を振る舞うことを許可した。
山科言継と親父(織田-信秀)は、帝への献上品に通行税が掛からないことを逆手にとって、倍の数の酒を京に持ち込んで京で売りさばき、その儲けを折半する。
どちらもズル賢い。
因みに、十斗樽 (180リットル)とは、馬一頭で運べる量だった。
実際に十斗樽を馬の背に乗せるのは難しいので、特別な鐙に二つの五斗樽を両側に乗せることにした。
五斗樽は熱田で船に乗せられ、対岸の伊勢の津(安濃津)まで船で運ぶ。
そこから馬で京の山科邸の倉庫まで運ぶ。
途中に鈴鹿越えがあるので甲賀で一泊だ。
皆に酒を振る舞うのは六月一日の氷室の節会なので、前々日まで御所に運ばれる。
二百頭の馬に乗せた輸送団でも五往復であり、津から山科まで往復四日、計二十日間なので割と日程が厳しい。
雨で船が出せない日があるといけないので、急いで津まで船で運んでいる。
しかし、考えるのは簡単だったが実行は難しい。
まず、馬二百頭を揃えるのも大変だ。
無理をすれば織田家のみでも集まるが、その数になると戦で将がすべて徒歩で異動することになりかねない。
戦の予定はないが予定は未定であり、全頭を借りるのは無理であった。
二百頭も集まらない。
だから、近江の六角家臣や北伊勢の豪族まで借りて集めた。
交渉で頑張ったのは、牧-長義と図書助 (加藤-順盛)である。
長義は親父の家臣だが斯波義統の甥にあたり、近江守護の六角-定頼などの通行許可の交渉に当たった。
図書助らは周辺の六角家臣や北伊勢の豪族に通行の許可と馬などを借りた。
加藤家の一族は、昔から熱田の豪商なのだ。
熱田の商人らを使って、街道沿いの城主や豪族に協力を求めた訳だ。
もちろん、宿場の馬もかき集めた。
配った酒や謝礼などが高くつき、加えて人件費や馬の食費などあって経費が軽く五百貫文 (6000万円)を超えた。
だがしかし、清酒一升の売値を百文と仮定すると、
〔十斗樽(180リットル) × 一千個 ÷ 一升(1.8リットル) = 十万本
十万本 × 一升100文 = 1000万文 (一万貫文)〕
すべてで一万貫文の取引だ。
経費が五百貫文というのも頷ける。
その一万貫文の売り上げの内、半分は献上品で儲けがない。
残り半分である五千貫文は山科言継と折半だが、その取り分二千五百貫文も上洛した際に献金として差し出すそうだ。
念の為に言うが、十斗樽千樽分のお値段四千貫文は請求する。
こちらも支払いがあるからな。
「魯坊丸様、こちらにも手柄控えの書類に署名を」
「定季、俺が署名する意味があるのか?」
「挨拶所や礼状などは牧様や加藤様が書かれますが、荷が動けば、一時的に魯坊丸様の財布から銭が動きます。魯坊丸様の名のない書類では事務方が困ります」
「中根南城の事務方と俺の下に帳簿方を置いて、二人の署名で銭を動かせるように変更だ」
「わかりました。次の熱田衆の会合で変更を通達します。今回の納品が終わってからですな」
「今すぐは無理か」
「魯坊丸様の署名のない書類で荷を動かせと言われた商人らが混乱をきたします」
「城主の忠良様でも問題ありませんが、すでに半分以上を回しております。まだ、回しますか?」
「や、止めておこう」
日常業務の支払い関係は義父上に回した。
義父上や母上の侍女らも悲鳴を上げており、向こうの古株の侍女が俺に止めさせるように陳情してきたが無視している。
あれは愚痴であって陳情ではないということにした。
そして、京に運ぶ酒の管理を俺が担当した。
五斗樽 (90リットル)二千個を京まで運ぶって大変だな。
定季が次の書類を回してきた。
津湊の荷卸し人足賃でなんちゃらかんちゃらで三貫百二十文の支払いを認めたという文章が書かれ、定季が書いた許可書に名前だけ記入する。
その書類と手形の控えを二枚一組にして横の紅葉に渡すと、二枚をずらして割印を押した。
書類は溜まった所で糸を通して束ねておく。
俺の小さな拳と同じ厚さの書類の束が、一日で三冊もできる。
今度は経理の合理化を進めよう。
一冊分が溜まり、さくらが糸で束ねていると、千代女が部屋に入ってきた。
「魯坊丸様。望月から使いの者がやってきました。お会いになって頂けますか」
「誰だ?」
「私の叔父で望月-兵大夫と申します。以前、私が甲賀の者を追加で召し抱えたいと申しました。叔父が追加の者を連れてきました」
「その兵大夫を召し抱えればいいのか。いくらほどだ?」
「いえ、叔父はちょっと」
俺は何か変なことを言ったのか千代女が言葉を濁した。
横の紅葉がにっこりと笑って説明してくれた。
「魯坊丸様。兵大夫様は棟梁の片腕でございます。兵大夫様を取られて望月家は立ち行かなくなります」
「それほど凄いのか?」
「腕前は棟梁と互角。大きな依頼を受けたときは、棟梁の代わりに兵大夫様が望月の者を率いて指揮を執られます。その強さは千代女様の憧れの方なのです」
「紅葉⁉」
「そうなのです。兵大夫様の強さは本物であり、我ら四人で掛かって瞬殺される強さは、このさくらも憧れております」
「さくらは一太刀も浴びせられないだろう」
「そういう楓も、自慢の足で翻弄できずに転がされたではありませんか」
「いつも自滅させられているさくらに言われたくない」
「えっと、このように千代女様と違い、私ら三人は兵大夫様の相手になりません」
「私も赤子扱いでございます」
ほぉと思わず言葉が漏れた。
千代女は強い者と戦うのを好み、伊賀者を雇ったときも実戦で相手の力量を測った。
訓練では、中根南城の武士団の者とも手合わせをよくしている。
力自慢の豪の者らが次々と倒され、皆が千代女を師匠と仰いで訓練に勤しんでいる。
すでに千代女は中根南城で最強の称号を得ている。
その千代女が自ら赤子扱いという強さらしい。
客間に移動して兵大夫様を見ると、ギリギリ三十代と聞いたが年の割に若く、二十代でも通用しようだ。
「お初にお目にかかります。望月-兵太夫と申します」
「織田-魯坊丸だ」
「今回は千代女の要請で望月の者十名をお連れしました。残念ながら豪の者はおりませんが、魯坊丸様を守る目と盾くらいにはなると思います」
「それは助かる」
俺は十人をどうするかと千代女を見た。
千代女は俺の馬を引く者や荷物運ぶ小者らに五人を配置し、残る五人を行商などで城に出入りさせるのがよいと言ったので承認した。
いつもの如く、尋ねもしないが勝手にしゃべるさくらが呟いた。
「五平太には勝ったことがございます」
「五平太?」
「庭で控えている一番端の奴です」
「あれが五平太か」
「はい、泣き虫、五平太です」
五平太が凄く嫌そうな顔をした。
十人の年はバラバラであり、五平太は比較的に若い奴だ。
兵太夫曰く、今回連れてきた十人は下働きを得意とする者であり、戦闘力はさくらと同じくらいか、僅かに劣る程度らしい。
紅葉が自虐的に「大丈夫です。皆さん、強いです。私より強いです」と俺の不安を取り除こうとしたが、紅葉より強いと言われてもピンと来ない。
千代女の希望で索敵と諜報を得意とする者を選んだそうだ。
俸禄は伊賀者と同等でいいらしい。
「最後に、棟梁から伝言です。魯坊丸様の要望に添えず、申し訳ない。その詫びとして、手の者をお貸しするとのことです。問題なければ、某を使って下さい」
「叔父上が魯坊丸様に仕えるのですか?」
「召し抱えられるのは困るが、雇われる分には問題ない」
「条件は?」
「棟梁の要請で望月に戻ることをお許し頂きたい」
「了解だ」
望月兵大夫を雇うことにした。
最初の仕事は、堺に戻る天王寺屋の船に同乗し、熱田衆の警護という名目で、堺や畿内の情勢を探ってもらう。
畿内や西国に酒を売ると決めたが、天王寺屋宗及の話を鵜呑みにできない。
情報は常に複数の筋から手に入れる。
インターネットやスマートフォンのような情報ツールがないのが痛い。
全部、人伝手で探る必要がある。
「調べてもらいたい一番は、物の値段だ」
「戦の有無ではなく、物の値段ですか?」
「物の値段から戦の有無も読める」
「物から戦が?」
「矢が動けば、戦が近いのがわかるだろう。米を買い占めれば、戦を考えている輩がいると考えられる。本当に戦の為に米を買い漁っているのかの状況が把握できれば、理由がわかる」
「確かに」
「つまり、物の値がおかしいところを調べることで、相手の動きが読める」
ほぉほぉ、兵大夫が面白そうに声を上げた。
別に珍しいことを言っていないが、戦国の世では珍しいか。
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