36 / 80
第36話
しおりを挟む第36話 創造の臨界点
――世界が、軋む音を立てていた。
現夢時代を包んでいた虹色の空が、
いま、金と紫に二分されている。
その中心で、二人の“エリス”が対峙していた。
一人は現実を創り続ける者。
一人は終わりを与え、永遠を固定しようとする者。
創造と停止。
運動と安定。
両者のぶつかり合いが、想界の法則を崩壊へと導いていた。
⸻
金の光を纏った“エリス”が叫ぶ。
「あなたの世界は、呼吸をしない!
それは永遠じゃない、ただの“閉じた箱”よ!」
黒く輝く“虚数のエリス”が微笑む。
「でも、箱の中には“痛み”がない。
争いも、喪失も、絶望も……もう誰も泣かないの。」
「それは“生きてない”!」
「違うわ。“完成している”の。」
虚数のエリスが両手を掲げると、
空が反転し、無数の“鏡世界”が展開された。
どれも異なる未来、異なる選択肢の世界――
だが、どれも完璧に“止まった”瞬間の記録。
「見て。
これはあなたが選ばなかった可能性たち。
戦いをやめたあなた、
蓮を救えたあなた、
誰も失わず笑い続けたあなた。」
エリスの胸が締めつけられる。
そこに映る“もしもの自分”たちは、確かに幸せそうだった。
「……こんな世界も、あったのね。」
「そう。
あなたは“動く”ことで、
無数の幸福を壊してきたのよ。」
その言葉が胸に突き刺さる。
だが、エリスは唇を噛みしめた。
「それでも、私は――“選び続ける”!」
光が弾けた。
エリスの背中から、再び金と紫の翼が広がる。
「痛みも、迷いも、悲しみも全部抱えて進む!
“動き続けること”が、生きるってことよ!」
虚数のエリスが目を細める。
「……やっぱり、あなたは愚かね。
でも、だからこそ――美しい。」
彼女の瞳に、わずかな哀しみが宿る。
そして、二人の間の空間が再び裂けた。
⸻
アマギ本部では、観測塔の警報が鳴り響いていた。
「創造エネルギー値、臨界突破!
想界と現実の境界が消滅し始めています!」
ゼオルが叫ぶ。
「このままでは、世界全体が“創造の臨界点”を越える!」
リィナがモニターを睨む。
「エリス……何してんだ、あんた……」
モニターに映るのは、
無数の光と闇が衝突する、想界の中心。
そこに立つ二人のエリスの姿。
だが、観測値はすでに“∞(無限)”を示していた。
⸻
想界・中枢。
光と闇が交錯し、時空が歪む。
空間そのものが“意識”となり、
過去・未来・可能性が同時に存在していた。
虚数のエリスが囁く。
「……このままじゃ、両方とも消える。
あなたも、私も、世界も。」
「それでも、止めない!」
エリスが叫ぶ。
「あなたは“完成”を望むけど、
私は“続き”を信じる!」
その瞬間、
虚数のエリスの表情がわずかに変わった。
「……続き、か。
私には、怖くて見られなかったものね。」
光が揺れる。
虚数のエリスが、ゆっくりと右手を差し出した。
「……だったら、見せて。
“動き続ける世界”が、どんな未来を描くのか。」
エリスもその手を取る。
指先が触れた瞬間、
二人の身体が金と黒の光に包まれ、
一つの軌跡へと融合していった。
⸻
――世界が、静まり返った。
音も、時間も、消えた一瞬。
だが、その沈黙の中で、
“何か新しい拍動”が生まれた。
それは創造でも破壊でもない。
ただ“存在を選び続ける力”。
光が弾け、
エリスの中に“もう一つの声”が響く。
――『ようやく、同じ場所に戻れたな。』
「……蓮……!」
――『お前が止まらなかったから、
世界はここまで来た。
でも、もう“創るだけ”じゃ足りない。
今度は、“理解する番”だ。』
「理解……?」
――『そうだ。
創造の臨界点を越えた今、
世界は“形”を選べるようになった。
お前の想いが、そのまま現実を決める。』
蓮の声が消える。
エリスは両手を胸に当て、静かに瞳を閉じた。
「……なら、私は“共に生きる世界”を選ぶ。」
その言葉とともに、
世界の構造が変わり始めた。
⸻
アマギ上空。
虹色の光が地平線まで走り、
想界と現実が完全に“共存”を始めた。
夢の風景が現実の街に溶け、
人々は自分の“想い”を形にすることができる。
それでも、世界は壊れない。
なぜなら、そこには――“選択”があるから。
リィナが空を見上げ、息を呑む。
「……エリス、お前……やったな。」
ゼオルが小さく笑う。
「これが、“創造の臨界超越”か。」
⸻
想界の中心。
エリスは静かに目を開けた。
彼女の瞳には金と黒の光が同時に宿っている。
そして、微笑む。
「虚数の私……ありがとう。
あなたがいたから、私は“終わらせない勇気”を持てた。」
風が吹く。
金と紫の花弁が舞い、
想界の空に一つの星が生まれる。
それは“創造の極点”――
すべての想いが交わり、永遠に動き続ける証。
エリスの声が、その星に響く。
「――創造は止まらない。
だって、私たちはまだ“想っている”から。」
そして、
“現夢時代”は真の意味で、始まりを迎えた。
0
あなたにおすすめの小説
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる