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35.損なんて関係ないのよ。
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トーマの提案で臨時総会を開くことした。
母上が心配したように南方交易所に投資している商人も心配している。
安心は信用に繋がる。
もちろん、王都で我が家の屋敷だ。
南方交易所と言っても今では南方の商人だけではない。
王都、東領、中央領の商人も加わっている。
個人商店を合わせると200店を超えた。
臨時総会は王都の商会の会頭と支店長の50名が集まってきた。
「みなさん、急な会合に参加して頂いてありがとうございます」
「いえいえ、開いて頂いて感謝します」
「エリザベート様のことですから心配はしておりませんが、話をする機会を作って頂いて助かります」
「小さい店ほど心配しておりましたから」
「そう、そう、巧く国王に掠め取られましたからな!」
「その通りでございます。御存知と思いますが、少し下手を打ちました。そのご報告をさせて頂きます」
エリザベート商会で販売している最高級のお菓子を並べ、お茶を飲みながらの優雅な総会だ。
例年なら社交界シーズンに合わせて1月に王都で開いていた。
巨大な損失を出したままで6ヶ月も放置できない。
皆、ヴォワザン家の損失が気になるだろう。
「そこに書かれているのは仮の決算書です。今回の損失は150万金貨相当になる予定です」
まるで何事もなかったように損害額を言う。
小さな商会なら青ざめる額だが、流石に王都で店を構える会頭や店長は驚かない。
じっくりと資料を眺めて吟味している。
「ははは、やってしまいましたな!」
「ホント、欲を掻き過ぎました」
「しかし、噂と少し違うようですな!」
「どこか気になった所がございますか?」
「噂では、すべての小麦を相場の2倍で国王が買い上げたと聞き及びました」
「事実でございます。我が家が寄付した小麦を除いて、すべてお買い上げ頂きました」
「教会への寄付を除いてですか?」
「はい、除いてです」
「国王も存外、ケチでございますな! おっと、これは失言だ。聞かなかったことに」
ははは、皆が笑いを飛ばした。
思った以上の損失を出しているが、香辛料というカードを持っているので、どんな大きな損失であっても問題はない。
大商人ほど、その意味を理解している。
ふふふ、商人たちの柔らかい笑みを見て、私も安心してお茶を飲んだ。
大店の代理店を任されている会頭は度胸がある。
「御存知と思いますが、この度の内情はすべて非公開でございます。王国を救ったのは国王であって我が家ではありません。皆様は南方交易所のメンバーでございますから、小麦を販売して決算をお見せしない訳にはいきませんが、決して口外なさらぬようにお願いします」
「承知しております」
「では、そちらトーマから損失を埋める計画を発表してさせます」
ここでは魔女だの、錬金術とは言わないよ。
膨大な投資から得る利益は少しずつ増えてゆき、3年で黒字化し、その後は借金が減っていく事業計画を発表する。
こんなに沢山のお金を貸しているので返ってくれば、借金なんて問題ない。
母上と違って、この数字を見ただけで理解してくれる商人は助かる。
さらに、商人イレーザに貸し出した新造艦の説明をする。
マスト2本の超大型交易船は輸送量が倍に増える。
これには商人らも喰いついた。
北方交易でも使えるので、新規の造船所を作れないかとかいうが無理だ。
土地がない。
今後の課題となった。
「この表の通り、来年以降、香辛料の取引量が大幅に増えてゆきます。しかし、昨年の小麦買い取りで香辛料を対価として支払いました。今後、北方交易においても香辛料の版図が増えると思われます」
「エリザベート様、お見事です」
「はじめから北方交易を狙っておりましたな!」
「損失など軽く吹き飛びますぞ」
「感服しました」
「お恥ずかしい限りでございます」
商人は聡い!
説明しなくとも意図を見抜いてくれる。
小麦の損など関係ない。
最初から別の意図があったことを理解してくれた。
香辛料の取引が増えれば儲かるというものではない。
増えすぎれば値段が暴落して儲けが少なくなる。
だから、需要を増やさなければならない。
北方諸国は新しい開拓地なのだ。
王都で余り始めた香辛料を北の国々に売れば、それ以上の利益を生む。
小麦を買い取ることで取引相手は作った。
少量であったが、すでに取引を開始している。
後は南から入ってくる輸入量を増やすだけになっている。
「次にエリザベート商会で新型の馬車を販売いたします」
「あれか!」
「揺れが少ないという奴ですね」
「さらに、ご興味の大砲と銃の販売も来年度よりはじめます」
「年内に国王に献上しておきます。興味がある方は注文を取ってきて下さい」
「資料は封筒に入っております。資料を見せることは許可しますが、模写させることも貸し出しも禁止致します。ご注意下さい」
「これが新造艦に積まれている大砲ですか!」
「魔法士が必要なのですな!」
「生活魔法ができる程度で扱えます。人材の確保は困らないと思いますわよ」
「なるほど」
「銃・大砲と同時に、生活向上の魔法具も来年度より販売したします。布と同じく、卸のみです。販売の登録をご期待しております」
販売予定のカタログを見て、心がドキドキしないようなら商人じゃない。
次に儲け話に夢中になった。
小麦の損失なんて、星の彼方だ!
「ところで、エリザベート様」
「何か?」
「我が主が南方交易会に加盟したと申しております」
えっ?
我が主って、王都の大店の商会でしょう。
どうして、そんなことを言う。
香辛料の取引なら取次店で十分でしょう。
「我が主は為替取引に興味を持たれました」
「トーマ、どういうことだと思う」
「保管している金貨を我がヴォワザン家に預けておきたいということですな!」
えっ、マジで銀行に加えて、貸し金庫にする気か?
トーマが説明では、
討ち入りにあった商会は息子を店主に店を再開している。
店の主人が殺され、店の商品と金品が奪われた。
普通なら立ち直すのは大変なことだ。
しかし、1週間後で商会を再開した。
理由は簡単だ。
金庫から奪われたのは証文だった。
証文を金に換えようとした馬鹿は警邏に捉えられた。
総資産のほとんどを失わなかった。
新店主は証文の再発効を行うだけで資産が戻ってきた。
これがわずか1週間で店を再開できた理由だ。
王都の大店の金庫に大量の金貨が保管されている。
その片隅に南方交易所の証文がある。
強盗団や火事で金庫を失っても証文の分は必ず戻ってくる。
しかし、金貨は戻ってこない。
南方交易会に加盟すると、その金貨を預けることができる。
すべて預けるつもりはないだろうが、半分預ければ、大きな担保になると思ったようだ。
大店のプライドはどこに行った!
「お待ち下さい。それができるなら主人もやると思います」
「ウチも一度話させて頂きたい」
「ウチも参加します」
大店の5店の内、4店の代理が手を上げた。
ちょっと引くわよ。
いくらの金貨を預ける気なの?
おそらく、その金額がデカ過ぎる!
母上が心配したように南方交易所に投資している商人も心配している。
安心は信用に繋がる。
もちろん、王都で我が家の屋敷だ。
南方交易所と言っても今では南方の商人だけではない。
王都、東領、中央領の商人も加わっている。
個人商店を合わせると200店を超えた。
臨時総会は王都の商会の会頭と支店長の50名が集まってきた。
「みなさん、急な会合に参加して頂いてありがとうございます」
「いえいえ、開いて頂いて感謝します」
「エリザベート様のことですから心配はしておりませんが、話をする機会を作って頂いて助かります」
「小さい店ほど心配しておりましたから」
「そう、そう、巧く国王に掠め取られましたからな!」
「その通りでございます。御存知と思いますが、少し下手を打ちました。そのご報告をさせて頂きます」
エリザベート商会で販売している最高級のお菓子を並べ、お茶を飲みながらの優雅な総会だ。
例年なら社交界シーズンに合わせて1月に王都で開いていた。
巨大な損失を出したままで6ヶ月も放置できない。
皆、ヴォワザン家の損失が気になるだろう。
「そこに書かれているのは仮の決算書です。今回の損失は150万金貨相当になる予定です」
まるで何事もなかったように損害額を言う。
小さな商会なら青ざめる額だが、流石に王都で店を構える会頭や店長は驚かない。
じっくりと資料を眺めて吟味している。
「ははは、やってしまいましたな!」
「ホント、欲を掻き過ぎました」
「しかし、噂と少し違うようですな!」
「どこか気になった所がございますか?」
「噂では、すべての小麦を相場の2倍で国王が買い上げたと聞き及びました」
「事実でございます。我が家が寄付した小麦を除いて、すべてお買い上げ頂きました」
「教会への寄付を除いてですか?」
「はい、除いてです」
「国王も存外、ケチでございますな! おっと、これは失言だ。聞かなかったことに」
ははは、皆が笑いを飛ばした。
思った以上の損失を出しているが、香辛料というカードを持っているので、どんな大きな損失であっても問題はない。
大商人ほど、その意味を理解している。
ふふふ、商人たちの柔らかい笑みを見て、私も安心してお茶を飲んだ。
大店の代理店を任されている会頭は度胸がある。
「御存知と思いますが、この度の内情はすべて非公開でございます。王国を救ったのは国王であって我が家ではありません。皆様は南方交易所のメンバーでございますから、小麦を販売して決算をお見せしない訳にはいきませんが、決して口外なさらぬようにお願いします」
「承知しております」
「では、そちらトーマから損失を埋める計画を発表してさせます」
ここでは魔女だの、錬金術とは言わないよ。
膨大な投資から得る利益は少しずつ増えてゆき、3年で黒字化し、その後は借金が減っていく事業計画を発表する。
こんなに沢山のお金を貸しているので返ってくれば、借金なんて問題ない。
母上と違って、この数字を見ただけで理解してくれる商人は助かる。
さらに、商人イレーザに貸し出した新造艦の説明をする。
マスト2本の超大型交易船は輸送量が倍に増える。
これには商人らも喰いついた。
北方交易でも使えるので、新規の造船所を作れないかとかいうが無理だ。
土地がない。
今後の課題となった。
「この表の通り、来年以降、香辛料の取引量が大幅に増えてゆきます。しかし、昨年の小麦買い取りで香辛料を対価として支払いました。今後、北方交易においても香辛料の版図が増えると思われます」
「エリザベート様、お見事です」
「はじめから北方交易を狙っておりましたな!」
「損失など軽く吹き飛びますぞ」
「感服しました」
「お恥ずかしい限りでございます」
商人は聡い!
説明しなくとも意図を見抜いてくれる。
小麦の損など関係ない。
最初から別の意図があったことを理解してくれた。
香辛料の取引が増えれば儲かるというものではない。
増えすぎれば値段が暴落して儲けが少なくなる。
だから、需要を増やさなければならない。
北方諸国は新しい開拓地なのだ。
王都で余り始めた香辛料を北の国々に売れば、それ以上の利益を生む。
小麦を買い取ることで取引相手は作った。
少量であったが、すでに取引を開始している。
後は南から入ってくる輸入量を増やすだけになっている。
「次にエリザベート商会で新型の馬車を販売いたします」
「あれか!」
「揺れが少ないという奴ですね」
「さらに、ご興味の大砲と銃の販売も来年度よりはじめます」
「年内に国王に献上しておきます。興味がある方は注文を取ってきて下さい」
「資料は封筒に入っております。資料を見せることは許可しますが、模写させることも貸し出しも禁止致します。ご注意下さい」
「これが新造艦に積まれている大砲ですか!」
「魔法士が必要なのですな!」
「生活魔法ができる程度で扱えます。人材の確保は困らないと思いますわよ」
「なるほど」
「銃・大砲と同時に、生活向上の魔法具も来年度より販売したします。布と同じく、卸のみです。販売の登録をご期待しております」
販売予定のカタログを見て、心がドキドキしないようなら商人じゃない。
次に儲け話に夢中になった。
小麦の損失なんて、星の彼方だ!
「ところで、エリザベート様」
「何か?」
「我が主が南方交易会に加盟したと申しております」
えっ?
我が主って、王都の大店の商会でしょう。
どうして、そんなことを言う。
香辛料の取引なら取次店で十分でしょう。
「我が主は為替取引に興味を持たれました」
「トーマ、どういうことだと思う」
「保管している金貨を我がヴォワザン家に預けておきたいということですな!」
えっ、マジで銀行に加えて、貸し金庫にする気か?
トーマが説明では、
討ち入りにあった商会は息子を店主に店を再開している。
店の主人が殺され、店の商品と金品が奪われた。
普通なら立ち直すのは大変なことだ。
しかし、1週間後で商会を再開した。
理由は簡単だ。
金庫から奪われたのは証文だった。
証文を金に換えようとした馬鹿は警邏に捉えられた。
総資産のほとんどを失わなかった。
新店主は証文の再発効を行うだけで資産が戻ってきた。
これがわずか1週間で店を再開できた理由だ。
王都の大店の金庫に大量の金貨が保管されている。
その片隅に南方交易所の証文がある。
強盗団や火事で金庫を失っても証文の分は必ず戻ってくる。
しかし、金貨は戻ってこない。
南方交易会に加盟すると、その金貨を預けることができる。
すべて預けるつもりはないだろうが、半分預ければ、大きな担保になると思ったようだ。
大店のプライドはどこに行った!
「お待ち下さい。それができるなら主人もやると思います」
「ウチも一度話させて頂きたい」
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