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軽口

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ハハハハハ!
気分がいい。
あいつらはもう普通の生活には戻れない。

俺は他人の人生さえも操れるんだ!!





鼻唄混じりに上機嫌でアパートへと戻ると、そこにはユリの姿があった。


「譲。良かった、会えて。
電話にも出てくれないし、何かあったのかと思って」

ユリはそう言ってするりと腕を伸ばし、絡めてくる。


ウザ。正直、今はそういう気分じゃない。

大体、会社をクビになったのもこいつのせいじゃないか?


「ねぇ、譲?」

あー、もう。

「うるさい、話しかけんな。
消えろ」

軽い気持ちで言った言葉だった。


俺は絡まれた腕を振り払って部屋の中へ入った。


バタンと閉じられたドアの向こうには、もうユリの姿はどこにもなかった――。


荷物を置いてベッドに横になると、少しの空腹を覚えた。

しまった、ユリに何か作らせてから帰せば良かった。

いや、今からでも遅くはないか。
戻らせて作らせよう。

なんせ、俺の言うことには何でも聞くようにできているんだからな。


ユリ…ユリ…いた。
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