エリザベートは悪役令嬢を目指す! <乙女ゲームの悪役令嬢に転生したからと言って悪女を止めたら、もう悪役令嬢じゃないよね!1>

牛一/冬星明

文字の大きさ
40 / 63

37.優雅な一日の終焉。

しおりを挟む
6月の式典に行った父上から手紙が届いた。

「父上が国王の晩餐会の招待を受けたそうです」

晩餐会はディナーの一種であり、招待を受けて出席する最高位の食事のことだ。
王族主催の社交会と別会場で晩餐会が開かれていた。

考えてみれば合理的だ。
いつまでも社長や重役など上司が居ては下っ端の社員は楽しめない。
監視が緩くなれば、派閥や部署を超えての交流もできる。

「母上、おめでとうございます」
「何を言っているの! 貴方達も出席するのですよ」
「わたくしもですか?」
「第一王子の婚約者は貴方でしょう」

そんな設定もありましたね!

 ◇◇◇

ゲームの設定では、秋の大不作によって王国内で暴動が起こった。
国力が落ちたのだ。
2年後、隣国が30年ぶりに戦端を開き、ラーコーツィ家の領都を奪われそうになるほど押し込まれる。
それを救ったのが、我が父が用意したポーションであった。
大量のポーションを用意したことで瀕死の兵達が復活し、敵国を追い返す原動力となったのだ。
この戦乱でラーコーツィ家が弱体化し、ヴォワザン家が強化された。
その結果、エリザベートは第一王子オリバーの婚約者として学園に入学する。

エリザベートが王族の晩餐会と舞踏会の招待されていたのは14歳の春ではないだろうか?

3年早く呼ばれることになった。
ゲームの画面では何度も見た王子だが、会うのは初めてになる。
オリバー王子はこれをどう思うだろう。
吉兆、それとも最悪と思われるのか?

「姉様、どうかされました?」
「オリバー王子はどう思われるかと考えたのです」
「あぁ、その心配ですか!」
「アンドラなら判るでしょう」
「王子は姉様を嫌っていますからね」
「そんなことはあり得ません。王が決められたことです。それにはじめて婚約者と会えるのです。お喜びになるに決まっているではありませんか!」
「母上、そうですね。そうに違いありません」
「そうです。我が家の力を示せたことで王子の後ろ盾として認められたのです。名誉なことです」

母上はオリバー王子の噂を知らないらしい。
王になるには、王族の姫、あるいは、ラーコーツィ家、セーチェー家の姫である慣例があり、私が婚約者である限り、オリバー王子は王になることはあり得ない。
それは母上も承知している。
だから、母上はオリバー王子が家を興されて南領を治めると考えておられる。
中央領、東領に継ぐ、第3の大領主侯爵の誕生だ。

もしかすると、我が国はじめての公爵家が誕生するかもしれない。

それは名誉なことだ。
考えようによっては、堅苦しい王になるより気楽に生きることができる。
オリバー王子がそれで満足していればよかったのだが、オリバー王子はそう考えなかった。
王になれない駄目王子と罵られ続けていることを悔しがり、侍女達に私を罵倒する言葉を吐いているらしい。
少なくとも好意的ではない。

「どんな顔で出迎えてくれるのか楽しみよね!」
「姉様にとって楽しい出会いであることを祈ります」
「ありがとう」
「エリザベート、早く湯あみに行ってきなさい。それが終わったのなら髪をときなさい。時間がありませんよ」
「大丈夫です。母上、まだ十分に時間はあります」

お茶でのんびり過ごすつもりの優雅な一日が消えてしまった。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

乙女ゲームの悪役令嬢は前世の推しであるパパを幸せにしたい

藤原遊
ファンタジー
悪役令嬢×婚約者の策略ラブコメディ! 「アイリス・ルクレール、その波乱の乙女ゲーム人生――」 社交界の華として名を馳せた公爵令嬢アイリスは、気がつくと自分が“乙女ゲーム”の悪役令嬢に転生していることに気づく。しかし破滅フラグなんて大した問題ではない。なぜなら――彼女には全力で溺愛してくれる最強の味方、「お父様」がいるのだから! 婚約者である王太子レオナードとともに、盗賊団の陰謀や宮廷の策略を華麗に乗り越える一方で、かつて傲慢だと思われた行動が実は周囲を守るためだったことが明らかに……?その冷静さと知恵に、王太子も惹かれていき、次第にアイリスを「婚約者以上の存在」として意識し始める。 しかし、アイリスにはまだ知らない事実が。前世で推しだった“お父様”が、実は娘の危機に備えて影で私兵を動かしていた――なんて話、聞いていませんけど!? さらに、無邪気な辺境伯の従兄弟や王宮の騎士たちが彼女に振り回される日々が続く中、悪役令嬢としての名を返上し、「新たな人生」を掴むための物語が進んでいく。 「悪役令嬢の未来は破滅しかない」そんな言葉を真っ向から覆す、策略と愛の物語。痛快で心温まる新しい悪役令嬢ストーリーをお楽しみください。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

処理中です...