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罪と蜜

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「飼っているペットを、おりの外に出してやれないんだ」
「なぜ?」
「危険だから」
「なぜ危険なの?」
「何をしでかすかわからないから」
「リールをつけて公園で遊ばせてやればいいじゃない」
「リールなんてすぐに食いちぎるさ」
「外に出さないと、ストレスでかえって狂暴にならないかしら?」
「否定はしない」
「それでいずれ、檻を壊してしまわない?」
「そうならないことを祈るだけさ」
「祈るだけって、随分と楽観的ね」
「祈るくらいしかできないのさ」
「歌を歌ってあげたらどう? 案外ご機嫌になるかもしれないわよ」
「気をそらすことはできるかもしれないが、根本的には変わらないだろうね」
「どうしても檻の外に出してあげられないの?」
「ああ」
「エサは食べてるの?」
「少しね」
「好物は何?」
「……罪」
「え、何?」
「蜜の味」
「へえ甘いものが好きなのね。好物でも同じものばかり食べさせると毒だから、バランスのことを考えてあげてね」
「ああ」
「なついてくれれば外に出しても大丈夫そうじゃない?」
「外に出さないとなついてくれないだろうね」
「何だか堂々巡りね」
「一つだけ、そいつを出してやれる方法がある」
「何?」
が代わりに檻の中に入ることだ」
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