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第二章 魯坊丸と楽しい仲間達
五十七夜 尾張伊賀組の誕生
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〔天文十七年 (一五四八年)十二月二十五日から二十九日〕
新しい年を清らかな御社殿でお迎えいただくため、二十五日に御煤納神事が行われる。
俺も奥神殿の煤を払う役目を賜った。
払いたまえ、清めたまえ。
最初に俺が軽く掃くと、俺のお仕事は終了だ。
後は神官らがぴかぴかに磨いてくれる。
外に出ると、多くの神官が神宮内の木々の煤を払う為に長い忌竹の箒で社の軒下や柱を揺らして、埃を払っていた。
あれで綺麗になると思わないが、気分の問題なのだろう。
日々の掃除を行っているので、そういう行事だと思って眺める。
朝の行事が終わると熱田神宮を後にして、北の熱田酒造所に足を向けた。
出荷も終わり、酒造りも一段落していた。
新仕込みを来年元旦に回し、新年を迎える為の掃除が行われていた。
皆、俺を見ると挨拶をしてくれる。
広場の片隅では、正月用の餅搗きの準備を子供らが手伝っている。
笑顔が溢れており、いい傾向だ。
秋の祭りが過ぎると、新しいカップルが婚儀を行って、嫁ぐ者や婿入りする者、新居を構えるものが沢山現れる。
夏祭りの夜に結ばれ、収穫が終わった頃に家族に紹介するパターンが多いらしい。
次に多いのが、この時期だ。
秋に周りで婚儀が広がると、焦った男や女が正月前に相手を決めて正月に婚儀を行う。
忙しい師走に告白ラッシュが続いているそうだ。
年を越すと、女性も年齢が一つ増える。
特に、二十歳を迎える女性は鬼気迫る。
俺からすれば、二十歳は若過ぎる方だが、この時代は行き遅れの阿婆擦れという評価を受けて、ますます婚儀から遠のくそうだ。
若い女が男らに体をすり寄せている景色がちらほらと見えた。
「若様も気になりますか?」
「夏には子供が増えそうだな~っと思っただけだ」
「気になるなら、私で試しますか?」
「楓、若様を唆すなど何事ですか」
「さくら、よく考えてみよ。千代女様とのはじめてで、若様が恥をかかないようにするのが、我らの務めだろう」
「なるほど。それでしたら侍女長代筆頭となった。このさくらがその任を受けます」
「さくらちゃん、楓がからかっているだけだから」
「さくら、楓、馬鹿なことを言うな。三歳の餓鬼を相手に何を言う」
「そうですか? あと少しで四歳です。早熟な餓鬼なら興味を持ち始めますよ」
「とにかく、俺が元服するまで、その話題はなしだ。特にさくら、今度言ったら、侍女長代を外して、見習いに戻すからな」
「はい。わかりました」
脅されたさくらが、楓に苦情を言っていた。
俺を案内してくれていた連が、笑いを堪えている。
覚えていると思うが、連は初代侍女長だったが、その能力を買って、今は酒造所の総長を務めてもらっている。
商人らとの交渉が巧く、取引や搬送の段取りをほとんど任せっきりだ。
津島の酒造所も最初の藏が三つ完成し、正月明けに稼働を開始する。
連には、津島の取引も任せるつもりだ。
さて、千代女は酒造所の南にある忍び村へ先に行ってもらっていた。
何でも問題児がやってきたらしい。
俺が雇う忍びは、俺の命令を忠実に守る者という条件を付けている。
腕前より規律を重視した。
最初の音羽-仁平太が率いた三十人は理想的な忍びであった。
第二弾の田屋-宗時の三十人は、ヤル気があり過ぎて活きが良かった。
それが原因で城の警備に伊賀者を雇うことになり、末森、守山、那古野、勝幡、犬山に配置することになり、俺は追加で百人を雇うことになった。
三ヶ月を掛けてやってきた伊賀者は総勢180人であり、上忍3人、中忍5人、下忍92人の合計100人と、残る80人は妻帯者の妻と子供である。
因みに、男女比率は男性88人、女性12人だった。
昨日、仁平太の使いがきた。
最後の組は、伊賀国の有力豪族である猪田郷を拠点とする森田家の一団だ。
やってきたのは、森田-浄雲 という39歳 (満38歳)の次期当主だった。
はぁ…………意味がわからん?
猪田郷には三百人以上が住んでおり、森田家と周辺の一派だけを加えると、忍びが百人を超える。
森田家ごと、召し抱える予定はない。
そして、やってきた理由が、「面白そうだから、代わってもらっただ」と言ったらしい。
森田家の当主は高齢であり、浄雲が事実上の伊賀十二人衆の一人らしい。
実力は仁平太の折り紙付き。
但し、自由奔放で誰かの下に付ける性格ではない。
尾張に行けば面白いことになると思ったので、来る筈だった上忍と交替してもらったという。
地味な城の警護をできるタイプではない。
という訳で、本来の方と交替してもらうように、朝から千代女が俺の名代としてお願いに行ってもらった。
・
・
・
忍びの村の広場でボロボロになった千代女が倒れている。
俺は千代女の側まで駆け寄った。
「千代。大丈夫か」
「若様、すみません。説得に失敗してしまいました」
「それはいい。大丈夫か」
「おそらく、大丈夫です。ですが、申し訳ございません」
「そんなことはどうでもよい」
俺が千代女と話していると、ひょろっとしたいけ好かない顔をした男が近付いてきて、俺を見下ろした。
その顔が少し残念そうに見えた。
だが、そんなことはどうでもいい。
俺は怒りを隠さずに男を見上げた。
「お前が浄雲か」
「お初にお目にかかります。森田-浄雲と申します。以後、お見知りおきを」
「千代をいたぶって何のつもりだ」
「その女が俺に帰れと命令したので、一太刀でも入れれば聞いてやるというと、このような仕儀となりました。お気に入りがいたぶられて、お怒りですか?」
「あぁ、怒っている」
浄雲の目が笑った。
俺を挑発したいらしい。
いいだろう。
乗ってやるよ。
「その女が熱狂するほどの主と聞いて期待していましたが、見た目通りで普通ですな」
「三歳の餓鬼に何を期待するのか?」
「その女が『若様は自分より、遙かに優秀だ』と豪語しておりましたから、どんな化物がくるかと期待しておりました」
「俺は怪物ではない。体に至っては普通だよ」
「それは残念」
「だが、頭の方は普通でないらしい」
「なるほど、そういう主ですか」
「俺の実力を知りたいか?」
「是非、お教えください」
「教えてやろう。だが、少し時間がほしい」
「五年ですか、それとも十年ですか?」
「五日だ。五日後に勝負だ」
「承知しました。お待ちしましょう」
俺は千代女の治療を終えると、中根南城に戻った。
ボロボロであったが、切り傷は浅く、骨折もなく、浄雲がかなり手加減をしてくれたと、千代女はいう。
だが、それだけ手加減されても一太刀も入れられなかった。
伊賀十二人衆の一人と称される実力は嘘ではない。
売り言葉に買い言葉を発してしまったが、はっきり言って勝機などない。
なければ、作るしかない。
翌日、俺は浄雲を知る仁平太や田屋-宗時、狡い技が得意な脇連衆の陽炎老人など、武の要を集めた。
同時に、知の岡本-定季師匠と、職人集団を集めた。
「皆に集まってもらったのは他でもない。伊賀十二人衆の一人である森田-浄雲と力比べをすることになった。皆の知恵と力を貸してほしい」
「魯坊丸様、我らは魯坊丸様によって集められた者ばかりです。頭を下げずとも、力になります」
「そうか、頼む」
「どのような知恵が要りますか?」
「敵を知り、己を知れば、百戦してあやうからず。まず、浄雲を知りたい」
浄雲は見た目通り、ひょろっとして剛の者ではない。
しかし、その反射神経は尋常ではなく、千代女が持つ望月の意表を突く技にも反応し、持ち前の柔らかいしなりのある体で避けきったらしい。
戦い終わった浄雲の感想では、びっくり箱だった千代女を褒めていたらしい。
反射神経が異常に高いことがわかった。
次に、仁平太から毒が効かないという発言があった。
体が大きくないのは修行の過程の為だろう。
俺に仕える紅葉も毒の家系であり、あらゆる毒を幼い頃から試し、毒への耐性を高めている。
毒の影響なのか、紅葉の家系は体が小柄な者が多い。
浄雲は体が小さいというほど小柄ではないが、ひょろっとしており、筋肉モリモリのドシっとしたタイプではない。
加えて勘がよく、頭も回る。
性格がひねくれて、我が儘な性格を除けば、ほぼ完璧な忍びだった。
勝てる気がしない。
職人に新兵器などの進行状態を聞いたが、クロスボウや辛子玉で勝てる気がしない。
悩んでいると、廊下が騒がしくなった。
千代女が席を外して、事情を聞いて戻ってきた。
「何があった?」
「中根村の外れで爆発があったそうです」
「爆発?」
「今日は、離れの小屋で理科の実験を試しております。おそらく、それかと…………」
「無茶をしたな」
次世代を担う定季の子である良勝らは、俺から学んだことを追究する理科の実験が大好きだ。
この前も平賀-源内が製造したと言われるエレキテルを組み立て、海水から苛性ソーダを作っていた。
実は、苛性ソーダを作るのは簡単だ。
食塩(NaCI)に二酸化炭素 (CO2)と水(H2O)とアンモニア (NH3)を足して、中和反応すると炭酸水素ナトリウム (NaHCO2)が完成する。
その炭酸水素ナトリウム (NaHCO2)を熱分解すると、炭酸ナトリウム (Na2CO3)と二酸化炭素 (CO2)が取り出せる。
いずれ工業化できれば、石鹸の製造法も変わる予定だ。
大規模な二酸化炭素の回収方法って、どうやって作るんだ?
何をするにしても電気が必要であり、発電機の完成は目途も付かない。
薪とアルコールを材料とした発電方法もあるが、現実的ではない。
かと言って効率の悪い、薪発電やアルコール発電やバイオチップ発電は現実的ではない。
発電効率が上がれば、未来の発電システムだが…………それは千年くらい遠い未来の話だ。
まず、石炭を手に入れることが課題だ。
最近は彼奴らは危険な硫酸や塩酸という製造実験もやっている。
そのきっけかは鉄砲だ。
鉄砲を一発撃つと黒煙ですぐに次発が撃てないと、誰かが気づいた。
その解決策は、はじめからある。
ニトロセルロースを使った無煙火薬である。
無煙火薬が完成すれば、彼らは鉄砲の意義が変わると気づき、今は無煙火薬の製造に挑戦している。
どうせ大量生産できないので、彼らの熱意が結果に結びつかないことは敢えて言わない。
今回は、無茶して失敗したらしい。
怪我人はいないことを祈りたい…………待てよ。
硫酸と塩酸か。
俺の中で浄雲対策が1つ浮かんだ。
新しい年を清らかな御社殿でお迎えいただくため、二十五日に御煤納神事が行われる。
俺も奥神殿の煤を払う役目を賜った。
払いたまえ、清めたまえ。
最初に俺が軽く掃くと、俺のお仕事は終了だ。
後は神官らがぴかぴかに磨いてくれる。
外に出ると、多くの神官が神宮内の木々の煤を払う為に長い忌竹の箒で社の軒下や柱を揺らして、埃を払っていた。
あれで綺麗になると思わないが、気分の問題なのだろう。
日々の掃除を行っているので、そういう行事だと思って眺める。
朝の行事が終わると熱田神宮を後にして、北の熱田酒造所に足を向けた。
出荷も終わり、酒造りも一段落していた。
新仕込みを来年元旦に回し、新年を迎える為の掃除が行われていた。
皆、俺を見ると挨拶をしてくれる。
広場の片隅では、正月用の餅搗きの準備を子供らが手伝っている。
笑顔が溢れており、いい傾向だ。
秋の祭りが過ぎると、新しいカップルが婚儀を行って、嫁ぐ者や婿入りする者、新居を構えるものが沢山現れる。
夏祭りの夜に結ばれ、収穫が終わった頃に家族に紹介するパターンが多いらしい。
次に多いのが、この時期だ。
秋に周りで婚儀が広がると、焦った男や女が正月前に相手を決めて正月に婚儀を行う。
忙しい師走に告白ラッシュが続いているそうだ。
年を越すと、女性も年齢が一つ増える。
特に、二十歳を迎える女性は鬼気迫る。
俺からすれば、二十歳は若過ぎる方だが、この時代は行き遅れの阿婆擦れという評価を受けて、ますます婚儀から遠のくそうだ。
若い女が男らに体をすり寄せている景色がちらほらと見えた。
「若様も気になりますか?」
「夏には子供が増えそうだな~っと思っただけだ」
「気になるなら、私で試しますか?」
「楓、若様を唆すなど何事ですか」
「さくら、よく考えてみよ。千代女様とのはじめてで、若様が恥をかかないようにするのが、我らの務めだろう」
「なるほど。それでしたら侍女長代筆頭となった。このさくらがその任を受けます」
「さくらちゃん、楓がからかっているだけだから」
「さくら、楓、馬鹿なことを言うな。三歳の餓鬼を相手に何を言う」
「そうですか? あと少しで四歳です。早熟な餓鬼なら興味を持ち始めますよ」
「とにかく、俺が元服するまで、その話題はなしだ。特にさくら、今度言ったら、侍女長代を外して、見習いに戻すからな」
「はい。わかりました」
脅されたさくらが、楓に苦情を言っていた。
俺を案内してくれていた連が、笑いを堪えている。
覚えていると思うが、連は初代侍女長だったが、その能力を買って、今は酒造所の総長を務めてもらっている。
商人らとの交渉が巧く、取引や搬送の段取りをほとんど任せっきりだ。
津島の酒造所も最初の藏が三つ完成し、正月明けに稼働を開始する。
連には、津島の取引も任せるつもりだ。
さて、千代女は酒造所の南にある忍び村へ先に行ってもらっていた。
何でも問題児がやってきたらしい。
俺が雇う忍びは、俺の命令を忠実に守る者という条件を付けている。
腕前より規律を重視した。
最初の音羽-仁平太が率いた三十人は理想的な忍びであった。
第二弾の田屋-宗時の三十人は、ヤル気があり過ぎて活きが良かった。
それが原因で城の警備に伊賀者を雇うことになり、末森、守山、那古野、勝幡、犬山に配置することになり、俺は追加で百人を雇うことになった。
三ヶ月を掛けてやってきた伊賀者は総勢180人であり、上忍3人、中忍5人、下忍92人の合計100人と、残る80人は妻帯者の妻と子供である。
因みに、男女比率は男性88人、女性12人だった。
昨日、仁平太の使いがきた。
最後の組は、伊賀国の有力豪族である猪田郷を拠点とする森田家の一団だ。
やってきたのは、森田-浄雲 という39歳 (満38歳)の次期当主だった。
はぁ…………意味がわからん?
猪田郷には三百人以上が住んでおり、森田家と周辺の一派だけを加えると、忍びが百人を超える。
森田家ごと、召し抱える予定はない。
そして、やってきた理由が、「面白そうだから、代わってもらっただ」と言ったらしい。
森田家の当主は高齢であり、浄雲が事実上の伊賀十二人衆の一人らしい。
実力は仁平太の折り紙付き。
但し、自由奔放で誰かの下に付ける性格ではない。
尾張に行けば面白いことになると思ったので、来る筈だった上忍と交替してもらったという。
地味な城の警護をできるタイプではない。
という訳で、本来の方と交替してもらうように、朝から千代女が俺の名代としてお願いに行ってもらった。
・
・
・
忍びの村の広場でボロボロになった千代女が倒れている。
俺は千代女の側まで駆け寄った。
「千代。大丈夫か」
「若様、すみません。説得に失敗してしまいました」
「それはいい。大丈夫か」
「おそらく、大丈夫です。ですが、申し訳ございません」
「そんなことはどうでもよい」
俺が千代女と話していると、ひょろっとしたいけ好かない顔をした男が近付いてきて、俺を見下ろした。
その顔が少し残念そうに見えた。
だが、そんなことはどうでもいい。
俺は怒りを隠さずに男を見上げた。
「お前が浄雲か」
「お初にお目にかかります。森田-浄雲と申します。以後、お見知りおきを」
「千代をいたぶって何のつもりだ」
「その女が俺に帰れと命令したので、一太刀でも入れれば聞いてやるというと、このような仕儀となりました。お気に入りがいたぶられて、お怒りですか?」
「あぁ、怒っている」
浄雲の目が笑った。
俺を挑発したいらしい。
いいだろう。
乗ってやるよ。
「その女が熱狂するほどの主と聞いて期待していましたが、見た目通りで普通ですな」
「三歳の餓鬼に何を期待するのか?」
「その女が『若様は自分より、遙かに優秀だ』と豪語しておりましたから、どんな化物がくるかと期待しておりました」
「俺は怪物ではない。体に至っては普通だよ」
「それは残念」
「だが、頭の方は普通でないらしい」
「なるほど、そういう主ですか」
「俺の実力を知りたいか?」
「是非、お教えください」
「教えてやろう。だが、少し時間がほしい」
「五年ですか、それとも十年ですか?」
「五日だ。五日後に勝負だ」
「承知しました。お待ちしましょう」
俺は千代女の治療を終えると、中根南城に戻った。
ボロボロであったが、切り傷は浅く、骨折もなく、浄雲がかなり手加減をしてくれたと、千代女はいう。
だが、それだけ手加減されても一太刀も入れられなかった。
伊賀十二人衆の一人と称される実力は嘘ではない。
売り言葉に買い言葉を発してしまったが、はっきり言って勝機などない。
なければ、作るしかない。
翌日、俺は浄雲を知る仁平太や田屋-宗時、狡い技が得意な脇連衆の陽炎老人など、武の要を集めた。
同時に、知の岡本-定季師匠と、職人集団を集めた。
「皆に集まってもらったのは他でもない。伊賀十二人衆の一人である森田-浄雲と力比べをすることになった。皆の知恵と力を貸してほしい」
「魯坊丸様、我らは魯坊丸様によって集められた者ばかりです。頭を下げずとも、力になります」
「そうか、頼む」
「どのような知恵が要りますか?」
「敵を知り、己を知れば、百戦してあやうからず。まず、浄雲を知りたい」
浄雲は見た目通り、ひょろっとして剛の者ではない。
しかし、その反射神経は尋常ではなく、千代女が持つ望月の意表を突く技にも反応し、持ち前の柔らかいしなりのある体で避けきったらしい。
戦い終わった浄雲の感想では、びっくり箱だった千代女を褒めていたらしい。
反射神経が異常に高いことがわかった。
次に、仁平太から毒が効かないという発言があった。
体が大きくないのは修行の過程の為だろう。
俺に仕える紅葉も毒の家系であり、あらゆる毒を幼い頃から試し、毒への耐性を高めている。
毒の影響なのか、紅葉の家系は体が小柄な者が多い。
浄雲は体が小さいというほど小柄ではないが、ひょろっとしており、筋肉モリモリのドシっとしたタイプではない。
加えて勘がよく、頭も回る。
性格がひねくれて、我が儘な性格を除けば、ほぼ完璧な忍びだった。
勝てる気がしない。
職人に新兵器などの進行状態を聞いたが、クロスボウや辛子玉で勝てる気がしない。
悩んでいると、廊下が騒がしくなった。
千代女が席を外して、事情を聞いて戻ってきた。
「何があった?」
「中根村の外れで爆発があったそうです」
「爆発?」
「今日は、離れの小屋で理科の実験を試しております。おそらく、それかと…………」
「無茶をしたな」
次世代を担う定季の子である良勝らは、俺から学んだことを追究する理科の実験が大好きだ。
この前も平賀-源内が製造したと言われるエレキテルを組み立て、海水から苛性ソーダを作っていた。
実は、苛性ソーダを作るのは簡単だ。
食塩(NaCI)に二酸化炭素 (CO2)と水(H2O)とアンモニア (NH3)を足して、中和反応すると炭酸水素ナトリウム (NaHCO2)が完成する。
その炭酸水素ナトリウム (NaHCO2)を熱分解すると、炭酸ナトリウム (Na2CO3)と二酸化炭素 (CO2)が取り出せる。
いずれ工業化できれば、石鹸の製造法も変わる予定だ。
大規模な二酸化炭素の回収方法って、どうやって作るんだ?
何をするにしても電気が必要であり、発電機の完成は目途も付かない。
薪とアルコールを材料とした発電方法もあるが、現実的ではない。
かと言って効率の悪い、薪発電やアルコール発電やバイオチップ発電は現実的ではない。
発電効率が上がれば、未来の発電システムだが…………それは千年くらい遠い未来の話だ。
まず、石炭を手に入れることが課題だ。
最近は彼奴らは危険な硫酸や塩酸という製造実験もやっている。
そのきっけかは鉄砲だ。
鉄砲を一発撃つと黒煙ですぐに次発が撃てないと、誰かが気づいた。
その解決策は、はじめからある。
ニトロセルロースを使った無煙火薬である。
無煙火薬が完成すれば、彼らは鉄砲の意義が変わると気づき、今は無煙火薬の製造に挑戦している。
どうせ大量生産できないので、彼らの熱意が結果に結びつかないことは敢えて言わない。
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新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
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なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
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そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
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