エリザベートは悪役令嬢を目指す! <乙女ゲームの悪役令嬢に転生したからと言って悪女を止めたら、もう悪役令嬢じゃないよね!1>

牛一/冬星明

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20.冒険ギルドに行ってみよう。

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軽快に馬車は走った。
少し枯れた草原の中を走ってゆく。
緑の大草原を疾走するという美しい景色でないのが残念だ。
山を越えた西側の方は緑が多いと聞く。

「姉様は何をご覧になっているのですか?」
「ここ緑の草原にできないかと思案しているのよ」
「いつも壮大なことを考えられるのですね」
「赤茶けた土の色が気にいらないだけです」

この世界は不思議だ。
雨が降らなくとも魔力溜まりがある場所では木々を多く茂って、緑の美しい景色に変わってゆく。
でも、魔物が生まれて危険な土地になるのよ。

そんなことを考えていると、丘を越えて森を抜けて都市が見えてきた。
私らを乗せた馬車は大公園を横切ってギルド街へ向かって行った。

冒険ギルドに到着すると受付嬢が出迎えてくれた。
建物も中も清潔を維持している。
少し臭う冒険者がいるくらいであり、頭から魔物の返り血を被ったままでやってくる馬鹿はいないようだ。
私達はダンジョンで冒険者は慣れている。
だから、気にすることもなく入っていったが、ギルドに来る貴族は少ないようだ。
王都ギルド本部の冒険者達が私らを見て騒然となった。
遠巻きに見る者、
興味そうに覗き見る者、
我関せずと出てゆく者、
そして、絡んでくるおバカな者もいた。

「けけけ、お嬢ちゃん! ここはお遊戯をする場所じゃないぜ!」
「下がれ下郎。臭い息を吐くでない」
「臭い息だと! お高くとまるじゃない。ここは冒険ギルドだ。お子様が来る処じゃないんだよ」
「顔を悪いが、頭も悪いらしいな!」
「おいよせ、貴族だぞ」
「うるせい黙っていろ!」

馬鹿を止めに仲間が集まってきたようだ。
仲間は6人。
標準的な冒険者パーティのようだ。
皆、足音のたて方がベタ足だ。
レベルは10~15くらいと初心者に毛が生えたような連中に見えた。
リーダーともう一人がレベル20くらいか!?
少しまともそうだが、馬鹿が4人も集まると止まらない。

「どうか仲間の無礼をお許し下さい」
「許す」
「ありがとうございます」
「駆け出しの冒険者として精々がんばるのだな!」
「ちょっと待て! 誰が駆け出しの冒険者だ」
「オルクス、黙れ!」
「リーダー、貴族だからって頭を下げることはない。俺達はC級のベテラン冒険者だ」
「自分の実力も知らぬ者は吠えるな!」

私の流し目にリーダーが体を震えさせた。
殺気を感じて剣を取ろうとしたが思い留まったらしい。
もう一人も身構えている。
やはり、この二人は悪くない。
後ろの四人は全然駄目だ。
殺気に反応しないばかりか、制止していたリーダーの手が外れたことでこちらに寄ってきた。
私達が子供という見た目だけで舐めているのだろう。

確かに年端もいかない少女と少年、お付きのメルルとシャルロッテも若い少女だ。
きょろきょろとする挙動不審のメルルは特に舐められ易い。
でも、レベルを言えば、メルルもレベル20もある。

「メルル、恐れる必要はありません。躾けの悪い野良犬です」
「何だと!」
「餓鬼が調子に乗るな!」

軽い挑発に反応して、格下の二人が剣に手を掛けて襲ってきた。
シーフらしい奴がすばやく懐に入ろうとしている。
振り返った受付嬢が止めようとしている。
ちょっと遅かった。
無詠唱で『アース。ウォール』の魔法が発動しておいた。
無透明な壁にぶつかって、顔が変な方向に曲がっている。
周りの冒険者が小声で騒いている。

「おぉ、無詠唱だぜ!」
「大したものだ」
「嘘でしょう」
「私、無詠唱で魔法なんて使えませんよ」
「ディファレント(防御)か?」
「バリィア(盾)だろ?」

ただのアース・ウォールです。
心の中で返しておいた。
本来なら木の床を突き破って盛り上がる所だが、少し自重して純粋な魔力のみで作ってみた。
魔力供給を解除すると、すぐに崩壊がはじまる。

「申し訳ございません。この馬鹿を叱っておきます」
「よろしくお願いします」
「アンドラ、行きましょう」
「はい、姉様」
「お嬢様はお強いです」
「メルルだって勝てますよ」
「むむむ、無理です」

ただの侍女がミノタウロスの群れの中をゴリラのような冒険者を引き摺って生き残れる訳がない。
力仕事が得意なメルルだったが、レベルが上がって怪力と呼べるほど力だけが強くなっている。
もしかすると本当に『怪力』や『強力』などのスキルを手に入れているかもしれない。
この世界はステータス画面が表示されないので知る術がない。
レベルだけは特殊な魔法宝具で見ることができるので、それを目安にする。

そう言えば、大昔の冒険者の中に『鑑定』というスキルを手に入れた者がいたと文献に書かれていた。
そのスキルを手に入れれば、各ステータスやスキルが見ることができるかもしれない。
まぁ、伝説の話だけどね。

「大変ご迷惑を掛けました。ギルド本部長としてお詫びいたします」

応接間に入ると駆けつけたギルド本部長が最初に謝罪をした。
トメック・ファン・セバスティアン卿と名乗る。
ギルド長になると貴族と繋がりが深くなり、一代貴族の称号が送られるらしい。

「なるほど、各地の相場や噂話をまとめるだけで、金貨1枚と交換して頂けると」
「そういうことです。交易所としては相場の情報が一番重要になってきます。もちろん、内容によって追加の報酬も払わせて頂きます」
「承知致しました。引き受けさせて頂きましょう」

冒険ギルドにとっておいしい話だ。
冒険ギルドは月1度のギルド便を走らせている。
各ギルド支部に物の値段を報告させるだけで確実に金貨1枚が毎月入ってくる。
片手間でできる簡単なお仕事だ。

もちろん、ほぼ同じような物が商業ギルドにも存在するが支部が少ない上に、その重要性を把握しているので秘匿する者も多い。
特に国外の相場情報には30品目ごとに別途に金貨1枚の値段を付けておいた。
国内なら大銅貨5枚、国外なら銀貨2枚くらいのクエストとして、各支部の張り出されることを祈っている。

そして、もう一つの目的である悪路(下町)の情報を集めてくれる情報屋が入ってきた。

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