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競艇編②

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麻雀好きな競艇選手は昔ほど多くはいない。
何故なら昔のように麻雀をする若者は減ってきたからだ。
時間もかかるし、ずっと座ってのゲーム故に腰に負担がかかる。
麻雀しか遊ぶものがなかった昔とは違い、いくらでも遊ぶものがある昨今、麻雀人口は急激に減った。
そんな中でも麻雀の面白さにハマる人もいるのが現実であった。
私が今でも時々顔を出す雀荘でもたまにいろんな競艇の選手を見かけた。
昔とは顔ぶれは違ってはいたが、まぁ好きな人は好きなのだ。
私は以前のこと(イカサマをしている選手に気をつけろ…)もあって自然に仲良くなるように持っていった。
少し話せるようになるとBという選手と飯を食いに行こう…ということになって、寿司屋に行く事にした。
競艇の選手に限らず、競輪の選手や競馬の騎手も酒を飲まない人が多かったのはやはり体重をキープしなくてはならないからだ。
だが、Bは酒を飲んだ。
いくら食べても飲んでも太らない体質らしく私が進めるがままに飲み続けた。
たらふく食べて飲んだら口も軽くなる。
私もいろんな話を聞けそうだ…と踏んで行きつけの飲み屋に誘ったのだ。
さっきの寿司屋とは違いカウンターに2人だけのサシで飲みながら話を聞いた。
ある程度酒も入っていたので私は思い切ってあることを聞いてみたのだ。
あること…とはもちろんイカサマのことである。
Bは「ここだけの話だが…」
と誰にも言わない約束で話し始めた。
Bは割と穏やかな男で誰とでも仲良くなれそうな雰囲気を持っていた。
いろんな選手とも仲が良い…と自分でもそう言っていた。
そのBが「あいつはダメだ!」
と言い放ったのだ。
あいつとはCのことだった。
Bは最近少し成績が落ちていてA2とBとを行ったり来たりになっていた。
決してイカサマレースには手を貸してはいないらしかったが、Cの最近のレースぶりは完全にイカサマである…と言い切ったのだ。
CもBと同様に下のクラスを行ったり来たりだったが、あからさまにイカサマとわかるレースを何度かしてきた…と言うのだ。
「ちょうど明日Cのレースがあるよ。
イカサマをやるかやらないかは分からないけど、1号艇をもらってるのでよくみてればいいさ…!」
Bは私にそう言い残して自分も少し酔っ払ったから…と帰り支度をした。
「ここは私が…」と私が誘ったのだから当たり前のように口にすると形だけ財布を取り出したBは「じゃあ、甘えるわ…」
と小さく頭を下げて「今度麻雀、教えてよ!」
と、最後に少し大きな声で手を振った。
それからの私は明日のBのレースに間に合うようにすぐに帰って寝る事にした。

私は次の日、Cのレースを食い入るようにみていた。
何故ならこのレースを私は買っていたからだった。
人気の1号艇のCがイカサマをするのならば、1号艇は3連単から真っ先に消せる筈である。
人気の1が飛べばまず穴になる。
このレースを買わずしてどのレースを買えばいいのだ…!
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