大切なもの

吉野ゆき

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美月が部屋を出て二日が経った。


淋しさに堪えられなくなったオレは、ヒデを呼んだ。


「うわっ!汚ねっ!!」

部屋にはコンビニ弁当のゴミなどが散乱していた。


「開口一番それかよ。
しょうがねぇじゃん。
掃除する人いねんだし」

ヒデの顔つきが変わった。

「お前、それ本気で言ってんの?
美月ちゃんがなんで出ていったか本当にわかんない?」


「な、なんだよ?突然…。」

ヒデは普段から大人でオレとは対照的だ。

だから子供なオレに諭すようなことが多々ある。


オレは拗ね気味に答えた。

「美月がいなくなった理由なんてわかるわけねーじゃん。
いつまでたってもデビューできないから見捨てられたんかな…」


認めたくないけど、それしか思いつかない。
本当にそうなの、美月…?


「バッカじゃねぇ!?
お前、美月ちゃんがそんな女だと思ってんの!?」

落ち込んでいるところに、ヒデが容赦なく怒鳴る。

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