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第40話
しおりを挟む第40話 無限創造(インフィニティ)
――静寂の中に、ざらついた“音”があった。
ナミアが消えたあの夜、
世界のあらゆる場所で、微弱な光の粒が観測された。
それは誰もが“気づかないほど小さな変化”だった。
けれど、それは確実に増殖していた。
⸻
アマギ・創造連盟本部。
観測塔の警報が鳴り響く。
ゼオルが計器を睨みながら叫んだ。
「創造素の発生量、指数関数的に増加している!
誰も創造していないのに、世界そのものが“自己複製”している……!」
リィナが顔をしかめる。
「また厄介なことに……何が原因だ?」
ゼオルは唇を噛み締める。
「おそらく、“ナミアの核”だ。
彼女の中にあった“無感の創造コード”が、消えずに残っていたんだ。
今、それが“創造の自動化”として動き出している。」
「創造が……止まらない……?」
リィナの言葉に、空気が重くなる。
エリスは静かに立ち上がった。
「それが“無限創造(インフィニティ)”……」
⸻
空を見上げると、
街の上に淡い光の球が浮かんでいた。
それは、まるで意思を持つかのように動き、
建物を複製し、風景をコピーしていく。
人々が描いた夢や感情、
そして記憶までも――
創造が創造を呼び、世界が自らを再生し続けていた。
花が咲き、散り、また咲く。
建物が崩れ、すぐに同じ形で再生する。
死が生まれ、生が死に戻る。
世界が、“終わることを拒否していた”。
⸻
「……止まらない創造なんて、崩壊と同じよ」
エリスは静かに呟いた。
リィナが隣で問う。
「どうするつもりだ? また“核”を壊すのか?」
「壊せば、また別の形で再生する。
ナミアの創造は、“永遠に再演されるよう”に作られてるの。
破壊すらも、彼女の創造の一部。」
ゼオルが息を呑む。
「つまり……完全な循環構造。
停止すれば再開し、終われば始まる……」
「そう。
これはもう“創造”じゃない。
――“存在の暴走”よ。」
⸻
エリスは想界の中心――**無限中枢(インフィニティ・コア)**へと向かった。
そこは創造の始まりと終わりが交差する場所。
ナミアが消えた後、誰も近づけない禁断の領域だった。
無数の光の球が浮かび、
それぞれが“世界の断片”を映している。
過去のアマギ、異世界、神々の戦い、
すべての創造がここに集まり、渦を巻いていた。
「ここが……“無限創造”の中心……」
エリスの視界に、金と白の光が混ざる。
その中心に――ナミアの面影があった。
「ナミア……?」
光が揺れ、声が響く。
『私はもう存在しない。
だが、“創造”は私を忘れなかった。
あなたが否定した“完全”を、世界が望んだの。』
「違う……! 望んだんじゃない、怖がってるのよ!」
『怖れは、形を求める。
だから世界は“終わりのない形”を作り出した。
あなたが止めない限り、創造は続く。』
エリスは目を閉じた。
かつてルゼアも言っていた。
“恐怖こそ創造の源”。
――今、世界が恐怖から“永遠”を作り出している。
「なら、私は“恐怖”を受け止める。
終わりを恐れずに、再び“終わり”を創る。」
彼女の手の中に、光の剣が生まれる。
それは“始まりを断つための刃”。
⸻
無限中枢の中心で、
エリスは“世界そのもの”と対峙した。
創造の声が響く。
『創造者エリス。
お前はまた終わりを望むのか?
この世界に終わりは不要だ。
“続くこと”こそが至高だ。』
「いいえ。
続くことだけが正しいなんて、思わない。
“終わり”があるから、想うことができる。
だから私は――“完結”を創る!」
剣を振るう。
光が奔り、無限中枢が震える。
再生の波が止まり、時間がゆっくりと凍る。
しかし、その奥からもう一つの声が響いた。
『……まだ終わらせるな。』
それは、懐かしい声だった。
「……蓮?」
『そうだ。
お前はまた“終わりを創る”ことを選んだ。
でもな、エリス――
“完結”と“停止”は違う。』
「……どういうこと?」
『創造は続いていい。
ただ、“意味”を持って続くべきだ。
終わりを否定するのではなく、
終わりを抱えたまま、生きろ。』
エリスは微笑んだ。
「……そうね。
“終わりを創る”んじゃない。
“終わりを超える”のよ。」
剣を構え直す。
今度は、壊すためではなく――“書き換えるために”。
「――創造、再定義。」
光が爆発した。
創造素の流れが一本にまとまり、
無限の複製は静かに止まっていく。
その代わりに、
世界の中心に“新しい構造”が生まれた。
それは、有限でありながら、無限を内包する構造。
“存在し続ける意味”を持った世界。
⸻
静寂の後、
風が吹いた。
アマギの空に、ひとつの新しい星が現れた。
それは金でも白でもない――
すべての色を内に秘めた“創造の核”。
リィナが空を見上げ、息を呑む。
「……まるで、世界が一度“息をした”みたいだな。」
ゼオルが頷く。
「創造が、再び“有限”を受け入れたんだ。」
⸻
エリスは空を見上げ、微笑んだ。
「蓮、見てる?
私たちは、“終わらない物語”じゃなくて、
“続いていく意味”を選んだわ。」
風が優しく吹き抜ける。
創造の光が、静かに世界を包み込んだ。
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