エリザベートは悪役令嬢を目指す! <乙女ゲームの悪役令嬢に転生したからと言って悪女を止めたら、もう悪役令嬢じゃないよね!1>

牛一/冬星明

文字の大きさ
9 / 63

8.この腐れ外道め、私の覚悟を返せ!

しおりを挟む
スタンピード(集団暴走)が終息した。
半日も掛かった。
魔物さえ数が減れば、6人組の調査隊10組でダンジョンに突入できる。
平均レベル25の精鋭揃い。
こんなダンジョンはチョチョイのチョイだ!
あっという間に10層まで降りられるとおもったのに…………どうしてだ?

ダンジョンの攻略の総勢は、ダンジョン調査隊60人(自領の冒険パーティを含む6人10組)、魔物素材を回収する回収隊30人を2組、回収した魔石や素材を輸送する運搬隊60人、自領まで荷物を運ぶ荷馬車の御者と手伝いと護衛を含む120人、合計300人で挑んでいる。

よくこんな大勢が他領に進軍できたかと言えば、トリックがある。

我がヴォワザン家は秋の収穫期になると他領に魔石を売って小麦を大量に買う。
この小麦を買う為に荷馬車隊に12人の護衛を付けた。
5台編成の荷馬車隊を10組で50台分の護衛と人夫と御者含めて総勢300人になる。
これなら誰も不思議に思わない。

えっ、不思議に思うって?
ご安心召され!
王子の婚約者に選ばれた私は父上に願って善行を行った。
そうだ!
我がヴォワザン家は3,000人の貧困難民を引き受けた。
教会から大絶賛!
その難民の為に大量の食糧が必要になる。
多くの荷駄隊が結成されても誰も不思議に思わない。
小麦の保管場所に集積場を作り、買った小麦を一時保管する。
その集積所の近くで山崩れが起こり、未探索のダンジョンを発見された。
未発見のダンジョンは宝の山。
私達は急きょ調査隊を編成した。

というのが、シナリオだ。

未発見のダンジョンと聞いて、この地の領主が調査隊を派遣する。
それが遅れるほど都合がいい。

間抜けな領主だといいな!

マリアがダンジョンを捜索して帰ってくるまで調査隊が編成されたという記憶はない。
4日間は大丈夫だ。
それまでに財宝を手にいれて持ち出せば問題ない。
そう、問題ない。
問題ないハズだが、すでに半日が過ぎている。
時間が減ってゆく!

マリアは半日で10層まで行ったのに、同じ半日で私達はまだ6層にいる。

記憶と違う?
そんなことありません。
私は何回周回したと思っているのよ。

6層の迷宮の門に辿り着いたときは門が閉まっていた。
ゲームではマリアが到達したときはすでに門が開かれていた。
あははは、嫌な予感しかしない。

「ヴァルテル、ダンジョンで冒険者が死体になるとどうなるのかしら?」
「1日ほどでダンジョンに取り込まれます」
「装備品は?」
「装備品も一緒に消えます」
「この門の向こうに大量な魔物がいたとして、冒険パーティは耐えられるかしら」
「レベルによって違いますな?」
「この近くの町の冒険者のレベルならどうかしら」
「全滅しなければ、奇跡ですな!」

誰か門を開けた後にマリア達がダンジョンに来たとすれば、魔物はすべて外に逃げ出していた。
簡単に攻略できた訳だ。

「気を引き締めろ! 何が起こっても慌てるな!」
「姉様、何があるのです」
「判らない。判らないから覚悟しなさいと言っている」
「魔爆弾もいつでもいけるわね」
「はい」
「魔法銃は門を開閉後に一斉発射、その後に前衛が突入します。魔法士はすぐに交代して援護に入るように、あとは臨機応変、各自の判断に任せます」
「おうぉ!」

それを合図に門が開かれた。
嫌な予感は当たった!
再び、スタンピード(集団暴走)だ。

レベル10くらい!
トロルとか体かデカくて丈夫でやり難い。
リビングアーマーとか固いし、急所以外は攻撃無効とか無しよ。
クァールは豹そっくりの魔物で長い髭が無ければ豹ですよ。
めっちゃ速すぎ!
ジャガーノートはトロルの亜種ですか?
大きさはトロルと同じくらいのに断然に強かった。
それを片づけると次がやってきた。
オーガーとリザードマンとアークコボルトとかレベル15を超えていますよね!
口に牙と指の爪が滅茶苦茶ヤバいです。
デカい奴と速い奴が混ざると収拾がつなかい。
負傷者が増大中!
何とか凌いだと思った所にミノタウロスが大量に上がってきた。

「お嬢様、もう駄目です。逃げましょう!」
「メルル、黙って負傷者を回収してきなさい」
「あの中ですか! 無茶ですよ」
「援護します。早く行きなさい」
「お嬢様の馬鹿!」

馬鹿と言いましたか、あとでおしおきマシマシね!
長時間の戦闘で疲れはピークに達しており、負傷者も増えた。
魔力回復の魔法薬は早々と尽き、治療薬もなくなった。
魔法士は魔力が尽きて瞑想中、使えるモノは全部使った。
でも、ミノタウロスの数は増えるばかりで減ってない。
皆、がんばって次々と倒している。
倒しているが倒した数より上がってくる数の方が多い。

戦力が3割を切ったら全滅!
もう、撤退するべきだ。
頭の中で警鐘がなっている。
そうだ、メルルの手を借りている時点で終わっている。

見積もりが甘すぎた。
調査隊の数が少なかった。
魔力回復薬をもっと揃えておくべきだった。
魔法銃も数があったなら!
後悔ばかりが頭を過る。

「勇敢な兵士よ。わたくしに撤退の文字などありません。たとえ死しても躯となってもここを死守せよ!」

私は叫んだ!
兵が「おぉ!」っと雄叫びを上げてくれる。

「お嬢様を守れ!」
「女神の試練だ」
「乗り越えるぞ!」
「片腕が無くなったくらいで怯むな!」

士気だけは回復した。
空元気だけどね!
逃げる?
どこに逃げ場所があるの?

ミノタウロスが門を抜けた瞬間に本当の全滅よ!

私達いなくなれば、上にいる者も抗う手立てがない。
ふふふ、見誤った。
逃げる選択など最初からない。

死ぬ気はないけど、死なばもろともだ。
耐えきれ!
死中に活あり、背水の陣だ。

そんなことを考えながら魔法銃の引き金に魔力を流した。
ズキュ~ン!
糞ぉ、当たらない。

「お嬢様、ここの指揮をお願いします」
「判ったわ」

大まか指揮は私が言うが、細かい指揮はヴァルテルが出していた。
その家令のヴァルテルが撃って出てくれるらしい。
バスターソードを手に取った。
ヴァルテルは強い。
練習で散々虐められている私がよく知っている。
これで形勢が少し…………?

ズバズバスバ、なんじゃこりゃ!

飛び出したヴァルテルはまるでバターを切るようにミノタウロスを切り倒していった。
一人だけレベルが違う。
50匹ほどいたミノタウロスを一人で始末した。

「何を遊んでいる。もたもたすると次が来るぞ!」

帰り際に部下に檄を送って戻ってきた。

「ヴァルテル、私は精鋭を連れてきなさいと言ったわよね」
「はい、お嬢様」
「わたくしを騙したわね」
「いいえ、我が一族の若手・・・の精鋭でございます」
「ベテランを入れておきなさいよ。いるのでしょう!」
「ははは、ダンジョンの10層ですよ。ベテランを入れては訓練にもなりません。私一人でも余裕でございます。他に要りますか?」

こいつ、訓練と言い切りやがった。
最初からピンチでも何でもなかったのね。
この腐れ外道!

私が削った覚悟を返せ!

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした

タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

処理中です...