エリザベートは悪役令嬢を目指す! <乙女ゲームの悪役令嬢に転生したからと言って悪女を止めたら、もう悪役令嬢じゃないよね!1>

牛一/冬星明

文字の大きさ
20 / 63

19.王都でも聖女するの?

しおりを挟む
社交界シーズンも終わりが近づき、締めのアポニー家主催の舞踏会が近づいてきた。
1ヶ月(42日)間の戦いもあと1つ、宰相の舞踏会が最後になる。
アポニー家は上位の貴族を招待しないことで有名であり、招待されるのは取り分け話題になった者か、同格の貴族に限られる。

母上は笑い種に呼ばれたと悲観的になっていた。

もう舞踏会で商談の話はしていないよ。
こちらから先に断っている。
帰る度に叱られるこっちの身になってよ。

ここからは貴族の順列で我が家の方が格上なのでそれもできる。
もちろん、訴えられたら大変だから商人を先に行かせて商談を終わらせているよ。
ない袖は振れないから、来年の2番艦の就航後という条件付きだ。

母上のライバルだった貴族の舞踏会も終わって落ち着きを取り戻した。

「やっと平和が戻ってきたわ。そう思わない、アンドラ!」
「僕はどちらかと言えば、魔の森でレベル上げの方が憂鬱です」
「そういうイベントもありましたね」
「どういう場所なのですか?」
「わたくしも知らないのよ」
「また、ダンジョンみたいなことになるのでしょうか?」
「知らない。でも、ヴァルテルが手を抜いてくれると思う」
「思いません」
「アンドラ、頼りにしているわよ」
「はい、がんばります」

可愛いアンドラに守って貰うのも悪くないかも!
そう言ってお茶を取って口に含む。
優雅だ。
お嬢様っぽいな!
今日のエリザベートは貴族令嬢よ。
最近、ちょっと不思議に思っている。
もっとゆったりとした生活が待っていると思っていたのにブラック企業並の忙しさだ。
これが貴族なの?
何か間違っていると思わない。

アンドラと優雅な午後ティーを楽しんでいると家令のヴァルテルが入ってきた。

「お嬢様、よろしいでしょうか?」
「母上からあまり話題になることは自重しろと言われているのよ」
「申し訳ございません。その自重は今しばらくお待ち下さい」
「今度は何かしら?」
「ラーコーツィ家とセーチェー家が金山を巡って対立したことから、金山を斡旋したシャイロックへの監視が強くなり、連絡が取れない状態が続いております。加えて、シャイロックの後ろ盾にはラーコーツィ家の令嬢がいるのではないかという噂が流れ、その証拠を探ろうとするねずみが多く、身動きが取れません」
「薬が効き過ぎましたようね?」
「はい、そのようです」

ラーコーツィ家の令嬢が後ろ盾という証拠を持って、セーチェー家に売りに行けば高値で買ってくれるに違いない。
シャイロックが始末されても別に困ることはない。
敢えて言えば、ドーリの誘拐の主犯を選定し直すのが面倒臭いくらいだ。
あれぇ?

「ヴァルテル、アポニー家の番犬(諜報隊)の裏をかいて、アポニー家の令嬢を誘拐することはできそうかしら?」
「できないことはございませんが、かなり困難でございます」
「そうよね! 王宮の密偵が無能な訳はないわね」

そう考えると大きく予定が変わってくる。
シャイロックくらい悪知恵が働く者がいなかったなら、ドーリの誘拐が未遂で終わるかもしれない。

それはちょっと困るかも?

誘拐されたドーリを救出することで、アポニー家に恩を売るチャンスを失ってしまう。
少し不満だが、ヴァルテルの要望を聞くとしよう。

「仕方ありませんね。何をすればいいのかしら?」
「冒険ギルドに行って頂き、ヴォワザン家紐付きの調査員を大量に仕入れて頂きたいと存じ上げます」
「何を調べさせるの?」
「悪路(下町)の民草の動向を調べて頂きたいと思います」
「いっその事、教会を通じて炊き出しでも始めましょうか?」
「それがよろしいかと」

王都でも『聖女』の称号をマリアから奪えということかしら!
計画がドンドン前倒しになっていく感じね。

「判りました。大司教様に連絡を入れなさい。教会に向かった後、その足で冒険ギルドに向かいます」
「手配しておきます」
「アンドラ、一緒に怒られてくれるかしら」
「姉様が望まれるならば」
「望みます」
「畏まりました」

大司教様は意外と暇だったようで翌日の面会が取れた。
早朝から馬車に乗って教会に向かって、大聖堂でお祈りを上げてから大司教と面会した。
恵まれない子羊の為に住居を作り、炊き出しを行い、職業を斡旋する。
その費用をすべてヴォワザン家が出すと提案すると、北の空き地を無償で貸して頂けることになった。

「エリザベート殿は聖女のようなお方と窺っておりましたが、正に聖女でございますな!」
「いいえ、わたくしはこの王都が少しでも清潔になればと考えているだけでございます」
「衣・食・住となりますと、相当な額が必要になりますぞ」
「大丈夫でございます。王都の商人の方々はわたくしの願いを聞いて、教会に寄付を集ってくれると信じております」
「香辛料様々ですな!」
「何のことでしょう。わたくしは商人の善意を信じているだけでございます」
「ははは、そうでした。神の御心でございます。どうぞ、土地はお好きなようにお使い下さい」
「敬虔なる子羊を導きましょう。炊き出しを受ける資格のある者は信徒となること、週に1度の奉仕に参加することと致します」
「大変、結構でございます。ところで、今すぐにとは申しませんが…………」

大司教様はにこにこと笑みを浮かべ、手は商人のように手もみをしていた。
大聖堂の修繕費や修学所の建設など、香辛料の売り上げに応じて献金額を増やすことを切に望まれた。
大変に腹黒く、話の判る方でした。

ヴァルテルは面接にいくらの献金を送ったのかしら?

日取りが今日になった訳がよく判ったわ。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。 本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。 しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。 特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。 せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。 そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。 幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。 こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。 ※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

処理中です...