詐欺る

黒崎伸一郎

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詐欺師一村忍

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初めての入院はアルコール依存症と言う名目の入院にした。
退院後、通院を重ね二ヶ月前からうつ状態になり、イライラがひどくなり夜も寝られないという事で入院を希望して今日入院した。
病名は躁うつ病である。
二回目の入院のため院内のことは大体わかる。
うつ病での入院の為、今回は前回のアルコール依存症の勉強会はない。
それだけでも気分は楽だ。
今入院しているメンバーは私を除いて三人。
今月末には一人入院予定である。
今のメンバーは、退院して半年の入院待ちのメンバー合わせると六人。
私が詐欺を始めて一年でここまで増やしてきた。
ここの病院の解放病棟の個室は三十。
私のメンバーだけで四室使ってるのでここの病院ではこれ以上入院患者を増やすのは難しい。
入院予約が多くなり、入院を何日か待たなければならなくなってきたのである。一人二ヶ月入院するとして、どう考えてもそれ以上はここの病院での入院は無理だったのだ。
他の病院を探す必要ができた。
ただ問題は山積みである。
まずここの病院ほど綺麗で楽な病院はない。
それは何度もインターネットで調べているからよくわかっていた。
それに開放病棟での入院ができない病院が多いのだ。
精神病院がいくら進歩したといっても入院させるのは閉鎖病棟からさせて、少し良くなったら開放病棟へ移すといった病院が大多数を占めているのだ。
なかなかいい条件の病院がない。
と言っても金が欲しい奴らは山のようにいる。
それくらいは我慢できる人を集めればいいのだ。
そこで私は浩司に連絡してこの前の話を進めてもらうことにした。
話とはこうだ。
本田浩司には大阪に何人かを子飼にして詐欺を生業にしている奴がいると言っていた。
大阪なら知り合いはいない。
そいつと話をして詐欺を大阪に持って行こうかと考えた。
もちろんいい話になれば浩司に利益の三分の一は渡す話をするつもりだ。
十人いれば五百万円は浩司にも入ると言う話だから悪い話ではないはずだ。
ただし話がうまくいけば…である。
全く纏まらない可能性もある。
この詐欺のマニュアルだけを持っていかれることもある。
だが大阪に行ってその話をするかどうかはそいつに会って考えればいい。
会った瞬間にこいつとは合わないと感じれば飯と酒だけ奢って帰ればいい。
リスクばかり考えていたら大きな金は得ることなどできるわけがない。
詐欺師をしていること自体がリスクなのだから…。
浩司と話をし、とりあえずそいつと一回会う事にした。
そいつは一村という名の男だった。
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