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回り出す歯車

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ハッキリと自分の瞳にその人物を捕らえると、一瞬言葉に詰まった。


「あの…奥の?」

「そう。あの奥にいるの」

そこには、明るい髪をキレイに巻いてフルメイクの女の人が、白い歯を出して笑いながら手招きをしていた。

圧倒的なオーラを放ち、もし着ているものが病院着でなければ、ここは病院ではなく夜のお店じゃないのかと勘違いしそうなほどだ。


俺は戸惑いつつも呼ばれるまま女の人の所へ足を進めた。


「こ、こんにちは」

少し距離を取って、緊張しながらもとりあえず挨拶をした。

「こんにちは、有原君。
コイツから話は聞いたよ」

言葉と同時にバシンといい音がした。

「いってぇ!」

どうやら大倉が尻を叩かれたらしい。

「何、なんか文句あんの?」

顔は笑っているが相当な威圧を感じた。

「いえ、なんでもないです…」

大倉がどういう風に育ったか一目瞭然だな。

二人のやりとりをみて、大倉の女性扱いが妙にうまいのも納得した。


「私は大倉 美佳。
よろしくね」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

俺は目の前に差し出された手を遠慮がちに握った。


「なぁーにかしこまっちゃってんの!」

バシンと背中を叩かれた。

痛った!!
確かにこれは痛いわ、大倉…。


「真由ちゃんだっけ?
安心して!ちゃんと協力してあげるから、この美佳サマに任せなさい!!」


「お願いします…」

痛みに耐えながら頭を下げた。

「ちっがう!設定は友達なんだからもっと砕けた感じで!」


そうか。友達の姉のところに毎日お見舞いもおかしいもんな。


「た、頼む…?」

「ん~、まぁいっか。
じゃあ明日はお見舞いにケーキ買って来てね」

美佳さんはそう言うと手をヒラヒラさせて病室を出て行った。
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