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今年の蝉は特にうるさい。
公園の遊具の上で寝そべっているとそれは都会の喧騒のように聞こえて来る。
夏休み残り 20日
君島太一は憂いていた、高校に進学し友達もでき、これから楽しい夏休み!という時に仲良くなった友達は全員海外旅行。これから残りの夏休みをどう過ごしていいか分からずただただ流れる入道雲を眺めていた。
「あぁ~!こんなところにいた!」
視線を落とすとそこには幼馴染の追分夢がいた。なにやら不機嫌そうな彼女の顔に唾を飲んだ。
「聞いてよ太一!夏休みだって言うのに暑いからとか日焼けするからとか言って誰も予定つかないのよ!」
どうやら彼女も同じ理由らしい。
太陽が真上に来て蝉が一層騒がしくなった時、嫌な予感は的中してしまった。
「よぉし!太一出掛けるわよ!夏の思い出探しにいきましょ!」
この無駄に明るくて無駄に積極的な性格が昔から得意じゃなかった、嫌いではないけど....。
まずは買い物でしょ!と彼女が言い出したので2人は駅前にあるショッピングパークに向かうことにした、道中この先の夏休みはどうするか、次の学期の授業のことなど他愛のない話をしていた。駅が見えてきたところで
「わぁ!シェイブアイス!太一、あれ食べよ!私マンゴーのやつね!よろしく!」
目的地よりも先に彼女の目にはワゴン販売しているアイスが目に入ったらしい。
やれやれと首を振りながらもはしゃいでいる彼女の無邪気さを無下にはできないと買いに向かうことにした。
ワゴンの手前までくると小さな路地が横にあることに気がついた。
「あれ、こんなところに道なんかあったかな?」
見慣れないその道は日陰になっていてヒンヤリと冷たい空気が漂っていた。どこか不気味な道ではあるが不思議と恐怖心は無かった。
ふとその道の奥を見ると小さな灯りが見えた、なんだろうと目を凝らしていると
「ねぇなにここ!こんなところに道なんかあったっけ?アイスよりヒンヤリしてそうだし面白そう!」
彼女は目をキラキラと輝かせながら路地へと入っていった。
路地をどんどん奥まで進む彼女の後ろ髪は期待でスキップをしていた。
突き当たりまで来たところで小さな灯りの正体がわかった。そこにあったのは古びた古屋だった。看板もなければ名前も書いていない、ただ入り口のドアには「Open」の文字だけが掛けられていた。
「ここ入ってみよっか!」
満面の笑みの彼女、ここにきて気づいたが周りの音が全くしない。ここは確か駅から100mも離れていない場所のはず、環境音が何もしないのは明らかにおかしい。
顔を顰めていると彼女に腕を掴まれそのまま入店してしまった。
中に入ってまず目に入ったのは棚にいくつも並べられている木の人形だった。
見られているような不気味な感覚に襲われて思わず後退りしてしまった。そんなことはお構いなしに彼女はキラキラとした眼差しのまま店中を見ている。すると
「何かお探しですかな?」
ゾッとし振り返るとフードを目まで被った小柄な男性が立っていた。その風貌に思わず声をあげそうになったがぐっと我慢して店主であろうその男性に問いかけた。
「こ、こんなところにお店なんてあったんですね、初めて見ましたよ。ここってなにを売って………!?」
辺りに目線を一瞬外しただけなのについ先ほど目の前にいた男性が消えていた。
怖くなり彼女を呼び早くここを出ようと提案したがあっさり断られてしまった。
「さっきから何にそんなビクビクしてるの?店主さんならあそこのカウンターにいるじゃん!」
木の人形で見えなかったが店の奥にはレジらしきカウンターがあり、そこには先程のフードの男性が腰掛けていた。確かに目の前にいた店主はカウンターの中にいたのだ。
店主はゆっくりと腰を上げると
「何か気に入ったものはありましたかな?」
フードの下に見える口元は優しく微笑んでいた。
2人で顔を見合わせていると
「まだ決まっていないのであれば奥に私のオススメがありますので……どうぞこちらに…」
店主はカウンターの奥にあるカーテンをめくり手招きをしてきた。
まだ奥があったのかと彼女がワクワクした目をしていることは顔を見なくてもわかった。
カーテンをくぐり奥に行くとそこは4畳ほどの小さな部屋で、そこにはブリキ時計が5つ並んでいた。
「わぁ可愛い!ブリキ時計!」
部屋の真ん中にあるブリキ時計は時計というにはあまりにも大きいもので、とても精巧な作りをしていた。
「すごいなこれ、外国の街並みと時計台?を作ったってことか。」
そのリアルな作りに2人は自然と引き込まれていった。
すると店主は嬉しそうに
「どうです、よく出来ているでしょう?本当に生きているみたいに…」
その言葉にどこか違和感を覚えた。
「さぁもっとよく見てみてください!どうぞ覗き込んで!」
そこまで言うならと2人でブリキ時計を覗き込んだ。車や人が精巧に作られて動いている、本当に生きているみたいだ…
その時だった。
シューっという音と共にブリキ時計の台座から白い煙が吹き出してきた。
「なんだこれ!おい夢!大丈夫か!」
「大丈夫だけどなによこれ!」
視界はすぐに真っ白になり何も見えなくなった、それと同時に床が抜ける感覚に襲われ2人はどこかに落下していった。
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ
どのくらい時間が経っただろう短くても5分は落下し続けた。
突然やわらかい感覚が足元に走るとようやく地面に足がついた。
まだ白く煙っていて周りは見えない。
いったいここはどこなのだろう。
だんだんと晴れていく煙の隙間から先ほどまでいた店内ではないのは明らかだったが、目の前に現れたのは想像を超えた光景だった。
公園の遊具の上で寝そべっているとそれは都会の喧騒のように聞こえて来る。
夏休み残り 20日
君島太一は憂いていた、高校に進学し友達もでき、これから楽しい夏休み!という時に仲良くなった友達は全員海外旅行。これから残りの夏休みをどう過ごしていいか分からずただただ流れる入道雲を眺めていた。
「あぁ~!こんなところにいた!」
視線を落とすとそこには幼馴染の追分夢がいた。なにやら不機嫌そうな彼女の顔に唾を飲んだ。
「聞いてよ太一!夏休みだって言うのに暑いからとか日焼けするからとか言って誰も予定つかないのよ!」
どうやら彼女も同じ理由らしい。
太陽が真上に来て蝉が一層騒がしくなった時、嫌な予感は的中してしまった。
「よぉし!太一出掛けるわよ!夏の思い出探しにいきましょ!」
この無駄に明るくて無駄に積極的な性格が昔から得意じゃなかった、嫌いではないけど....。
まずは買い物でしょ!と彼女が言い出したので2人は駅前にあるショッピングパークに向かうことにした、道中この先の夏休みはどうするか、次の学期の授業のことなど他愛のない話をしていた。駅が見えてきたところで
「わぁ!シェイブアイス!太一、あれ食べよ!私マンゴーのやつね!よろしく!」
目的地よりも先に彼女の目にはワゴン販売しているアイスが目に入ったらしい。
やれやれと首を振りながらもはしゃいでいる彼女の無邪気さを無下にはできないと買いに向かうことにした。
ワゴンの手前までくると小さな路地が横にあることに気がついた。
「あれ、こんなところに道なんかあったかな?」
見慣れないその道は日陰になっていてヒンヤリと冷たい空気が漂っていた。どこか不気味な道ではあるが不思議と恐怖心は無かった。
ふとその道の奥を見ると小さな灯りが見えた、なんだろうと目を凝らしていると
「ねぇなにここ!こんなところに道なんかあったっけ?アイスよりヒンヤリしてそうだし面白そう!」
彼女は目をキラキラと輝かせながら路地へと入っていった。
路地をどんどん奥まで進む彼女の後ろ髪は期待でスキップをしていた。
突き当たりまで来たところで小さな灯りの正体がわかった。そこにあったのは古びた古屋だった。看板もなければ名前も書いていない、ただ入り口のドアには「Open」の文字だけが掛けられていた。
「ここ入ってみよっか!」
満面の笑みの彼女、ここにきて気づいたが周りの音が全くしない。ここは確か駅から100mも離れていない場所のはず、環境音が何もしないのは明らかにおかしい。
顔を顰めていると彼女に腕を掴まれそのまま入店してしまった。
中に入ってまず目に入ったのは棚にいくつも並べられている木の人形だった。
見られているような不気味な感覚に襲われて思わず後退りしてしまった。そんなことはお構いなしに彼女はキラキラとした眼差しのまま店中を見ている。すると
「何かお探しですかな?」
ゾッとし振り返るとフードを目まで被った小柄な男性が立っていた。その風貌に思わず声をあげそうになったがぐっと我慢して店主であろうその男性に問いかけた。
「こ、こんなところにお店なんてあったんですね、初めて見ましたよ。ここってなにを売って………!?」
辺りに目線を一瞬外しただけなのについ先ほど目の前にいた男性が消えていた。
怖くなり彼女を呼び早くここを出ようと提案したがあっさり断られてしまった。
「さっきから何にそんなビクビクしてるの?店主さんならあそこのカウンターにいるじゃん!」
木の人形で見えなかったが店の奥にはレジらしきカウンターがあり、そこには先程のフードの男性が腰掛けていた。確かに目の前にいた店主はカウンターの中にいたのだ。
店主はゆっくりと腰を上げると
「何か気に入ったものはありましたかな?」
フードの下に見える口元は優しく微笑んでいた。
2人で顔を見合わせていると
「まだ決まっていないのであれば奥に私のオススメがありますので……どうぞこちらに…」
店主はカウンターの奥にあるカーテンをめくり手招きをしてきた。
まだ奥があったのかと彼女がワクワクした目をしていることは顔を見なくてもわかった。
カーテンをくぐり奥に行くとそこは4畳ほどの小さな部屋で、そこにはブリキ時計が5つ並んでいた。
「わぁ可愛い!ブリキ時計!」
部屋の真ん中にあるブリキ時計は時計というにはあまりにも大きいもので、とても精巧な作りをしていた。
「すごいなこれ、外国の街並みと時計台?を作ったってことか。」
そのリアルな作りに2人は自然と引き込まれていった。
すると店主は嬉しそうに
「どうです、よく出来ているでしょう?本当に生きているみたいに…」
その言葉にどこか違和感を覚えた。
「さぁもっとよく見てみてください!どうぞ覗き込んで!」
そこまで言うならと2人でブリキ時計を覗き込んだ。車や人が精巧に作られて動いている、本当に生きているみたいだ…
その時だった。
シューっという音と共にブリキ時計の台座から白い煙が吹き出してきた。
「なんだこれ!おい夢!大丈夫か!」
「大丈夫だけどなによこれ!」
視界はすぐに真っ白になり何も見えなくなった、それと同時に床が抜ける感覚に襲われ2人はどこかに落下していった。
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ
どのくらい時間が経っただろう短くても5分は落下し続けた。
突然やわらかい感覚が足元に走るとようやく地面に足がついた。
まだ白く煙っていて周りは見えない。
いったいここはどこなのだろう。
だんだんと晴れていく煙の隙間から先ほどまでいた店内ではないのは明らかだったが、目の前に現れたのは想像を超えた光景だった。
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