詐欺る

黒崎伸一郎

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誰一人と知らない街(詐欺る)

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全てを詐欺り、自滅の形で誰も知り合いのいない街に来た。
私は萩原海人になっていた時にも黒崎伸一郎は捨てるつもりはなかった。
直美と一緒になるかもしれないと思った時に、萩原海人の名では一緒になれる筈がないので戻るつもりだった。
ただ、直美が死んだと同時に私も死んだも同然であった。
直美との生活はまさに夢そのものだったのかも知れなかった。
中年の何の取り柄のない詐欺師が、男性の誰しもが付き合いたいであろう女性と付き合い、そして一年の間暮らした。
その事実だけが残ったのである。
私はこれからもこの町で生きなければならない。
いや別に生きなくてもいいのだが死ぬ勇気さえない。
今、私はこの街に来て警備員になっている。
それが現実なのだ…。

但し、何か詐欺るものを見つけた時には詐欺師として復活するかもしれない。
それは今の私にはわからない。
何が真実で何が嘘かそれは誰にもわからないのだ。
あるのは事実だけ。
その事実まで、詐欺ることを私は今からやろうと思う。
そんなに遠くない未来に、あなたの前に現れて詐欺れるだけ詐欺って突然姿を消す。

その時まで他の誰かに詐欺られないようにお願いする。

詐欺るのは、この私なのだから……。
 
     
          了
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みんなの感想(1件)

ツキノウサギ

とても面白くて次の投稿が待ち遠しいです

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