詐欺る

黒崎伸一郎

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男と女

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病院での入院は三回目となると患者同士で仲良くなったりもする。
それは男でも女でも一緒である。
フロアで集まりゲームをしたり話を楽しむ患者もいる。
女の患者目当てで入院して仲良くなって関係を持つ若い男もいる。
それは別にいいことだと思う。
院内で喧嘩さえしなければ…。
私は今は別にナンパはしない。
直美がいる。
それよりもナンパしたくなる様ないい女は院内にはいなかった。
ただ話をして仲が良くなる女の患者は何人かはいた。
うつだがそんなに重い症状には見えなかった。
でもやはり薬の量を見ると私なんかより倍の量だった。
ある日に夕食の後、相談に乗って欲しいと言われ悩みを聞くことになった。
フロアには他の患者もいたので端っこのほうに行き話を聞いた。
話では男の患者から付き合って欲しいと言われて断ったけど、それから付き纏われているらしかった。
どうすればいいのかを私に聞いてきたのだ。
相談してきたのは私が初めて入院した時に、少し後で入院してきた三十過ぎの女性で入院は二度目だった。
その時から会うと必ず話をしてご飯を食べる時も隣に来て食べる様になっていた。
名前はマキという名でマキって呼んでと言われたのでそう呼んでいた。
私は萩原海人だと言ったら海人って呼んでいいかと聞くので、いいよって言ったら私を海人と呼んでいた。
私はマキに恋愛感情はなかった。
昔ならいざ知らず今はその感情を持つ気さえなかった。
それはそうだ。
直美の方が若く肌もピカピカで比べる方がおかしいくらいだった。
だから私はなんとも思っていなかった。しかもマキには旦那がいた。
週に一度は面会にも来ていた。
だから余計に大丈夫と思っていた。
私はそのストーカーに付き纏うのはのは辞めてやれと言ったのだ。
マキは私の横にいた。
私にくっついていた。
ただ私はマキの男だなんて言わなかったが他の人が見るとそう見えたかもしれない。
私に言われた男は「もうつきまとわない」…と約束をして部屋に帰った。
マキはほっとした表情で私を見た。
私は「もう大丈夫だと思うよ」と言って部屋に帰ろうとしたが、もう少しだけ話をしてくれと頼まれたので、後三十分の約束で一緒にいた。
結局一時間以上帰られなくてこれ以上一緒にいたら私の方が気が滅入ってきたのでお腹が痛くなったので横になると言って部屋に帰ったのだった。
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